差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2008年6月22日日曜日 16:16
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 千代の湯(みどり市大間々)

ナカムラです。

今日(6/21)は、千代の湯(みどり市大間々町)に行ってきました。 大間々駅(わたらせ渓谷鉄道)から、0.3キロ、3分くらいです。

今日は、行動のスタート時刻が遅かったのと、福居遊廓跡(足利市福居栄町)の割り出しに時 間を要したのと、足利の雪輪町遊廓&永楽町赤線跡が充実していたとので、太田の赤線跡の探 索はパスしても、赤城駅(東武鉄道桐生線)についたのが17:42にもなっていた。

同湯へは、大間々駅よりは遠いけど、赤城駅から隣湯の高砂の湯を経由しながらトボトボと1.0 キロくらいの道程を行く。

隣湯の高砂湯は、屋敷神の建立が昭和2年建立なので、築年がその頃と推定される伝統的木造 銭湯。藤棚の下に入口がある。古風なペンキ絵がありながら、2段型天井の高い部分が自動車 用の強化ガラスで煙突が見渡せるという、ビジュアル面で型破りな凄い仕様だった。強化ガラ スは、こぶし大の雹が降っても大丈夫らしい。サウナ設備もあって、古風な中でなかなか居心 地のよさそうな明るい銭湯だった。ご主人に「秋までに、また来ます。」と約束する。

さて、千代の湯。大間々駅の駅前通りを進んで300メートルくらい。突き当りのお茶屋の横 を少し入って行く。 隣には創業220年という「日本一醤油(岡直三郎商店)」の醸造蔵があって、煉瓦煙突があっ たりする。間違えそうになるけど、同湯の煙突は灰色のヒューム管をステーで支えた簡素なも の。微かに黒煙を出している。

表通りからは舗装されていない100メートルくらいのアプローチ。 同湯を見た瞬間、「来て良かった。。。」との思いがこみ上げて来る。

少なく見積もっても昭和初期。それ以前の可能性も濃厚だ。お女将さんも分らないという。そ んなレトロなものが、かなりオリジナルな姿で残っている。まがうことなき「銭湯遺産」。

独立したエントランス部分というのはなく、建物の妻面に2枚で構成されるガラス戸が男女そ れぞれにあるのみ。それぞれに「千代の湯」という紺地に白抜きの古びた暖簾が下がる。よく 見ると継ぎはぎだ。番台裏の窓枠に、猿のぬいぐるみがぶら下げられている。客が「去る」と して、銭湯のビジュアルでは嫌われるものなのだが・・・。その下が白磁に紺で模様を描いた 装飾タイル。華やかで絢爛としたマジョリカタイルもいいけど、いぶし銀の同湯にあっては実 に相応しい装飾だ。

ガラス戸を開けると土間に番台。下足箱は番台の側面と、スノコを介して外壁側にオール木製 錠が整然と並んでいる。昭和2年築の高砂湯も同様のものだった。

大間々の銭湯の値段は360円。ご高齢ではあるけど、髪をしっかりとセットし、黒を基調と しながらも華やかな模様の入ったシックな装いの方だった。外で写真を撮っていたら電気を灯 して下さったりと、珍客にも心配りを欠かさない。

脱衣所の広さは幅2間強。奥行きは、土間の部分を入れて3間ほど。天井高は、総じて一般住 宅くらいしかなくて、入口部は天板すらない。後方は押縁天井。照明器は、並行する2本の蛍 光灯を吊下げるという昭和30年代仕様のもの。この銭湯では新参者の器具かも知れない。

ロッカーはなく、使いこまれた脱衣籠があるのみ。アナログ体重計は「貫」目盛りのある古い もので、「YOKOHAMA SCALE PRODUCT」とある。高砂の湯も同様のものだ った。これは横浜人の小生も初めて遭遇するレアなものだ。

その他、カラオケセット、何故かエレクトーン、ソファと木製ベンチ、おそらく現役ではない 見ないタイプの大型扇風機がある。上から商品を取り出す方式の古風な冷蔵庫はあるけど、自 家製瓶詰めのオンパレード。飲料の販売はないようだ。

床は家庭用のカーペット。女将さんの人柄だけではなく、これが同湯をアットホームな雰囲気 にさせている。女湯には大型のテレビが置いてあって、入りしなに視界に入るけど、どう見て も「居間」とそこの「テレビ」にしか見えない。ひょっとしたら、エレクトーンがあったりと、 ここは本当に「居間」なのかも知れない。。。

浴室は、幅2間強、奥行き3間ほど。天井は格天井というほどではないけど、格子に天板が張 ってある。そして、男女の上に長方形の湯気抜きがある。

男女境は、カラン台の高さから上が薄い模様ガラスになっている。女湯のスケスケ度では最高 峰かも。今泉湯(北九州市若松区)では、カラン台から上の高さが全てガラスブロックという のに驚いたけど、見えそうで見えないのだろうけど、同湯の透視度はかなりのもの。今日はた またま、ガーフルレンドを連れた美術学生と一緒に入場したので、気遣いや照れもあって、男 女境には背を向け、島カランに席を取る。相客2人で、既に椅子がない。ピーク時想定収容人 員数が2名ということか。まぁ、そうかも知れない。

タイルは、大きさは異なれど全て白タイル。床は2センチ角のものが使われ、洗い湯を流す溝 すらない古風さ。カラン台も浴槽のヘリもすべて白タイルが使われている。

浴槽もシンプルな深浅2槽。深槽は43度。浅槽は42度くらい。焚き物が薪なのは間違いな い。水は確認し忘れたけど、清澄かつ柔らかい、いいお湯だ。

ビジュアルは、かつてはペンキ絵があった場所に美大の学生が現代アートを制作中。銀色のベ ースに、赤い流れという途中経過だった。一緒に入った2人ずれは、この絵の制作者の友人ら しく、「ワタラセ アート プロジェクト2008」として8/10から8/31にかけて渡良瀬渓谷 の各会場で作品が展示される。ネットを見れば、大間々会場として隣の醤油蔵とともに千代の 湯も展示会場となっている。

相客は、大間々駅近くの廃マンガン工場で絵を制作中。その帰りに同湯に立ち寄ったとのこと。 綺麗な女性を連れて渋い銭湯にやって来る。妬けるヤツだ。

土曜日の18:45から19:35に滞在。相客は2人。女湯も相客の連れともうひと方とい う雰囲気だった。

ビジュアルが伝統的なものではないので評価が分かれるかも知れない。しかし、同湯は「銭湯 遺産」に列せられるべき銭湯という気がする。大間々まで足を運ぶ価値は高い。

高砂の湯のご主人に約束したので、また大間々へやって来なければ。 赤線跡はどの辺りにあったのだろうか。今日は図書館で調べ物をする時間が取れなかった・・・。

朝飯を鱈腹食べて以降、何も口にしていない。 赤城駅19:59発の特急・りょうもう号の最終列車へ足を速める。何と、途中にコンビニと いうものが無い。小生の定番、サンドイッチも調達できず。ビールとツマミだけでの帰館とな った。足利も大間々もうまそうなものは結構あったんだけど・・・。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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