差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2009年5月20日水曜日 23:04
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件名: 富士乃湯(青森県八戸市一番町)

ナカムラです。

今日(5/5)は、「富士乃湯(青森県八戸市一番町)」に行ってきました。 八戸駅(東北本線)から、0.2キロ、2分くらいです。

八戸駅まで東北新幹線が延び、駅周辺は開発が進んでいる。しかし、同駅は昭和46年までは尻 内駅と呼ばれ、本八戸駅(同年に八戸駅から改称)、八戸市役所などがある八戸市の中心から外 れていて開発は遅かった。

今でこそ、同湯周辺に住宅が立ち並ぶものの、同湯の営業開始時は泥炭層という土地ゆえに良 質の水が得られず、原っぱが多かったという。

脱衣所の奥に浴舎が連なる伝統的木造銭湯。しかし、前面部に美容院が増築されているため独 特の形状。また、増築ゆえに、建物側面のドアから入って、番台までのルートは少し戸惑うも のだ。

建物側面のアルミの入口ドアを開けると、短いアプローチがあって、右手に美容院の入り口、 左手に暖簾が架かる銭湯の入り口がある。その引戸をガラガラと動かすとタイヨー錠の下足箱 と男・女湯への入口。変形ではあるけど、やはり風雪を避ける北国特有の二重構造(同湯の場 合は三重構造)のエントランスになっている。

3つ目の戸を開けてやっと番台。体重52キロという細身のご主人と、そのお父さんの体重に迫 るボリューム感たっぷりの幼稚園児の娘さんが迎えてくれた。番台の前にパソコンデスクを置 いて、学習用ソフトでお勉強中。いきなりほのぼのさせてくれる。

天井は煤けた感じの古い天板。幅2間半、奥行3間くらいのレトロな脱衣所は、窓が無く、ど ことなく穴蔵のような感じがある。今は初夏の夕暮れ時だけど、雪降る時にやってきても恐ら く同じ雰囲気だと思う。

真ん中に、ビニールレザーのベンチがあって、外壁側に脱衣棚。ロッカーはなく脱衣籠のみ。 そしてHOKUTOWのアナログ体重計、飲料がたくさん入った冷蔵庫。案外、客は多いのかも知れ ない。

壁には、亡くなった先代女将が墨で認めた「お湯の効果」なる効能書きがある。温泉ではない のに効能書きとは如何に。。。 神経痛、リユウマチ、肩こり、冷え性、血行を良くする、湯冷めしないと6つの効能が掲げら れている。そして、これがこの銭湯の奥深いところだ。

浴室は、幅2間、奥行3間くらい。天井は四角錘型の中心に、また四角錘の湯気抜きがある。 脱衣所と同様にやはり穴蔵の雰囲気だ。浴槽はセンターに小判型のもの。カランはその浴槽を 囲むように入口を除く三方に8・4・8の配置になっている。

焚出し口が太い鉄管に洗い場と同じレバー式のカランということもあって、鄙びた温泉場のシ ャビーな共同浴場という趣がある。マニアが涙するだろう、かなり濃い銭湯だ。。。

さらに、浴槽に満たされお湯は濁った黄土色。床のタイル、浴槽のへり、カラン周りなど、至 るところがその析出物で染まっている。ご常連がレバー式のカランに髭剃りの柄を差し込んで 熱い湯を連続投入している。なかなかワイルドで個性的な風景だ。

どんな濁った温泉(同湯は温泉登録はないので、一応、井戸水)にでも好んで入るものの、か なり微妙な色合いではある。驚くべきことに、カランもシャワーからもこの色合いの濁ったお 湯が出てくる。カランから透明な黒湯というのはあるけど、ここの湯はかなり濁っている。身 体はともかくとして、この湯で髪を洗うことに、特に女性はかなり抵抗があると思うが、どう なんだろうか。

薄暗くて、やや強烈な浴室だけど、奥壁に赤富士を描いた絵付けのタイル絵がある。なかなか いい絵柄だ。かなり殺伐とした浴室だけに、安らぎの効果が高い。

機会があったら、季節を変えて寒い冬に再訪してみたい。そんな酔狂な奴は少数派だろう。そ して、この銭湯の良さが分かるのは、温泉と銭湯を偏愛する一部の人間だけだと思う。嫌いじ ゃない。不思議さと強い印象が残った。青森・下北銭湯巡礼行。その締め括りに相応しい銭湯 だった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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