差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2004年11月28日日曜日 19:39
宛先: 銭湯ML
件名: 東湯(中央区月島)

ナカムラです。

今日(11/26)は、「東湯(中央区月島)」に行ってきました。
月島駅(有楽町線、大江戸線)から、1分程度です。

3番出口を出ると、30階はある、かなり高い高層マンションが2棟建っていて驚く。
月島は戦災にあっていないので、同湯のように昭和5年築といった戦前の建物が残っている一方、有楽町に地下鉄で5分という便利な地域ゆえ、急速に開発が進んでいるようだ。

今日は風が強い。歩道の自転車が倒れていたりする。
さらに、同湯への道に関していえば、付近の高層マンションによるビル風なのか、駅前の通りより風がきつかった。

煙突は、東京の銭湯にしては珍しい油井型。
同湯横の歩道には、燃料用の木製のパレットがうず高く積まれている。
ガラスが壊れたHOKUTOWのアナログ体重計もある。
角地側が女湯らしく、窓には、やや仰々しい目隠しが取り付けられている。

角を曲がると角地にある同湯の入口。
20:15。開いている店はないけど、古くからの小さな商店街なのかな、向い側には床屋さんなんかがある。

同湯の入口は、破風屋根の黒瓦。
懸魚等はないものの、戦前の造りだけあって、「長生館湯(渋谷区千駄ヶ谷)」や「月の湯(文京区目白台)」のように、暖簾の上の部分は漆喰が塗られている。

暖簾をくぐると、質素な押し縁天井。
格天井のような派手さはないが、戦前派銭湯に合っている。

下足箱は、高級な材で組まれている壮観なもの。
なかなか、お眼にかかれないもの。錠は旧型の松竹。

番台への戸を開けて、番台のご主人に400円を渡す。
番台は昭和中期的な前面がカーブしている新建材で造られたもの。
しかし、下部に装飾板が使われているのが珍しい。

同湯は、ロックバンド、エレファント・カシマシのベーシストのご実家らしい。
小生、そっち方面の音楽には全く不案内だけど、何枚ものCDをリリースしているバンドのようだ。

脱衣所の広さは幅3間、奥行3間半。
天井は平格天井ながら、煤けた格子はただならぬ存在感を発揮している。それに高い。
天板は、昔はそれぞれに装飾の絵が入ったものだったけど、腐って、交換されたものらしい。それも一部破れたりしている。

静かに、メロディアスな演歌が流れている。
たばこをくゆらせながら、大将がゆっくりめくる新聞の音だけがする。
落ち着いたいい空間がある。

島ロッカーが縦置きに1つ。錠は外付けのブロック型のシリンダ錠。
脱衣籠も現役で、二十歳そこのあんちゃんも、自然にそれを使っている。
外壁側には、常連桶を置く、やや大振りの棚がある。
その他、「タ」のマークがある文字盤が膝の高さにあるアナロク体重計、昭和35年に導入したアサヒの扇風機などがある。

外壁の戸を開けると、奥行きのある見事な庭があった。
大きな池に2つの石灯籠。
しかし、池に水は張られておらず、手入れは行き届いていない。
もったいないなぁ・・・。

浴室は、幅3間、奥行4間。
天井は、ウィング部が幅1間の2段型。
ウィング部の高さも高いけど、高い方の天井も高く、端から更にせり上がっている。高さ3間近くあると思う。
外壁側に張り出した部分がある。何だろう?古い水栓が2つあった。

そして、2本の大黒柱どおしをステーで引っ張って、さらに、大黒柱と外壁側の2本の柱をX字型のステーで引っ張り、補強している。
ウィングの中央に支柱を追加する補強は、複数見たことがあるけど、この方法の補強は初めて見た。

島カランは1列。カラン数はセンターから6・5・5・6。カランは日の丸扇の刻印のある旧型。
タイルは、3センチ角の白タイル。なかなかレトロな感じを残している。

浴槽は深浅2槽。
どちらも何の仕掛けもない、珍しくシンプルな浴槽。「日本の名湯」の有馬の湯(じっこう)になっている。
浅槽は、真中に焚き出し口があるのみ、43度強と結構熱い。
深槽は、常連客も入っていない。44度強とこっちも熱い。

ビジュアルは、丸山師の(西穂高)11.8.21.。
センターは、菱形のモスグリーンの装飾タイルが張られている。

当たり前だけど、常連客しかいない。
この熱い湯だけど、若い客も、寡黙に出たり、入ったり。静寂な浴室。
とても、居心地が良かった。

バブル期は月島に12軒の銭湯があったけど、今は7軒になったと。
(そんなにないと思うけど・・・。)
「乗り遅れたかなと思ったけど、それでよかったと思っている。」と大将。
強がりでなく、ほっとした語り口が印象的だった。

バブル期にマンションにしたとしても、高機能の住宅が凄い勢いで供給されれば、借り手が確保できるとは限らない。
結構、廃業した人たちも苦労しているらしい。
一方、銭湯をこれ以上減らしたくない、中央区や千代田区は行政の手厚い保護があるらしい。
謙遜もあるんだろうけど、店を開けているだけでやっていけるとも。
まぁ、開けること自体が大変な商売なんだけど。

4代目に期待する言葉があったけど、「いい所に勤めているし継ぎたがらねぇんだ」と。
継いでもらいたいという言葉は意外だった。
大半の主人は、自分の代で終わり。とても継がせられないという方が大半だから。
そんなに、潤沢な補助金があるのかな。
公営の銭湯が10年振りくらいでできる時代だから・・・。

4代目がエレファント・カシマシのベーシストなのかな・・・。
週末の銭湯行脚。とてもいい湯だった。






珍しい補強。



見事な格天井。


昭和35年導入の扇風機。「アサヒ」はもうないらしい。


エレファントカシマシのお父さん。
顔に刻まれた皺に味があった。話していて楽しかった。


トイレもレトロ。



スリッパはなく、板が置いてあるだけ。
どこかでもお目にかかったが・・・。思い出せない。