差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2010年5月1日土曜日 5:36
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件名: クラブ湯(秩父市東町)

ナカムラです。

今日(4/25)は、「クラブ湯(秩父市東町)」に行ってきました。 御花畑駅(秩父鉄道)から、0.2キロ、2分くらいです。

同駅は大正6年に開設。駅舎は当時からのもので、登録有形文化財となっている。折しも羊山 公園の芝桜が遅れての見頃を迎えている。驚いたことに、駅名標がピンク花柄になって「芝桜 駅」となっている。駅名が変わったのかと思わせるくらいだ。実際には、この4月から「副駅 名」が芝桜駅になったということで、同駅の正式な駅名は「御花畑(芝桜)駅」というらしい。

秩父は、今でこそ雁坂峠をトンネルで抜ければ山梨県に抜けられるけど、長らく「行き止まり」 の山間の地方都市だった。開発の価値に見合わなかったということだろう。そのため、連続的 ではないけど、古い町並みがそここに残っている。久しぶりにやってくると、一層高齢化が進 んだ印象を受ける。。。

同湯は、秩父のかつての繁華街である番場町の傍らにある。古くからの写真館などもあって、 賑わっていた土地のようだ。昭和12年に、先代がクラブ湯という屋号そのままに今の建物を引 き継いだという。おそらくは大正時代くらいの建物だろうと推測されていた。

建物は2階建て。その1階に入口があって、地方銭湯でよく見られるように男女別の入口がハ の字型になっている。

番台裏はタイル張り。アルミサッシの入口扉の上には、扇形に「男湯」と「女湯」とあるだけ。 営業時間などの表示は一切ない。暖簾も架かっていない。とてもシンプルだ。

扉を開ければコンクリのタタキに番台。下足箱は番台の脚部と外壁側に半間幅の小さなものが ある。錠はアルミ板鍵のTaiyo錠で扉が青緑色のもの。あまり見たことがないタイプのものだ。

秩父の銭湯料金は2軒とも350円。県内の料金は410円まで値上がりしたけど、平成12年から 料金が据え置かれているようだ。厚い板囲いの番台には上品な感じの女将さん。朝、営業時間 を確認し、町を散歩したら寄らせて頂く旨を伝えてある。お帰りなさいといった感じで招じ入 れられた。

脱衣所の広さは、幅2間、奥行3間ほど。昭和中期的なグレー木目合板の天井の高さは、2階が 載っているので1間半程度と低い。ロッカーはないようで、張り替えられた床には丸い脱衣か ごが並ぶ。相客は3人ながら、かごを置く場所を考えなくてなならない感じの小さなスペース だ。

外壁側が古いガラス戸と立派な鏡がある男女境が古くからのものと感じた。桜は見頃を過ぎて いるけど、女将が他の花とともに活けていた。小さな脱衣所の中にあって、女将の人柄が滲む 優れたもてなしと感じる。

浴室は、幅2間、奥行3間。天井高は1間と2/3くらい。水平で、両サイドにアールがある木 製の板張り。その中央に幅1間、奥行2間という大きな湯気抜きが奥壁から延びている。湯気 抜きの両サイドに窓があるほか、片流れの屋根の一部は採光のために強化プラスチックになっ ている。感覚的には2段型に近く、採光の工夫は大間々・高砂乃湯を彷彿とさせる。

島カランは、小さくて鏡すらないプレーンなものが1つ。カラン数はセンターから、3・3・3・ 3と少ない。床は昔懐かしい3センチ角でやや膨らみのある白タイル。カランの下に洗い湯を 流す溝がない古い造りだ。

家の浴室に小石タイルを張ろうと画策していて知ったことだけど、PL法が施行されてから、 こういった表面が滑るタイルは床として施工できなくなったらしい。小石タイルは製造中止。 おそらく、この白タイルも製造されていないのかも知れない。

浴槽は、奥壁に接するかたちの深浅2槽。真ん中に焚出し口があって、双方の浴槽の仕切の上 に熱い湯が流れてくる構造だ。

同湯では、井戸水を灯油で沸かしている。秩父には「武甲山の伏流水」を売り物にするいい酒 蔵(「秩父錦」「武甲正宗」)がある。町の蕎麦屋などもそれに便乗している。山の水や湧水に興 味がある小生にとっても秩父の水はかなりレベルが高いと感じている。まぁ、女将さんは「武 甲山の伏流水」なんてものではないとおっしゃっていたけど、いいお湯だ。

ビジュアルは、奥壁に「エハラ尚栄堂H21.7」の富士山のペンキ絵。同湯では先代絵師の時代 から、この行田の業者にペンキを描いてもらっている。今は銭湯の背景画だけでは糊口をしの げず看板屋が本業らしい。兄弟で、行田や熊谷などの銭湯のペンキ絵を描いている。

「先代は上手かったのよ」という言葉もあったものの、秩父の地にペンキ絵が残るのは尊いこ とだと思う。

以前は秩父にも絵師が居て、たから湯などはその方が担当されていた。しかし、そのたから湯 も、H14にエハラ尚栄堂に描き換えられている。

古い町並みを歩いていると秩父鉄道の蒸気機関車の汽笛の音が響いてくる。強い郷愁に身体が 反応するのが分かる。池袋から特急で1時間20分くらい。遠くはない土地ながらかなり「地方」 に来た感じを受ける。酒もうまいし、鮮度のよいホルモンを炭火の七輪で焼いて独特のタレで 食べる「高砂ホルモン」も絶品だった。ピーク時に8軒くらいあった銭湯が、現在は2軒だけ なのが少し寂しい気がする。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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エハラ尚栄堂(H21.7)
行田の看板屋らしい。。。





秩父


御花畑(芝桜)駅


皆野


皆野駅


秩父


矢尾百貨店屋上

番場町