千代の湯（世田谷区三軒茶屋）

差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2006年7月2日日曜日 8:40
宛先: sento-freak@kt.rim.or.jp
件名:

ナカムラです。

今日（７/１）は、「千代の湯（世田谷区三軒茶屋）」に行ってきました。
三軒茶屋駅（東急新玉川線）から、０．２キロ、２分くらいです。

三軒茶屋では、国道２４６号線から世田谷通りが分岐している。その三叉路の三角地帯は、クルマが通れない迷路のような路地が複雑に入り組んでいる。そして、飲み屋や古くからの商店が密集して、独特の雰囲気がある。同湯はそんな、ディープなエリアの真ん中に、トタン板の塀を巡らし、コンクリの煙突を立てている。どことなく、入口付近は、どことなくバラック風だ。

同湯は、黒瓦破風屋根を持つ木造の伝統的銭湯だ。入口棟も黒瓦の立派なものなんだろう。しかし、２４６側からも、反対側からも、屋根のかかったトンネルのような通路でアプローチし、そのまま暖簾に吸い込まれる。そのため、どこからも入口棟の姿を見ることができない。

また、同湯のアプローチが、通り抜けの通路として使われないように、同湯の暖簾をくぐらないと反対側に行くことができないという、変った構造になっている。暖簾をくぐると自動音声で「いらっしゃいませ」と大きな音声が流れるし、玄関にはものものしい監視カメラが２台も付いている。

アプローチへの通路入口上には、「私有地につき、利用者以外の通行を禁止します。」と大書きされている。通行を拒む姿勢はかたくなだ。どんな、いわくがあるのだろうか・・・。

入口の両サイドには、同湯の建物と同様に、相応にくたびれたコインランドリーがある。また、２４６側から入ると、途中に「パレードコーヒー」の古い、古い、懐かしい形の自動販売機がある。錆びついて、稼動はしていないんだけど、２０年以上も前の自動販売機が、さも稼動中のように置かれ、不思議なオブジェと化している。

牛乳石鹸の暖簾をくぐったエントランス部はそこそこ広く、「男湯」「女湯」の表示もなかなかの雰囲気がある。番台裏に自動販売機を置いているのが珍しい。下足箱の錠はおしどり錠。

戸を開けると、木組みで茶色の番台の向こうに、おばちゃんが顔を出す。４３０円を出すのは２回目かな。「銭湯マップ」には記載がない、スチームサウナが見えたので、いくらかと尋ねると、野良着のような出で立ちのおばちゃんは「ウチはサービスでやっています」と。今日は、小雨が降ったりやんだりの蒸し暑い日なので、助かる。

脱衣所は、幅３間、奥行４間ほど。格天井は、煤けた白いボードで埋められているけど、それ以外は茶色の空間が広がっている。男女境の上部には、丸太が渡されているし、細かな細工はないものの、木組みの番台もしっかりとした材で組まれている。クーラーが良く利いている。しかし、レトロな天井扇も現役で、風を下ろしている。

ロッカーは、島ロッカーが中央に１つと、外壁側にある。錠はＳａｋｕｒａⅢ。東京の真ん中の銭湯だけど、脱衣籠も現役だ。その周りにベンチやテーブルと椅子が置かれ、座るスペースは多い。その他、冷蔵庫代わりの飲料販売の自販機、Ｋｅｉｈｏｋｕのアナログ体重計、マッサージ機などがある。大黒柱には、普通の丸時計だけど、その前にかなり立派な熊手が飾られている。

ご常連２人は、缶ビールを飲みながらフルちんで語りあっている。小生が入った時から出る時までずっと・・・。蒸し暑い日ではあるが、ご老人に、老婆心ながら風邪をひかないか心配になる。

浴室は、幅３間、奥行き４間の２段型。同湯の周辺が猥雑に小さな建物が密集しているのに対し、ここには広い空間がある・・・。何か意外なものを感じた。天井は高く、ペンキも剥げているというところはなく、外観の満身創痍のバラック風というのと比べ、それなりに整備されている。

島カランは１列で、カラン数は、センターから７・５・５・４。カランはＷａｇｕｒｉの取っ手が平べったいもも。レアというほどではないけど、あまり見かけないタイプ。

外側半間ほどに、奥からスチームサウナ室、立ちシャワーブース、業務用スペースが並んでいる。そのため、洗い場は、広い銭湯ながら、コンパクトなものになっている。

浴槽は、奥に深浅２槽。両方とも薄緑色の薬湯になっている。間のカラン台はモスグリーンの小タイルを張った山形のレトロなものだ。浅槽は２穴ジェットが３機くらい。焚き出し口にはガリウム石が格子の後ろに置かれている。温度は案外に高く４２度強くらい。深槽は何の仕掛けもないもの。１週間に１回くらいくるという爺が埋めまくったので４１度くらい。

スチームサウナは５人くらい入れるもの。スチームが放たれると、かなり熱い。経験した中でもかなり熱い部類に入る。スチーマーには、マジックで、いたずら、おしっこを見つけたら番台へ連絡とある。確かに、ここで、そんなことされたら・・・。あまり、気持ちのいい、注意書きではない。でも、窓から奥壁のペンキ絵を眺められるのはなかなかいい。

ビジュアルは、奥壁に丸山師の富士山が男女湯ブチ抜きで描かれている。「（西伊豆）１６．１１．１２」とある。丸山師の富士山は、落ち着きと気品があって好きだ。相客が全て上がった時に撮影を申し出るが、許しが出なかったのは残念だ。偶然だろうけど、丸山師のペンキ絵のある銭湯では、撮影の許しが貰えないことが多い気がする。また、神奈川の銭湯よりも、東京銭湯はガードが固い・・・。

同湯の周りはどうなっているんだろう。脱衣所の外側も浴室の窓にも、庭などはなく、そのため明かりはない。トンネルのようなアプローチといい、どことなく同湯全体が穴倉にあるような感じがする。ここらあたりが、同湯の閉鎖性というか、孤立した感じにさせている。

上がりは、久しぶりにメッツのグレープフルーツ。自販機の端っこに、発泡酒もあったけど、見逃していた。
さすがに、ジュースを飲んだ後に、発泡酒を飲む気にはなれない。

土曜日の１５：３０から１６：１５に滞在。相客は４人。悪い銭湯ではない。しかし、立地を含め、なかなか変った雰囲気の銭湯という感じがする。