第一金乗湯（板橋区若木）

差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2013年3月20日水曜日 22:45
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 第一金乗湯（板橋区若木）

ナカムラです。

今日（3/3）は、「第一金乗湯（板橋区若木）」に行ってきました。上板橋駅（東武東上線）から、0.9キロ、10分くらいです。

定期的なリサイクルショップ通い。家に溜まった不要品を上板橋のリサイクル屋に背負って行く。家のスペース確保になり、あわよくば今日の日曜日のレジャー（銭湯＆飲み）の軍資金に充てようとの目論見がある。

さて、思いの外、軍資金が確保でき、足取り軽く第一金乗湯へ。入浴はしていないものの、前回リサイクルショップに来た時も前を通っている。ただ、その後に大々的な改装を行い、一昨日、3月1 日に今井健太郎建築設計事務所の設計でリニューアルオープンしたばかりだ。

昭和34年築創業のコンクリ煙突を有する伝統的木造銭湯。”骨格”は伝統的な形を踏襲しながら、改装前からだけど、全体が黒く塗られ独特の雰囲気となっている。

銭湯の営業時間前は、老人介護施設「健遊館」として使われている。板橋区の銭湯全般として、バリアフリーに配慮されている。同湯も車椅子で行き来できるように「ゆ」とある暖簾を潜れば緩やかなスロープになっている。

SakuraｰG錠の下足箱に靴を放り込んで、千駄木「ふくの湯」と同様の、足触りのいい床を前に進むと、シックな内装の中にカウンターと広くシンプルな休憩室がある。周りにはお祝いで届けられた胡蝶蘭などの花が並ぶ。

脱衣所の広さは3間四方ほど。天井と壁は広いクロス張り。しかし、旧来の梁などは磨かれ維持されている。天井からは、正八角形の輪に、雪洞がつるされた和風の照明が下がる。島ロッカーはなく、ロッカーは入口側に衝立を兼ねて稼働式のSakura-3錠のものが少数あるだけ。男女境には、脱衣籠を納める3段の棚が設えてある。

大黒柱には「飯高建設」から贈られた古い柱時計が止まったままで掛かっていた。今回の改装の施工も同工務店によるもののようだ。半世紀を経て、自分の親父あるいは祖父が手がけた銭湯の建物に対峙しリニューアルを手がける。勝手な想像だけど、師との相剋、何となくロマンを感じる。

古くから残っているのは、この柱時計とKeihoku Hakariの茶色のアナログ体重計だけだった。それ以外は全て新しい物に置き替わっている。

浴室は、幅3間、奥行4間。天井は木板張りの2段型。茶色とオフホワイトのペンキが丁寧に塗られている。やはり、浴室も照明にこだわっていて、指向性のある電球色のLEDライトが、天井、浴槽、奥壁のペンキ絵を照らしている。

タイルは、陶芸の趣がある、あさぎ色を基調とした落ち着いたものが使われている。全体的に予算の制約が窺われるリニューアルだけど、上質なタイルが張られている。

島カランは1列で、カラン数はセンターから5・5・5。間接照明が主体なので、鏡の上に”行灯” が点いている。そして、健遊館と併営ということもあって、各カランにステンレスの掴まり手がある。壁固定のシャワーには、シャワーヘッドと調和させ、美観を配慮した小さな掴まり手が付いている。なかなかのものだ。さらに、5機あるハンドシャワーには、掴まっても壊れないように頑丈なステンレスホースのものが使われている。なかなか練れている。

浴槽群も充実している。奥壁に接して白湯の42度くらいの主浴槽があって、2穴スーパージェット、ボディマッサージ、6点座ジェット×1、電気風呂などがちりばめられている。浴槽底のタイルが、浴室の床と同様に、大判のあさぎ色でザラザラした足触りのいい、スリップしにくいタイルを使う工夫がある。

外壁側もフルに浴槽になっていて、38度くらいの温い薬湯と18度くらいの冷却された水風呂。薬湯は温いので、ご常連の爺たちの”井戸端会議”の場になっている。

同湯では、井戸水を薪（時々ガス）で沸かしている。今日は、裏に薪が積み上げられ、煙突から煙も昇っていたので薪焚きのようだ。バイブラによる空気との混和もあって、円やかないいお湯に仕上がっている。

温い薬湯と水風呂。サウナはないけど、この2つが加わるだけで、格段に長湯を楽しむことができる。生活銭湯派だけではなく、既存の広くはないスペースにささやかな”レジャー”客を呼び込む重要な設備だと思う。

ビジュアルは、奥壁のペンキ絵。丸山さんと中島さんの競作。あさぎ色という抑制の効いた空間と調和させた蒼い浮世絵風の新境地。訪れたのが照明が点る前の曇天の夕方だったので、ブルー系の内装と蒼いペンキ絵が調和し、静かで深い印象を受けた。硫酸銅の水溶液のような独特の蒼い色。内装とのコラボレーションでこの色使いになったんだろうけど、なかなかいい。照明が当たった絵も眺めたけど自然光で眺めた方が断然良かった。ただ、あまりにも変わったオーダーだったからか、両絵師の持ち味がうまく発揮されていない印象を受けた。

上がりは、シンプルな休憩室で冷たい物を頂いた。壁に質の良くない浮世絵の額が何枚か掛かっていたけど、掛るのならばもっといい物を掛けた方がいいかな。調和を乱している感じがした。

日曜日の16:25から17:15に滞在。相客は10人弱。上質で落ち着いたタイル遣い。寛ぎに資する間接照明を中心とした灯り。ペンキ絵は丸山さんと中島さんの競作。井戸水を薪で沸かしたお湯もいい。広い水風呂は小さい銭湯ながら長居を可能させ、寛ぎを提供している。会心のリニューアル銭湯だった。

上がりの一杯は、上板橋駅横の「大（ビック）」という焼き鳥屋。日曜日のまだ明るい時間ながら満員の盛況。軽く飲んで、軽く食べて、リサイクルの軍資金が少しだけ手元に残る、そんな有意義な日曜日の午後だった。

*************************************************
ナカムラ　（Masayuki Nakamura）
メイン:masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp　　
URL: http://furoyanoentotsu.com（風呂屋の煙突）
*************************************************