差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2008年9月23日火曜日 22:19
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 荒屋鉱泉(富山県射水市八幡町)

ナカムラです。

今日(9/9)は、「荒屋鉱泉(富山県射水市八幡町)」に行ってきました。 中新湊駅(万葉線)から、0.5キロ、5分くらいです。

高岡から万葉線という路面電車で20分ほど。以前は加越能鉄道という私鉄が運行していたけ ど、撤退して第3セクターが経営を引き継いで現在に至っている。

最近は環境面で鉄道が、そして路面電車が見直されている。万葉線の新しい路面電車に乗ると なるほどと思う。ドイツ製の2両連結の電車の揺れの少ない乗り心地は、路面電車の先入観を 覆すものだ。低床式ゆえに街角から楽に乗り降りできる。都心の地下鉄のようにウンザリする ほどの登り降りがない。専用軌道では、かなりの速度で走る。

新湊は寿司屋と銭湯が多い。中心には「十銭町」という遊廓跡も残っている。いつの時代の命 名かは分からないけど、一夜の春をひさぐ値段が遊興地のあだ名になったようだ。明治の中頃 であれば、米一升(1.5キロ)が八銭くらい。売られてきた娘にとっては、悲しいほど安い値段 だ。

中新湊駅を中心にして、つばた湯(ビル銭)、金崎湯(ビル銭)、さんがの湯(ビル銭)、荒屋鉱 泉(木造)、つるの湯(ビル銭)、みどり湯(ビル銭)を見て回る。ビル銭が多いのは予想して いたものの、これほどまでビル化が進んでいるとは思わなかった。

金崎湯は遊廓に近く芸妓たちが通った湯、「さんがの湯」や「つるの湯」は漁船が繋がれた運河 の傍らにある。イマジネーションを豊かにして眺めるものの、やはり風情には乏しい。

昭和16年に大火があって、600戸を超える家屋が焼けたようだ。つるの湯の近くに「復興」 の碑が建てられている。北陸を旅行していると、いくつもの地域で大火の話が出てくる。風雪 という厳しい気候と大火のトラウマ。その両方が木造銭湯を駆逐してしまったのかも知れない。

荒屋鉱泉は明治期よりこの運河の近くで、赤い鉄鉱泉を沸かす古くからの銭湯だ。高岡には3 連泊するので、昨日訪れた時に定休日と営業時間を確認しておいた。女将によれば、現在のト タン張りの建物は少なくとも戦前の建物だろうとの話だった。

切妻の2階屋に黒瓦入母屋屋根のエントランス部が付いている。このエントランス部は純粋な 「屋根」で、その奥に男女別の入口を入るとコンクリのタタキと番台がある。地方銭湯の典型 的な構成だけど、同湯のタタキは広い。風呂銭は400円。番台のお金をやり取りする部分は、 硬貨で擦れて窪んでいる。機能一点張り、装飾のない木組みの番台は漁師町の銭湯に似合って いる。

脱衣所の広さは、幅4間、奥行3間ほど。半分は広い板の間。外壁側の半分は板の間とは柵で 仕切られて、ゴザが敷かれた休憩スペースと更衣スペースになっている。ロッカーはなく、入 口方の壁に丸い脱衣籠を収納する棚がたくさんある。

テレビがある休憩スペースには金属の火鉢があって薬缶が載っている。湯呑み茶碗があるので 一杯お茶をごちそうになる。麦茶かなと思っていたら、色が違う。淡い桜色。飲むと微かに塩 味がある。同湯の原泉だった。温泉地で飲泉というのはよく経験するけど、黒湯系や鉄鉱泉系 の鉱泉、それも銭湯での飲泉は初めてかも知れない。淡い塩味が飲泉を可能にしているんだろ うと思う。

浴室は、幅4間、奥行3間半くらいのコンクリ造。フラットな天井は高さ2間ほど。男女中心 に長方形の湯気抜きがある。壁のタイルは白の大判タイル、床は鶴見の銭湯によくあるような 凸模様の入った5センチ角のもの。ビジュアルはない。

島カランは2列で、カラン数はセンターから、5・3・3・3。4間幅につき入口方の壁にも 5つのカランがある。

浴槽は、外壁側から、2人用位の温泉浴槽、ラベンダーの入浴剤を入れた浴槽が2つで、座ジ ェット×2、深槽と並んでいる。温泉槽から入ると激熱だ。傍らに湯もみ板が置いてあるので、 湯もみするけど熱い。横でクタッと休んでいるご常連に「いつもこんなに熱いんですか?」と 問えば、「午後9時を回ると熱くなるけど、そんなに熱い?」という反応を返される。

かなり熱い湯も大丈夫だけど、これは熱い。しかし、気がつけば手足がかなり陽に焼けていた。 今日は体感での温度測定は不能のようだ。しかし、同湯はかなり熱い部類に入るのは間違いな い。女将も、重油が高いのでそんなに熱くはしていないと言いながら、付近の銭湯の中では一 番熱く、1度くらいは高いと言っていた。

昨日、寄った時は、聞きなれない名前のハチミツ色の飲み物を頂いて休憩した。今日は、同じ く地場の乳業メーカーの新湊乳業協同組合の「新湊フルーツ」なるものを頂き、休憩スペース でゴロ寝する。火鉢の横に角材を切った枕が積んである。初めて見るものだけど、何か漁師町 にマッチした小道具だ。

テレビは、NHKの歌謡番組が流れている。
今日は、砺波、井波、城端、福光の銭湯&遊廓跡を駆け抜けてきた。そして、氷見は時間切れだった。
われながらクレイジーな旅行だ。
眼を瞑ると、一日の疲れがだんだんと溶けていく。。。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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