差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2009年1月4日日曜日 13:36
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 中央温泉(奈良県大和高田市本郷町)

ナカムラです。

今日(12/19)は、「中央温泉(奈良県大和高田市本郷町)」に行ってきました。 高田駅(桜井線・和歌山線)から、0.3キロ、3分くらいです。

高田は古い銭湯が多く残っていたけど、今は同湯と高砂湯、松の湯の3軒だけになってしまっ た。遊廓があった一角の商人宿「福の家旅館」を拠点とする。階段下の4畳半ほどの部屋が割 り当てられた。何かとおばちゃんが世話を焼いてくれる。連日ホテルに泊ってきたけど、畳に 布団の方が休まるし、必要にして十分な質素な朝食は、それはそれで良かった。

山陽地方では暖かい陽気が続いていた。寒気が降りてきたのと、ここは奈良の中央部というの もあるのだろう。なかなか冷え込んでいる。

先ずは駅前の高砂湯に行く。しかし同湯は「4」と「9」の付く日は定休日のようだ。軒灯だ けは灯されていて「本日定休日」の札が照らされている。都湯は建物が残っているものの廃業。 古川湯と昨年10月9日を以て廃業した高田温泉は駐車場に変わっていた。

さて、中央温泉。隣が唯心院というお寺さんで、お通夜が挙行されている。こちらではこれが 一般的なのか、ゴクラク寺の住職のお言葉が延々と通りに向けられたスピーカーから流れてい る。

同湯は昭和4年の築創業。2階家に黒瓦の千鳥破風というファッサードだけど、大きいし、風 格がある。手前の入母屋の部分の庇も塀の黒瓦が延びていて二層になっている感じだ。

そこに牛乳石鹸の白い新柄の暖簾が揺れている。白地に赤で「ゆ」と染め抜かれた暖簾はこの 入口に似合っている感じがする。

暖簾を潜ると歴史が感じられるコンクリのタタキに、これまた年季が入ったスノコが置かれて いる。番台裏には昭和初期の銭湯建物でよく見られるマジョリカタイルによるタイル絵がある。 シンプルで広いエントランススペースだ。

脱衣所スペースに入ると古風な番台。その後方には大黒柱が定位置という風格のある円形文字 盤の黒柱時計が架かっている。番台横だけが1段低くなっていている。東京の大型銭湯で見る 構造で、地方で目にすることは稀だと思う。

女将さんに380円を渡す。料金表は確か400円だった。今回のツアーでは結構料金が店に よってマチマチだという印象がある。洲本・清水湯でも料金表よりも10円安かったり、同じ 奈良でも下市・日の出湯ではそもそも300円という破格の安さだった。

広さは幅2間半、奥行3間半ほどの脱衣所。天井は平格天井。男女境上部の透明ガラスに描か れた広告の電話番号は3桁だ。局番などはない電話番号だけで3桁の時代のものだ。ちなみに そのスポーツ用品店は現在も営業しているという。商売の栄枯盛衰は激しい。銭湯の古い広告 主は、廃業していることがほとんどだ。電話番号3桁時代の店が生き残っているということは 珍しいことだ。

ロッカーは外壁側に漢数字が彫り込まれたものがずらっと並んでいる。下市の日の出湯で漢数 字の彫り込みに驚いたけど、奈良ではこれがデファクトスタンダードだったのだろうか。。。恐 るべし奈良の古銭湯。その木製ロッカーの1つに14型のテレビが嵌め込まれている。小さな テレビだけど、何か存在感を発揮している。

床は使い込まれた板の間が広がっている。それに、とっくに退役したというが男女境の上には 木製2枚羽根の天井扇がある。モーターがレトロだった姫路・白山湯の天井扇とともに「産業遺産」といっていいシロモノだ。

浴室は、幅2間半、奥行3間。天井はカマボコ型で中央に四角い湯気抜きがある。カランは外 壁側に5、奥壁側3。シャワーは付いているもののいくら経っても適温にはならず温いままだ。

地方の銭湯全般に言えることだけど、カランの湯が火傷するほどに熱い。同湯も80度はある 感じだ。浴槽に注ぐ熱湯と、カランで供給するお湯を分けていないのだろう。湯桶に半分くら い水を注いで適温になるように後から熱い湯を注いでいく。この順番が逆だとなかなかうまく 行かない。使ったカランは、半分壊れていて取っ手の部分から熱い湯が飛び出る。それが手の 甲の中央にヒットして熱い。なかなか憎らしいヤツだった。

浴槽は中央に小判型の深浅2槽。浅槽は本当に浅く小さい。小生が深槽でデカい面していたわ けではないと思うけど、21:00の仕舞い近くに中学生くらいの3人組がやってきて小生が入っ ている深槽を避け3人で浅槽に入っている。小さく浅い浴槽に中学生が3人。かなり滑稽な光 景だった。

そして、浴槽に浸かっていると外壁側から女湯の話声がリアルに響いてくる。どういう反響な のか、男女境側からではなく外壁側から聞こえてくる。こんな経験も初めてだ。

ビジュアルはカマボコ型の奥壁全面にモザイクタイル絵がある。絵柄は、湖、高嶺、教会とい うもの。浴室床のモスグリーン基調のモザイクタイルの目地の補修は痛々しい限り。これらと 同じ昭和時代中期頃のものか。。。。

上がりは女将から大将に変わっている。60歳ちょっと手前というくらいか。飲みに繰り出す 前に瓶入りの牛乳を頂いた。

小生が店を出る頃には既に暖簾は内側に仕舞われていたけど、小生が店の外に出てしばらくし たら、あの中学生たちのものだろうか入口を塞いでいた3台の自転車を整理して、木製の桟の 古風なガラス戸が閉じられた。

*************************************************
ナカムラ (Masayuki Nakamura)
メイン:masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp  
URL: http://www7a.biglobe.ne.jp/~masayuki/ (風呂屋の煙突)
*************************************************