差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2012年7月7日土曜日 23:32
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 別府湯(京都市南区東九条石田町)

ナカムラです。

今日(6/29)は、「別府湯(京都市南区東九条石田町)」に行ってきました。 十条駅(市営地下鉄烏丸線)から、0.5キロ、6分くらいです。

今の会社に移って5年半になるけど、17:10の定時退社は初めてかも知れない。陽が長い中、早々 に会社をズラかって、眼下に見える東京駅に一目散。。。

崎陽軒の弁当と氷結を携え、16番ホームから京都へ。先発の相棒と京都駅で合流し、地下鉄で十条 駅まで。小生は東京の十条に住む。京都の十条は初めて。東京と同じように、朝鮮高校があって、 焼肉屋が多い町だった。

この一帯は、銭湯が多く残っているエリア。別府湯に行く前に、長屋の中の「石田湯」や、「明田湯」 を見て回る。両方とも、古い建物を改修した銭湯。特に、明田湯は、京都独特の丸みを帯びた古い 破風が残る銭湯だった。

石田湯の辺りも濃かったけど、別府湯あたりも濃い町並みが続いている。狭い路地、家々の窓が開 いているせいもあって、通り抜けるのがためらわれるほどだ。

そんな前振りの後、別府湯に到着。隣が理髪店、向かいが美容室というローケーションに、油井型 の煙突を持つ同湯はある。

女将によれば昭和初期の建物らしく、外観はほとんど手を加えていないという。戦前の京都の典型 的な建物として、東寺の「日ノ出湯」とともに、京都の財産として残したい”京都を彩る建物や庭 園(京都市)”に指定されている。

オリジナルの破風の下に新しい入口屋根が増設されているものの、木製の手摺りを持つ二階家、屋 根を持つ居宅側の門、丁寧に刈り込まれた庭木など、なるほど、古都の財産に相応しい風格がある。

暖簾を潜れば、タイル張りの上がりかまち。天井は、簡素な木板ペンキ塗りの山形。下足箱は、両 サイドにおしどり錠のもの。そして、この建物と同じだけ時を経てきたと見える、傘を突き差す式 の古豪の木製の傘入れ。男女湯の区別は扇形の木板に「男」「女」とある。

扉を開けると幅3間、奥行4間ほどの脱衣所。女将さんは、番台の前にパイプ椅子を広げ、入って くる客に”おいでやす”と声を掛ける。番台は、前面がカーブした木目プリントの新建材張りのも の。高さは東京銭湯よりも低い。しかし、番台は使われていないようで、布張りの衝立何枚かで仕 切り、そこを小さなロビーのようにして使っている。

壁も木目プリントの合板。高くはない天井も昭和中期的な新建材が使われている。ロッカーは、外 壁側におしどり錠のものが並ぶほか、四角い脱衣籠が、2列で20個ほども積まれている。

三人ほどの相客が、上がって談笑中。浴室に客が切れているので、女将さんに声を掛け、浴室の奥 壁の”海女が潜って貝を捕る”図のモザイクタイル絵を撮らせてもらう。相客の口から”珍しいも のなのか?”という声が漏れる。

かつて、大阪高島屋の特別食堂を飾ったのと同様の泰山タイルによるモザイクタイル絵だ。絵では ないものの、先斗町の歌舞練場、そして、河原町の喫茶店「築地」や百万遍・進々堂の外装に使わ れているタイルと同様のものらしい。陶器のような質感と、煤けたような渋い色調が持ち味だ。同 湯の近く、東九条に泰山製陶所があったらしい。

浴室は3間四方。天井は、幅のある木板が、山形に組んである。その中央に、90度ずらし、やはり 山形の湯気抜きがある。こっちは、木板のペンキ塗りではなく、陽光を導く半透明の波板が載せら れている。

カランは、外壁側に8、脱衣所方に2、奥壁に1。その外に、ここだけレトロな小石型のタイルが残 る、2機のカランがある円柱型の島カランが2つある。

浴槽は奥壁から男女境へとL字型に、主浴槽、深槽、電気と並ぶ。浴槽、床のタイルは黄緑を基調 としたもので、心地いいくらいに清潔に維持されている。

湯温はいずれも42度弱とやや温め。女神像の壺からの噴流とは別に、浴槽カランからもお湯が投入 され、ジェットでオーバーフローさせている。設備は古くて最小限。しかし、清潔なお湯を売る” 湯屋”のという姿勢に振れはない。見ていて清々しくなる。

さらに、男女境側、脱衣所に食い込むかたちで、京都銭湯のお約束の井戸水掛け流しの水風呂があ る。気持ちがいい至福の水風呂。この半穴蔵の水風呂からの”風景”がいい。女神はお湯を注ぐ、 あふれる浴槽のお湯、天井の形状の妙。そして、工芸品とも呼べる泰山タイルのクラシカルなタイ ル絵。。。

こんな空間に、もったいなくも、終始、小生ひとり。

上がりはらくれんの牛乳120円。女将さんが扇風機のスイッチを入れてくれた。

金曜日の21:50から22:40に滞在。相客は3人ほど。典型的な京都銭湯。オーバーフローさせてい る清潔なお湯や、清澄な水による水風呂。京都銭湯のいい所が凝縮されている。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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  京都駅南側の東九条、いわゆる京都と趣きが違うけど、これも京都らしい風景だ