差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2012年9月9日日曜日 17:10
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 大黒湯(新宿区早稲田)

ナカムラです。

今日(8/26)は、「大黒湯(新宿区早稲田)」に行ってきました。 早稲田駅(東京メトロ)から、0.5キロ、5分くらいです。

降旗康男監督、高倉健主演の「あなたへ」が昨日封切られた。「駅」、「居酒屋兆治」、「冬の華」、「夜 叉」など、小生が観た降旗監督と高倉健の映画は、どれも深い情感が満ちていて、静かに感動させ られた。また、その感動の余韻が永年にも及んでいる。

今回も期待して新宿のビカデリーへ。首に負担を掛けながら、前列2番目という観辛い席で、2時 間くらい耐えて観ていた。建さんは既に81歳、降旗康男もそれに近い後期高齢者。もう、映画とい う過酷な現場は難しいのかな。説明できない不思議な魅力の田中裕子は相変わらず良かったけど、 求めていた、深く静かな感動は無かったかな。可もなく不可もない、そんな普通の映画だった。

それにしても、見上げることが出来ない、背もたれの高い椅子はキツかった。首を養生してやらな ければならない。大江戸線で牛込柳町駅を目指し、そして、同湯のある弁天町の交差点へと北上し た。

早稲田通りをひと筋入ると、かなり暗い一角に、節電モード全開の大黒湯と、住人が居るのかとい う大黒湯アパートがある。1階を取り巻く店舗群も現役の店舗は無さそうだ。また、2階のアパート につながる階段の入口には、西成の交番にあるような、投石避けにも見える金網が物々しい。

同湯は、週に3日しか営業していない。地方銭湯は別として、都会の銭湯は、ここまで営業時間が 短くなる前に力尽きるのが通例だと思う。何がそうさせているのか、尊いことだと思う。

ファッサードは、モルタルの切妻。しかし、エントランスとの間に”もこし”と言ったらいいのか、 装飾の浅い切妻型の屋根が設えられ、頂部の棟木が伝統的建物を模して前に突き出ている。

そして、外観をより特徴付けているのは、入口の直ぐ脇から両方向に広がる2階建ての店舗建物だ。 前栽があるべき場所を含め、2階建ての建物が建てられている。全て空家のようで明かりはない。 同湯も看板はなく、節電モードで最小限の明かりしか点いていないので暗い印象を受ける。銭湯は 人が集まる所だったんだろうけど、現在の同湯はその対極にある。

夏なのにエントランスのドアは閉まっている。ドア式の扉を開けて中にはいると、左右におしどり 錠が並ぶ狭い靴脱ぎ。頭上のスリ硝子の「男湯」という文字が隣のコインランドリーに侵蝕されて いるので、オリジナルよりもだいぶ狭くなっているようだ。

脱衣所への扉も「PUSH」とあるドア式。中に入ると、こちら向きに小さなブースがあって、無口な 女将さんが詰めている。一応、スタンプ帳を差し出し、スタンプを押してもらうものの、一切会話 らしい会話が発生しなかった。閑散とした静寂なはずの空間なのに、頭上のテレビの音は大音響。 ひょっとしたら、耳が遠いのかな。

脱衣所の広さは、オリジナルは3間四方。しかし、入口方1間分はコインランドリーと廃業した居 酒屋に1間ほど侵蝕されているため、奥行2間ほど。天井は男女を跨ぐかたちの船底天井。棟木か ら長斧で削ったような装飾が施された桟が、フィッシュボーンのように下がっている。

ロッカーは、外壁側に、段ごとに扉が3色に塗り分けられたおしどり錠のものが少数置かれている。 その他、物置きと化した新型マッサージ機、Hokutowのアナログ体重計、縁台などがある。減築さ れたとはいえ、島ロッカーがないのでそれなりの広さ。しかし、段ボール箱や区報などが無造作に 積まれ、かなり荒んだ感じがある。

浴室への扉もドア式。中に入れば、幅3間、奥行4間強、天井は高い木板張りの2段型。ペンキは 白く、ウィングの付け根のブルーの梁の装飾に、朱色のペンキが盛られている。外観に比べ中がき ちんとしていることが少し意外だった。

まず驚かされるのは、カラン配置。男女境に5機あるのは普通としても、その他には大小の四角柱 を2段に積んだシャワー付のスポット型のカラン島が、段違いに2つ置かれているだけ。外壁側に はカランがない。つまりこの広い空間に5・4・4の、計13機しかカランがない。日曜日の夕飯時と いう時間だけど、週3日しか営業していないのに相客は1人だけ。13機のカランでもかなりのオー バーキャパになっている。

床のタイルはユリ模様の白を淡いモスグリーンの市松模様。清掃が行き届いていない部分もあって、 輝きは一部鈍っている。

浴槽は、奥壁に沿って、7点座ジェット×2、バイブラ、薬湯。湯温は42度弱で、薬湯のみ37度く らいとかなり温いもの。温めのお湯に入り、島カランに戻って風に当たり、さらに温めの薬湯にじ っくり浸かる。脱衣所はテレビの音が大きいものの浴室はあくまで静寂だ。

ビジュアルは、奥壁と男女境の一部(釜場寄り)に黒をベースに装飾的に木の葉が描かれているの み。

日曜日の19:10から19:55に滞在。相客は都合3人ほど。最近あまり出会っていない、風前の灯火 感が強く漂う銭湯だった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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