差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2004年8月22日日曜日 0:38
宛先: 銭湯ML
件名: あづま湯(新潟県上越市中央)

ナカムラです。

今日(8/20)は、「あづま湯(新潟県上越市中央)」に行ってきました。
直江津駅(JR北陸本線)から0.7キロ、10分程度です。

直江津には、11年前か12年目のクリスマス頃、急に日本海が見たくなって訪れたことがある。
その時は銭湯に特段のこだわりはなかったけど、「あづま湯(中央町)」と「白山湯(住吉町)」の写真が残っている。

三角駅舎の直江津駅はどこにでもあるような駅ビルに変っていた。
豪雪だったころの名残の雁木造りという特徴のある商店街もシャターを閉めている店舗が多い。そうでない店舗も化石のような感じがする。
街の中心の長崎屋(だったと思う)の店舗は、廃墟然とした惨状だった。
何故か写真館が多いのは以前のまま。しかし、一番古風な高碕写真館はどこにでもある写真屋に変っていた。

さて、白山湯。
電話帳に名前が無かったので廃業したのだろうと予想はしていたものの、洋風の建物だけでも残っていないかなと・・・。
幼稚園の近く。家から出てきた奥さんに、ここら辺にあった白山湯はと聞くと、「あ、それウチ」と。
5年前におじいちゃんが亡くなり廃業。建物は昨年に壊してしまったと。
今は間口が狭い(3間ほど)駐車場になっていた。

「ニューハルピン」というラーメン屋で昼食。新潟県でも有名なラーメン屋らしく、大混雑。
でも、頼んだタンメンは煮過ぎた野菜で、とても有名店の片鱗も窺えなかった・・・。
ただ、幸いにも住宅地図が貼ってあったので、タンメンそっちのけで壁の地図を頭にたたき込む。
旅行者らしい恰好をしているとはいえ、ヘンな客には違いない・・・。

さて、3時の開店を待って、あづま湯へ。

電柱のようなつっかえ棒が外壁側に並んでいるのが最大の特徴だけど、以前よりも建物がやや傾いたかかなと感じた。
それに、以前は瓦屋根だったけど、スレートに変っている。
湯気抜きも下見板張りだったけど、どこにでもある外装板に変っていた。
それ以外は旧状のまま。

ここも雁木造りで、入口が少し奥にある。間口は3間と狭い。
花王石鹸の縦型の大きな暖簾がカーテン替わりに揺れている。
その横に菱形をあしらったステンドグラスを嵌めた窓がある。
脱衣所側からの透過光で見た、この暖簾とステンドグラスの組み合わせは秀逸だった。

暖簾をくぐると半間ほどのタタキ。外壁側に下足の棚があり、最上段2段が下足箱になっている。錠は木製という古式ゆかしいもの。
番台も足付の他では例を見ないもの。
前に料金入れの木箱が設えてある。

脱衣場の広さは、幅1間半、奥行はタタキの部分を入れて3間半。
天井は高さ2間で簡素は材の押し縁天井になっている。
外壁は外に傾いていたけど、天井も中心部が垂れ下がるように窪んでいる。
明治の終わり頃の建物とのことだから、ほぼ90年前の建物。仕方ないか・・・。

脱衣籠はない。外壁が蓋なしのロッカー状の棚になっている。
その上に、忠臣蔵の錦絵のレプリカがストリー順に6枚並んでいる。こんなのは初めての遭遇だなぁ。

それ以外には脚の長い扇風機、「TOKYO KINZOKU」のアナログ体重計、電子レンジのような小さな冷蔵庫、椅子が4脚ほどある。

浴室。幅は1間半、奥行は4間ほどとかなり細長い構造。
天井は真中に四角湯気抜きがある唐傘天井。しかし、材はどこにでもあるプラ板が貼られている。

カラン数は入口近くにセンター側に3、外壁側に4。「宝」マークの付いたレバー式のもの。
意外にも全てにシャワーが付いている。
カラン付近の床はレンガ色の新しいタイル、湯船のある奥の方は30年代調の豆タイルが貼られている。

カランは無いけど、風呂道具を置く台は湯船を除き、ほぼ四方に付いている。
昔は湯船の湯を掬って身体を洗う構造だったのか・・・?

湯船は浴室の真中、男女境側に深浅2槽タテ置きに設置されている。
どちらも2も入れば一杯という大きさ。真中に溶岩が設えられてあり、そこから湯が流れ出る仕掛けになっている。
温度はどちらも42度くらいだった。

ビジュアルは古いタイル絵が3枚。
入口側の壁の下の部分、男女境(上は摺りガラス)の下の部分の壁、奥壁の下の部分にある。
奥壁のタイル絵が一番大きく(縦2枚×横3枚)、絵柄もロイヤルコペンハーゲン然とした、藍色のみで描かれた丹頂が飛ぶ図。
古いせいもあるけど、なかなか印象的だった。

築90年の古銭湯。
昨日の魚津では木造の銭湯に巡り会えなかったのでホッとした。
ただ、街の惨状からして、残っているのが不思議なくらいの銭湯だった。

なお、この銭湯にトイレはない。
場所を尋ねたら、自宅に案内された。