差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2008年9月25日木曜日 6:26
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 朝日湯(富山県高岡市白銀町)

ナカムラです。

今日(9/7)は、「朝日湯(富山県高岡市白銀町)」に行ってきました。 高岡駅(JR北陸本線)から、0.6キロ、6分くらいです。

滑川、東岩瀬、越中大門の銭湯&遊廓跡を散策して、今日のひと風呂は北陸本線の線路際にあ る「朝日湯」。

越中大門の遊廓跡は素晴らしかったし、「大門赤湯鉱泉」もロケーションやその佇まいに強く心 揺さ振られた。しかし、生憎の定休日(毎週日曜日)に重なり入浴は叶わなかった。

廃業が進んで数は減ったとはいえ、高岡市は銭湯が多く、人口対比で見ればかなり稠密に銭湯 がある。ビル銭ばかりの中で、朝日湯はその中で一、二を競うレトロ度の高い銭湯だと思う。 昭和ヒト桁の創業という。基本的には現在もその建物を引き継いで営業している。そして、当 時からの見事な柱時計、昭和26年の「入浴心得」など脇役もなかなか充実している。

どっぷりと夕暮れてから高岡駅に着いた。残念ながら銭湯の外観はあまり仔細にはうかがえな い。仄かに油井型の煙突が見え、脱衣所部分が木造銭湯であるのが確認できる。ただ、後方の 浴室部分だけでなく、東京銭湯の破風入口が直方体建物のフロントスペースに建て換わってい るように、同湯もエントランス部分や番台、タタキの部分がコンクリ造の建物に置き換わって いるようだ。

コンクリ支柱の屋根を持つエントランス部分。昭和的なアルミ製のドアを手前に引くと、番台 とコンクリの広いタタキがある。カーテンなどの目隠しもなく、番台向こうの女湯側への視界 もかなりオープンだ。もっとも、脱衣は奥の方でするのだろう、見えることはない。このあた りの雰囲気は中京地区の古い銭湯に似ている。高岡は呉羽山の西に位置する「呉西地区」。呉東地区の富山と異なって、文化圏的には関西の影響を強く受けているようだ。

80歳に近いだろうか、女将に400円を渡して番台と反対側の靴棚に靴を放り込む。

脱衣所は、籐敷きで外壁側に1間増築しての幅4間、奥行は広めのタタキ部分を入れて、やは り4間ほど。天井は平格天井。天板には壁紙が貼られて、一部埋め込みの照明が取り付けられ たりとオリジナル度は高くない。しかし、地方でなかなかお目にかかれない立派な格天井の脱 衣所だ。

見どころは脱衣所の上部三面にある縦長の窓だ。縦開きの窓は、縦横2本ずつの桟に昔のガラ スが嵌められている。まさに「洋館の窓」だ。

そして、その傍らに創業時からの柱時計が現役だ。REGUTATOR(精工舎製?)と書かれている。 大きな振り子の精密な造り込みには目を見張らされる。かつての時計は振り子をこれほどまで に精密にコントロールする必要があったのだろうか。たかが振り子なのに、かなりの部品数で 構成されている。

その他、あまり見かけない「YAMATO SCALE」とある珍しくがっしりとしたYAMATO製のアナログ 体重計、定番の火鉢などがある。ロッカーは台形ガラス窓の金沢的なもの。籐編みの丸籠も現 役というか、こちらが主力で使われている。

富山とその西側の高岡との間に呉羽山がある。富山の人はそれを境として「呉東地区」「呉西地 区」という言葉を使う。組合のWebでも県内の銭湯を「富山市」「呉東地区」「高岡市」「呉西地 区」というカテゴリーで区分している。この呉羽山を境に言葉や風俗の違いがあるという。東 側の富山が関東文化圏で西側の高岡や金沢が関西圏。あまり、文化的な旅行じゃないので、そ の違いを実感はできなかったが、どうなのだろうか・・・。

さて、風呂だ。 浴室は、コンクリ造という感じだ。幅3間半、奥行4間ほど。天井は最高部が3間弱のヘの字 型の天井でプラ板が貼ってある。外壁の外には欄干のある廊下があって、その外にはコンクリ で造られた池があった。

島カランが1列で、カラン数はセンターから4・4・4・4。センター側のカランは、高い位 置に付けられていて、椅子もそれに合わせた大きなものが置かれている。高齢になるとしゃが むような低い椅子に座るのが難儀になる。そういう人への配慮がなされている。

外壁側にもシャワーがあるけど、このシャワーが少し変わっていた。外壁側には窓があって壁 が低い位置までしかない。下から管が伸びていてそれに取り付けられている。少し奇妙な光景 だ。さらに、シャワーの下向きのレバーは、前後左右に倒した時に湯が出て、最も下にした時 にだけ停止する。初めて遭遇するなかなか変わったシャワーだ。

浴槽は、センター側から座ジェットとバイブラ槽。温度は42度くらいと低い。脱衣所方セン ター側にはじつこうの薬湯。その奥には3人用くらいの無料スチームサウナがある。

小生が浴室に入った時、すべりの悪いガラス戸が3センチほど閉まっていなかった。すると島 カランの一番鼻に座って髭を剃っていた人がいきなり立ち上がり、閉めに行き、近くにあった 桶を思い切りけり飛ばしていた。凄い音だった。そこで小生の所作に対しての憤りと知り、浴 槽に入りながら全てを眺めていたので会釈を返した。

しかし、寒い冬なら知らず、そんなに神経質にならなくてもいいのにと思いながら、視線をそ らさずその人のことを見つめていた。次に何か言ってきたら喧嘩になるなと思いながら、そう なった場合の展開を考えていた。

旅先2日目で、喧嘩して怪我するのもやだなと思っていたけど、桶にしか感情をぶつけられな い人だった。

上がりは、明治の中頃に、町外れの旧羽衣町に追いやられるまで遊廓があった桐木町、御旅屋 町、末広町周辺を散歩。そして、赤ちょうちんを提げ、いい雰囲気だった居酒屋「たかまさ」 の暖簾を潜った。

なかなか当たりだった。レモンサワーにこの店の定番酒の「立山」の燗2合。明日赴く予定の 砺波の酒で小生の好きな銘柄だ。それに、イカ刺し、さんまの塩焼、蛸のから揚げなど頂いた がどれも美味しかった。隣席は大阪のコンサルタントの方で出張の度にここに寄るという。そ うだな、それくらいの価値があるなと感じた。そして、もう一軒、飲み過ぎた・・・。 (なのに、翌日もまたここで飲み過ぎましたとさ。。。)

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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居酒屋・たかまさ





末広町の電停から宿のある本丸会館前まで、終電の路面電車(万葉線)に乗る。
新しく導入されている新型の低床式のドイツ製車両とは乗り心地で月とスッポン。
しかし、このウォーンという加速音は、墨東に通った永井荷風が聞いていた音と同じだと思う。