差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2003年11月29日土曜日 9:54
宛先: 銭湯ML
件名: [sento-freak:04613] 不動湯(藤沢市辻堂元町)

ナカムラです。

今日(11/28)は、「不動湯(藤沢市辻堂元町)」に行ってきました。金曜日の会社帰り、21:40辻堂駅着。今日からコート着用。風が強く寒いけど、解放感を感じています。

同湯は、辻堂駅(JR東海道線)から5分くらい。「辻堂元町商店街」という小さな商店街を抜けた、静かな住宅地の中にあります。

煙突は、横浜・湘南周辺では少数派(だと思う)のコンクリートの煙突。高さは東京標準と比べると、少し短いような気がします。

入口には斜めに松が生えている。粋である。入口は瓦を積んだ破風屋根。入口の両脇はタイル張りのことが多いけど、同湯は鉄平石っていうのかな、石を張ってある。小さいけど、なかなかな入口である。

そう、「バクレス式オゾン温泉 衛生浴場」なるホーロー看板。(脱衣所には山野愛子が効能を謳ったホーロー看板もある。)
山野愛子も故人になってしまった。でも、バクレス式って何んだろう・・・。

古銭が描かれている花王の暖簾の奥には、風情のある入口のガラス戸が折り込まれている。
下足箱は、普通のものより横幅がある。錠は古く珍しい富士錠。蓋を開け、靴を入れようとすると、古風な傘を突き刺す式の傘入れの穴がある。ん・・・、普通と違う。傘入れの穴から、何と外が見える。穴の向こうは庭の池。短小の傘を入れると、きっと傘は池に落ちる。うーん、珍しい構造である。

番台へ通じる戸を開けると番台。低く幅がある板組みの番台。向こうが望めてしまう、結構オープンな構造。カーテンや衝立を追加せず、そのまま使っている。

風邪なのかな。赤ら顔で寒そうにしているやや元気がない女将・・・。とりあえず風呂銭400円を渡す。

天井は格天井(12×5)。折上げはない。古い建物につき、多少波打っている。床は古式ゆかしい、こげ茶色の板の間。窓はガラスの組み方に若干の意匠が施され、どことなく繊細な感じである。

男女境の壁側には、「一」から「十六」と扉大きく大きく書いてある錠もないオール木製のロッカー。上に番台用?(どこからもよく見えない)のテレビ。先客3人ほどは、みな積んである丸籠を使っている。

大黒柱には定石どおりの柱時計。ここのは現役。ゆっくり振り子を揺らしている。これだけで、ポイントが上がる気がする。変っているのは、脱衣所から浴室への入口の上に、装飾のための庇がある。旅館の宴会場の入口によくあるけど、銭湯では余り見ないもの。さらに、外壁側の窓の外には水槽が置いてある。

浴室。天井は2段型なんだけど、ウイングの張り出しが2段階になっている。なので、この浴室、奥行きは地方銭湯であり3間半とあまり長くない。しかし、幅は4間とかなり幅が広い。幅が広いので、1段目のウィングの中央に1本柱、2段目のウィングには2本の支柱がある。いずれも古いタイルが張られている丸い柱。

幅が広いので島カランは2列。カラン数はセンターから7・4・4・3・0・3。センターにのみシャワーが付いている。カランは日の丸扇の刻印のある丸みのあるもの、取っ手には温泉マーク。島カランは、鏡すらないシンプルな構造のもの。柱以外の浴室のタイルは、改修されている。また、タイル絵等はない。

椅子は緑椅子。桶は黄色の無地物が20個ほど。しかし、5つだけ「温泉マーク」と「不動湯」と書かれている金属の洗面器があった。初めての遭遇。洗面器の足にはタイルを傷付けないように、ゴムが張ってあった。なるほど・・・。使ってみたが、なかなか悪くない。

さて、同湯の最大の特徴は、他に比類ない岩風呂だと思う。浴槽は深浅2槽。浴室が幅広いので、2槽とも同じ幅、一方が狭いということはない。その周りを巨岩が取り巻いている。崩れてきたら、きっと圧死する。フリークライミングのボルダリングができるような大きさ。すごい・・・。

壁側には石灯籠も立っている。ミニチュアではない。半端じゃない・・・。この岩の間から、結構な量の湯が湯船に注ぎこまれている。これが、なかなかなのである。マイナスイオンがたっぷりある感じ。風情をも醸し出している。岩の合間に小さな池も設えてるが、水は張られていなかった。これは残念・・・。

上がりにはビンのコカコーラ。これ、街ではめっきり見かけなくなった。池を望みながら一服。

しかし・・・、下足箱の穴を反対から見ると異様である。まるで、壁に銃弾が打ち込まれたごとく、壁が蜂の巣状になっている。
それに、浴室の石灯籠はノーマルな大きさだったけど、池の石灯籠はどこぞかの大名屋敷にでもあったような巨大なものが狭い庭にある。ここの主人は、石が好きなんかなぁ・・・。

客もまばらではあるが、途切れなくやって来る。
いい銭湯である。
しかし、お湯の塩素が少々キツい。
風情は一級であるが、その点もったいない気がした。