差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2015年3月6日金曜日 22:23
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: あたり湯(大田区大森西)

ナカムラです。

今日(1/8)は、「あたり湯(大田区大森西)」に行ってきました。大森町駅(京浜急行)から、0.9キロ、10分くらいです。

「ゆーシティ蒲田」は盛業中。古いビル銭湯の「蒲田福の湯」は、建て直しに向けて解体に入ったばかり。この福の湯が改築して再開を目指すことに少々驚いた。

現場での仕事を終え、夕刻、大森町駅に向かって歩き出す。ノコギリ屋根を持つ日本研磨材工業大森工場(昭和24年設置)に遭遇。旧陸軍の南部式拳銃や警察拳銃のニューナンブM60などが製造されたミネベア大森工場(旧中央工業)跡地に、住友不動産が大規模なマンションが建てるようで更地にタワークレーンが聳え立っている。

さて、あたり湯へ。大森町駅前から北に延びる「大森町共栄会商店街」が尽きた所にある。東西に走る東邦医大通りに面し、残るのは一軒のみだけど粗末な平屋が何軒か並んでいただろう花道の奥にある。同湯を回り込む私道の奥にも古いアパートなどがあるようだ。同湯はおそらく公道に接していない。そんな古くからの土地に建っている。

昭和30年位の築創業という、モルタル外装の簡素な木造銭湯。後方に金属キャップを被せたようなコンクリ煙突が見える。

元々はどんなエントランスだったのだろうか。今は、煉瓦色のタイルが張られた直方体の建物に増改築され、コインランドリーとロビースペースに充てられている。ファッサードには正六角形で「あ」「た」「り」「湯」と縦にジグザグと並ぶ看板が印象的だ。

暖簾はない。ひとりごとを言い続けている空き缶集めの爺は、空き缶を積んだカートを物陰に隠し、”財産”なのだろう必要以上の衣類を抱えて同湯の中に入っていった。小生も続く。

旧型さくら錠の下足箱がL字型に並ぶエントランス。さらに自動ドアを通ると、立派なソファが置かれた絨毯敷きのシックなロビー。カウンターの下は瀟洒なショーケースがしつらえられている。奥の大きなはめ殺しガラスの向こうにはライトアップされた、池、石灯籠、井戸などが並ぶ趣ある立派な庭が広がる。風呂銭を女将さんに差し出す。乾式サウナが無料という、嬉しい大田区価格だ。

脱衣所に進むと一気に寂寥感が増す。広さは、幅3間、ロビーにスペースを喰われて奥行きは2間半ほど。大黒柱には”総合建設イシイ”のシールが剥がれかけている事務用のチープな円形時計が掛かる。

以前はよく遭遇した総合建設のイシイが施工したコミカ風呂。いつの間にか廃業が進んだようで、同湯のような典型的なコミカ風呂の銭湯は久し振りだ。

昭和の末期頃だろうか。改装され尽くしたためにイニシエ的な物は無い。そして、大改装以来30年近くも再投資されていないのか全てがシャビー。壁の白い模様が入ったクロスは煤け、天井の白い石膏ボードには黒々とした雨漏りの跡が広がっている。

照明も半分程度の点灯にとどまる節電モードで、物理的にはもちろんのこと心理的にも暗澹とする。床はこの季節には寒々しい、樹脂製のクッションフロアだ。

ロッカーは、筆記体の「Oshidori」の刻印があるブロック状のものと、更新されたノーブランド錠の混成。荷物と厚着のせいで、ロッカーを2個使わせて頂く。

浴室の広さは、幅3間、奥行きは4間。天井はプラ板張りの2段型。島カランは2列で、カラン数はセンターから8・4・4・3・1。

床のタイルは膨らみが無くレトロさはないものの、3センチ角の白いものが黄ばんだ感じになっている。男女境も白色の中判のタイルで、所々にスズランの花がプリントされている。白色ゆえにくすみが目立ち、それが浴室全体の雰囲気をより古びたものに感じさせるのかも知れない。お湯はおそらく井戸水利用。析出物が多い水質で、それが清掃を難しくしている感じがする。

浴槽は、外壁側の部分が一部張り出した2槽。縁には大理石が使われている。外壁側は多少白っぽい濁りのある井戸水と感じられるお湯で41度くらいの温い温度設定。大理石の焚出し口のあるセンターサイドの主浴槽は、バイブラで43度のやや熱めだった。

サウナは、浴室にすっぽり入るかたちで外壁側に増設されている。5人ほど入ることが出来る広さ。ガス式で中はただただ静寂。相客が数人居たものの、生活銭湯派でサウナを使う者はいない。

全面焦げ茶色のタイル張りの奥壁。凹凸で、大海原、太陽、舟がデザインされている。これも典型的なコミカ風呂のビジュアルだ。

木曜日の17:30から18:30に滞在。相客は数人。少なくなった典型的なコミカ風呂。老人施設を見学して軽く滅入っているなか、ひとりごとを言い続けている空き缶集めの爺と一緒に浸かるのはひとしおだった。ロビー横の庭池を持つライトアップされた庭園は見事。だけど、何処か風前の灯火感を感じざるを得なかったかな。

大森町までの帰路の古くからの商店街。吉田屋製菓で土産の餅菓子を買い、昭和30年代的な商店を眺めながらとぼとぼと帰った。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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                      千恵美容室











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