差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2004年9月26日日曜日 9:54
宛先: 銭湯ML
件名: 代沢湯(世田谷区代沢)

ナカムラです。

今日(9/23)は、「代沢湯(世田谷区代沢)」に行ってきました。
下北沢駅(小田急線・井の頭線)から1キロ、10分程度。三軒茶屋駅からは1.3キロ、15分程度です。

今日はお彼岸。墓参りの後、実家に立ち寄る前の寄り道。

三軒茶屋で降りて、レトロな映画館「三軒茶屋中央劇場」を撮影。「横浜日劇」と並ぶ小生のお気に入りの映画館。
千代ノ湯、昭和湯、駒の湯、清水湯と付近の銭湯を眺めて、本命の代沢湯へ。
5月の終わりに来訪した時は、同湯で先代のご不幸があり、臨時休業だった。

同湯は、むくり破風の黒瓦を載せた入口、黒瓦切り妻屋根の脱衣所棟、その奥に浴室棟と伝統的木造銭湯。築46年。
コンクリの煙突の先端の形状、太さと少し一般のコンクリ煙突と少し異なった形状をしている。
廃業してしまったようだけど、隣の「BAR BAR 富士」とセットでなかなかの景観を作っている。

三房の一般家庭にかかっているような藤色の暖簾。
屋号を記したものはない。
入口の正面はタイル貼りだけど、タイル絵はない。
床は1センチ四方の色タイルをモザイク状に貼ってある。

下足箱の錠は旧型のおしどり錠。
今日は蒸し暑い。男湯の戸は開け放たれている。

番台は低い木組みのもの。焦げ茶色で渋い。
店主は反対側のソファに座っている。

脱衣所の広さは3間四方。
天井は平格天井だけど、高さは十分にある。
にわか雨が降りそうな薄暗い天気、古色蒼然とした木造ワールド。

脱衣籠が10個ずつ3本くらい積まれている。
東京の銭湯でこんなに脱衣籠が積まれている銭湯は珍しいかも知れない。

ロッカーは外壁側のみ。これも焦げ茶色のオール木製という旧型。錠はおしどり錠。
脱衣籠を手に取ると、店主からロッカーの使用を勧められる。
「今は知った人しか来ないけど、時々裏に行くから・・・」とハスキーな店主の声。

男女境には大きな鏡。
大黒柱には黒ブチの旧型の丸時計。これはこれで、レトロな感じがする。
その時計に石造りのお地蔵様が赤い帽子をかぶっている。
銭湯に石仏というのも初めての遭遇。

その他、関取の手形、日本画の額、ホクトーのアナログ体重計なんかがある。
店主が鎮座するソファの後ろに庭のスペースがあるらしいけど、緑というか、雑草が鬱蒼と生い茂っているようだった。
いつの間にか、蚊遣りが点けられていた。

レトロ銭湯での蚊遣りの匂い。なんか、郷愁がこみ上げてくる。
育った地元で郷愁を感じるのも変だけど、そんな気持ちになる。

店主は、世田谷の組合は4つ(北部・西部・玉川・成城だったかな)あったが、1つに統合されたと言っていた。
旧組合ベースで39軒あったけど今は11件に減ったと。

小生の常湯だった、20年近く前に廃業した「月の湯(世田谷区大原)」のオバチャンが小林さんだということも知っていた。
小生、この銭湯で溺れて、居合わせた客に人口呼吸で助けられた経験がある。
おぼろげに意識が戻るなか、棚の上に積んであった脱衣籠が目に入って来たことを今でもはっきり浮かんでくる。
ここで、蘇生しなかったら、銭湯巡りをすることも無かった。

さて、浴室。
シンプルこの上ない。究極的・・・か。
幅3間、奥行3間半。2段型の天井。白にエメラルドグリーンのペンキの縁取りが印象的。

島カランは1列。鏡すらないプレーンなタイプ。
カラン数はセンターから6・5・5・5。カランは日の丸扇の刻印のある丸型。

浴槽は深浅2槽。浅槽は真中に焚き出し口があり、床から弱弱しく気泡が立ち上るもの。温度は43度くらいか。
深槽も同様に床から弱弱しく気泡が立ち上っている。

井戸水ではないが、薪で焚いた湯はやはり柔らかい。
水質では恐らく断然優れている魚津の銭湯の湯よりも、自分には東京銭湯の井戸水&薪焚きの方に軍配が上がると思ったが、何でだろうと考えていた。
恐らく、水の硬度の違いなのかなと・・・。
魚津の水は純粋だけど、小生にとっては硬度が高く、肌にしっとりとしなかったのかなと・・・。

ビジュアルは、奥壁に中島師の海の図。
女湯には大きな富士山が見える。

男女境は、白い普通のタイルを斜め45度に張ったもの。
ただ、長方形の上の辺が菱形模様のマジョリカタイルでさり気なくアクセントが付けられている。

上がりは、ドリンクどころか、水を飲むための水道すらない。
なかなかシンプルにして奥深い銭湯。
「銭湯道」の道場のようでもある。




三軒茶屋 千代ノ湯


三軒茶屋 昭和湯


三軒茶屋 駒の湯


三軒茶屋中央劇場