差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2009年3月22日日曜日 12:03
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: あやめ湯(静岡県伊豆の国市古奈)

ナカムラです。

今日(3/21)は、「あやめ湯(静岡県伊豆の国市古奈)」に行ってきました。 伊豆長岡駅(伊豆急行駿豆線)から、1.0キロ、10分くらいです。

今日は、定期的な血液検査のため近くのクリニックに行ってから、整形外科で首やら腰やらの メンテナンスを受ける。そして、思い立って、計画だけで放ってあった伊豆長岡の「長岡銀座」 と呼ばれた、歓楽街温泉の赤線跡の探索と、「南大衆浴場」か「あやめ湯」のいずれかで休憩し てこようと出かける。

戸塚駅では崎陽軒の「横浜チャーハン弁当」を調達して東海道線に乗り込む。お茶しながら新 聞に目を通して、POMERAで昨日訪れた吉野湯の雑文などを書いているうちに2時間ほどが過ぎ て、伊豆長岡駅に降り立つ。

伊豆長岡温泉は学生時代のゼミ旅行で「小松家」という旅館に泊まった記憶があるけど、クル マで行って、旅館の温泉に入って、飲んでいただけだから温泉街の記憶はない。

現在は「伊豆長岡温泉」と呼ばれているけど、源氏山で隔てられた「古奈温泉」と「長岡温泉」 の2つのエリアに分かれている。町のはずれにある伊豆長岡駅から狩野川を渡って最初の温泉 が古奈温泉。あやめ湯はこっちにある。長岡温泉はさらに1キロくらい先。こっちには「南大 衆浴場」というボロい共同浴場があって、こっちがマーク先だったけど、最近改築されたよう で、綺麗な建物に変わっていた。

赤線跡の「長岡銀座」は100メートルに満たない細い小路だった。しかし、その一部には、 妓楼風の建物が残っていたり、かつての女性街の痕跡が濃厚だった。ただ、買い物帰りの女性 に通報されたようだ、しばらく婆さんに行動を監視されながらの撮影だった。まぁ、すでに住 宅地に溶け込むように風化しているので、小生のようなある目的を持った者が目障りなのは理 解している。

しかし、敢えて意識しないようにして、最小限のシャッターを切らせていただいた。婆さんは、 最後に「観光客でここまで入っていくるのは珍しい」とのたまっていた。まぁ、並の温泉客と は違うかも知れない。銭湯や赤線跡だけでなく、温泉にだって詳しいんだという意味も含め て・・・。

さて、あやめ湯。第一目的地だった「南大衆浴場」が改築、市営に移管され、名称までも「長 岡南浴場」に変わって、綺麗になっていた。新しく清潔な設備に更新されていることが入浴し ない理由というのは、常人には理解できないだろうけど、フィーリングが合わなかったので、 往路を戻って古奈温泉の「あやめ湯」にする。

昭和初期の建物をがベースになっているという古くからの共同浴場のようだ。近くに老舗旅館 が立ち並ぶ温泉街の風情ある中心地にある。「あやめ湯」という扁額が掛かり、ブルーの行灯看 板が立っている。

暖簾を潜ると奥行きの半間ほどのエントランススペースがあって、窓口とその傍らに小さい自 販機がある。入浴料やタオル、石鹸などのボタンが並ぶ。入浴料は300円。出てきたチケッ ト窓口氏に渡して横の木戸をガラガラと開ける。

そこにはコンクリの叩きと、傍らにコタツを置いているような番台的な窓口の裏側がある。下 足箱はなく棚があるだけ。上にテレビがある。

カーテンをかき分けると2間四方の脱衣所だ。2階が乗っているので押し縁天井の高さは通常 の民家並み。外壁側に四角籐編みの脱衣籠を収納する棚とグレーのスチールロッカーがある。 その他は、ヘルスメーターがある程度。一番古いのは男女境にかかる木枠の鏡だと思う。酒屋 の屋号と長岡五九番という電話番号が彫られたレトロなものだ。

浴室は、脱衣所よりも1段階段で降りたところにある。幅は2間、奥行3間のスペース。天井 は、高天井部分の幅は細いものの2段型になっている。BGMが笙が奏でる雅楽というのも初 めての遭遇かも知れない。案外いいかも。

昭和42年に浴槽の改築、平成8年に脱衣所、浴室、浴槽の改築を行ったとの木札が脱衣所に 下がっていた。それにしては古い様式を踏襲している。壁や建具などはすべて古くからのもの と同様に木製で作られている。同湯には明確な改修ポリシーがあるのだろう。それに則って改 修していることがうかがわれる。なかなか素晴らしいことだ。

島カランはなく、カランは外壁と奥壁にそれぞれ3つずつ湯温調節可能な混合栓が付いている。

浴槽は、男女境に接して彫り込まれた感じのもの。縁には白木が張られている。温泉協同組合 の2つの源泉をブレンドしている。いずれの源泉も60度ほど。直接投入している感じではな いので、加水あるいは循環で使っているのかも知れない。しかし、若干の濁りがある肌触りの いい優れた温泉だ。

渋い内装ながら男女境には風景の写真が後ろに仕込んだ電球色の明かりで照らされている。3 枚が富士山を絡めた風景。残りは森林と渓谷の写真だった。

何度も浸かっては、出て、タイルに腰を下ろしてと、気分いい時間を過ごした。3連休だけど 客はほとんど地元の人のようで、それぞれが挨拶を交わしている。

聞くところによれば、長岡温泉の方の「南浴場」は少しずつ60度の源泉を投入する方式とい う。そのため少し浸かっても身体が赤くなるほどの熱さだという。それはそれで興味がある・・・。

同湯では飲料の販売はなく自販機もない。向かいにあやめ寿司という寿司屋があって惹かれた けど、あまり時間もないので手打ちそばとある「朝日屋」という店で、エビスビール、燗酒、 かきあげ、鴨せいろを頂いた。かきあげは技量を要する料理だ。厚さ6センチはある本格的な かきあげ。完璧ではなかったけど、それぞれの天種に最小限の火が通されている。観光地の蕎 麦屋にしては、やるなと感じさせるものだった。手打ちそばもまずまず。しかし、丁寧で燗の 頃合いは良かったけど、肝心の酒が今一歩だったかな。

帰路はタクシーで伊豆長岡に戻り、新幹線か迷ったけど、三島発20:39発東京行の普通列 車にする。JR東海管轄のの三島駅から東京駅への直通電車は少ない。やって来たのは、予想 通りクロスシートの特急用の車両だった。ちょっと時間はかかるけど、新横浜、横浜で乗り換 えが必要な新幹線で帰るよりもだいぶ楽な帰館だった。

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