弁天湯（西木屋町五条下平居）

差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2006年12月2日土曜日 12:31
宛先: 銭湯ＭＬ (sento-freak@kt.rim.or.jp)
件名: 弁天湯（西木屋町五条下平居）

ナカムラです。

今日（11/8）は、「弁天湯（西木屋町五条下平居）」に行ってきました。
五条駅（京阪電鉄線）から、０．３キロ、４分くらいです。

五条大橋を渡り、更に高瀬川を小さな橋で渡ると、現役の風俗街｢五條楽園｣。同湯はその中にある。五條楽園に接するのは初めてだけど、風俗街にしては、それらしくない。お茶屋の入り口には提灯が下がっていて、周囲は掃き清められている。お客を迎えるという緊張感がある。しかし、いわゆる風俗店とは全く異なった世界だ。

これが、お茶屋か･･･。

雨降りの中、あちこちに同じ提灯が揺れる風景は風情がある。緋色の和服を着た若い娼妓が視界に入ったりもする。そっとカメラを操作するものの、いつのまにか、背後に遣り手の｢おかあさん｣の視線があったりする。そもそも、カメラを扱ってはいけない場所なのだ。

同湯の建物も古色蒼然とした焦げ茶色の町屋風の建物だ。欄干もあり、かつてはお茶屋だったのかも知れない。京都の町屋は間口が狭いものの、奥行きは相当に長い。同湯も奥行き４０メートル弱はあるだろうか、裏口は高瀬川に接している。そして、高瀬川の傍らに油井型の煙突が立っている。

暖簾を潜ると狭い靴脱ぎスペース。相客と競合したけど、双方が難渋するほどの狭さ。後から脱衣所スペースを削って造ったようだ。下足箱の錠はツル･カメ。

障子にガラスを嵌めたような感じの戸を開けると、小さな脱衣所がある。幅は２間弱、奥行は緩衝スペースを入れて４間ほど。天井は２階が載っているので普通の住宅と同じ高さだ。

変った番台だ･･･。バー･カウンターの如く、周囲が深い臙脂色のレザー張りで、それを鋲で止めている。形も変だ･･･。人が座れるスペースはない。細身の人であれば、無理無理立って入ることはできるかも知れない。元々は奥行きがあったらしく、靴脱ぎスペースの増設とともに、チョン切られたようだ。機能としては｢番台｣の体をなさないのに、残している。思い入れがあるのだろう。

歳は小生より少し上か、京美人の女将に３９０円を渡す。｢おいでやす｣と迎えられ、お金を払うと｢おおきに｣と来る。京都だよなぁ･・･。相客を見ていると、どのようなものかは判らないけど、入浴券を手渡している人が多い。

床は籐敷きで、外壁側には折鶴錠のロッカー。小生は、いつものように、脱衣をそのままロッカーに放り込んだけど、ご常連は脱衣籠に衣類を入れ、それをロッカーに収納している。柳行李とプラスチック脱衣籠が、双方１０個づつくらい、男女境側に積まれている。京都発祥の柳行李。今では作れる職人がほとんど居なくなり、かなり高価なものになっている。とても銭湯ではリプレースはできないだろう。

その他、旧型のマッサージ機、宝飲料の冷蔵庫、アイス用の冷蔵庫、Ｙａｍａｔｏのアナログ体重計がある。Ｙａｍａｔｏの体重計は、とことなくチャチで軽いイメージを持っていたけど、同湯にあるものは、古くはないものの、あの寺岡式くらいの重厚なものだ。

トイレを間違う客が多いのだろう、｢勝手口｣と書かれた扉がある。同湯のトイレは、外に出て、内廊下延々と後ろに行って高瀬川の方にある。

緩衝スペースは奥行き０．７５間ほど。男女境側に流しがあって、ガラスで仕切った反対側には薬湯槽が増設されている。

浴室は、幅２間弱、奥行４間ほど。天井は３０センチ×９０センチの木板で四角錘に組まれ、間中に２間四方くらいの大きな湯気抜きがある。よく見ると、ブルーのペンキに塗られた、四角錘の各面が微妙に膨らむ形でカーブしている。さり気なく、かなり高度な技が使われている。

カランは、外壁側に９と、真中奥にカランが２つ付いた２０センチ各の島カランが１つある。カランは｢宝｣マークの赤･青のレバーを向こうに押す式のもの。タイル類に古いものは無く、全て新しいものに更新されている。

浴槽は、奥壁に１人用の水風呂と、男女境にまでＬ字型に延びる無料乾式サウナ。赤い毛氈にカーペットが敷かれたサウナ室は清潔だ。無料だからメンテナンスがいい加減という雰囲気は微塵もない。

男女境に接するかたちで、奥壁のサウナ方から、デンキ、深槽、１穴ジェット×２の浅槽がある。デンキは試さなかったけど、湯温は何れも４２．５度くらい。

ビジュアルはない。壁のタイルは、白煉瓦を積んだ風なタイル。男女境はコミカ風呂ブランド的はデコボコの白い装飾タイル。床はダークグレーの厚手のタイルで足触りがいい。なかなかシックな浴室だ。

上がりは、レモンの氷菓子。レモンをスライスしたものが入っているこのアイスが好きだけど、カチカチに凍っていて、食べるのに時間がかかる。
雨降りの土曜日。１６：５０から１８：００に滞在。相客は１０人くらいか。土曜日の夕食前にしては客が少ないかなという印象だった。

無料乾式サウナと、色町ゆえか営業時間は１５：００から１：３０までとロングラン。なかなか、いい銭湯だ。

表に出ると、雨は強くなっている。雨で嫖客は見当たらないけど、提灯の傍らには遣り手のおかあさんの姿が見えたりもする。夜に向け五條楽園の風情は艶を増していた。

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ナカムラ　（Masayuki Nakamura）
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