野毛・バラ荘 H18.3.11

昭和29年創業の野毛の老舗バーの1つ。70は優に超えているだろう白髪のママがアイスピックを握り、シェーカーを振る。
使っていないプランターや段ボール、雑誌が積まれていたりと、まさにボロ銭の趣きがある。

第二紅陽館で生ビールを飲んだ後、カクテル「ヨコハマ」、ジントニック、マティーニを賞味する。
味は驚くほどのものではなかったけど、この雰囲気で、酒が飲めるのはいい。

銭湯の話しを向けたわけではないけど、ママの方から、常湯の「末吉湯(中区末吉町)」がH17.12.25で廃業したことを教えられる。
今は、もうひとつ先の「弁天湯」に通っているという。

偶然だけど、同店は「横濱芸術のれん街」の参加店で、3月14日までのBankART主催の「食と現代美術展 part2 -美食同源」の会場の1つになっていた。朽ちていく薔薇など、写真家・石内都の大小5作品がさり気なく並んでいる。

驚いたことに、その石内都氏がカウンターの最奥の椅子で連れの人と飲んでいる。

石内都は、1970年代の後半、「横須賀絶唱ストーリー」、「アパートメント」、「連夜の街」の3部作でデビューした女性写真家。
独特のトーンのモノクロプリントが、多感な頃の小生の心を揺さぶった。

特に「連夜の街」は、旧遊郭やカフェーを追ったもので、今の自分が惹かれるモチーフでもある。彼女も若かったからだろう、ゲリラ的に撮影した、今となっては貴重な内部映像も多い。古書店では手の届かない値段が付いている。

当時30歳だった石内氏も50歳代半ば。美術界のオリンピックであるベネチアビエンナーレに、篠山紀信に次いで日本人で2人目の個展出品に招かれたりしている。彼女の最近の仕事は、意義を認めつつも好きになれないけど、世界的に評価されている。今回の薔薇の写真については、小生が信奉する荒木経惟にモチーフが近似しているという印象を持った。



バラ荘、右端の方が石内都氏




こっちも老舗バー「山荘」