差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2011年2月2日水曜日 0:12
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 富士の湯(練馬区三原台)

ナカムラです。

今日(1/29)は、「富士の湯(練馬区三原台)」に行ってきました。 石神井公園駅(西武池袋線)から、1.0キロ、10分くらいです。

池袋経由で西武池袋線。10分ほどで急行最初の停車駅の石神井公園駅。初めて降りる駅だ。高 架の駅を全面的に造り直しているような大工事を行っている。

北に進んで行くと、古くはない住宅がゆったりと建ち並ぶという典型的な郊外の風景がある。 しばらく進むと2車線のそこそこ車の往来が多い通りに出て、その両側に古くからの商店街が 並んでいる。そして、その一角に昭和37年築創業の同湯がある。

後方にコンクリ煙突を従えるかなり大型の建物。唐破風のエントランスも立派だけど、その上 に載っている瓦屋根の2階部分の大きさに目を見張る。軒先には灯篭が下がり、料亭の建物に ある木橋の欄干に似た手摺りが、2階の窓に回されている。おそらく、窓の内側の部屋との間 には外廊下が設えられている感じだ。建物バランスとしては2階を載せていないものの方が優 美だ。しかし、2階建の伝統系てとしては、これほど見事な銭湯を見たことがない。

通りからのアプローチの左手にコインランドリー。右手には竹垣で囲み立派な庭石を置いた庭。 男湯には千住・タカラ湯に僅かに及ばない「庭園」があるけど、その前振りとして、それとは 別の独立した庭がある。手入れが行き届いていることといい、珍しい。

同湯は、大谷石を積んだ塀が巡らされている。内側の数本の松は、庭師により綺麗に刈り込ま れている。その中央に唐破風の威風堂々のエントランス。紺地に屋号白抜きのオリジナル暖簾 が下がる。そして、入口の両サイドには石のプレートに狛犬を彫り込んだものがはめられてい る。タイル絵というのはあるけど石の彫刻とは・・・。

エントランスの明るさと広さが印象的だ。左右に並ぶ松竹錠の下足箱は、男女各々120個くら いの数がある。

番台への戸を開ければ、幅3間半、奥行4間ほどの空間。天井は縦方向に太い天井桟が通るも ので、男女それぞれの中央に羽が仕舞われた天井扇の「玉」がぶら下がる。島ロッカーがない ので、明るく本当に広い空間だ。

番台は、どっしりとした木組みの本格的派で、左右には雲型の彫刻がある他、角の木組の部分 にも独特の意匠が施されている。

ロッカーは、外壁側に木目調のシールを張ったスチール製の大きめのものが20個だけ。下足箱 の数に比してあまりにも少ない。その代わりに、籐の丸籠が30数個、2列に積まれていている。 籠も主力として仕事している。

驚いたことに、プレス物だろうが大黒柱には大理石が張ってある。タイル張りというのはある けど、石張りというのは初めて見た。上部が丸太という男女境の一部も石張りになっている。

ゼンマイの黒柱時計もゆったりと振り子を揺らし18:00には懐かしい音色で時報を告げた。一 回捲くと、どのくらい動くかご主人聞けば「1カ月は動かないよ。それに、うるさいよ」と。 階上の居間にまで響くのだろう。柔和で品が良さそうな笑顔が印象に残る。

浴室の上に、鷹が羽ばたく姿の鉄製の古い照明器がある。乳白色のガラス製の照明部が載る羽 の下には何本もの水晶柱が下がる。小品ながら見応えのある逸品だ。

その他、寺岡式のように重厚な「ヤマト/YAMATO SCALE LTD」とある大きなアナログ体重計、 複数ブランドのビールや飲料豊富な飲料が入った冷蔵庫、マッサージ機などがある。

建物に劣らず素晴らしいのは手入れの行き届いた広い庭だ。大谷石に囲まれた中に、前栽部分 は奥行2間半ほど、脱衣所の脇から浴室の脇までは2間ほど。かなりの広さがある。そこに、 高級な庭石、石灯籠。庭池には石橋が架かる。何より庭木を始めとして手入れが行き届いてい るのがいい。

幅がある濡れ縁に立てば無粋な目隠しもない。恐らくは、外部の建物から見えてしまうはずだ。 周囲の風景は変わってもこのオープンさは昔からのもの。捨てがたいと思う。

浴室は、幅3間半、奥行4間半ほど。天井は2段型。整った銭湯なので当たり前だけど、白と ブルーに塗り分けられたペンキに、くすみはない。星型模様の床のタイルなど、昭和の末頃に 中普請されたと思われるタイル類は、新しくはないものの、なかなかのコンディションを保っ ている。

島カランは1つ。カラン数はセンターから7・7・7・8。

浴槽は奥壁に接する深浅2槽。深槽はバイブラで42度くらい。内側がブルータイルという浅槽 は、3穴ジェット×2で焚出し口に薬石を置いて赤外線ランプで照らす構造になっている。井戸 水を重油で沸かすというお湯はなかなかにまろやかだ。ゆっくりと一週間の疲れを溶かす。こ の上ない、極楽・・・。

ビジュアルは奥壁に大きなモザイクタイル絵。大味極まりないもので、大きな壁に茶・黄緑・ 白の小タイルで描かれた3本の木というもの。男女境は水がはじけた様を3Dで描いたような ライトブルーのバックに椿か何かの花が描かれたタイルが使われている。

ただ、はっとさせられたのは釜場への扉だ。木枠にすり硝子を填めた上品な硝子戸で、上部に、 海・松・富士が硝子絵になっている。初めて見るタイプだ。

そして、外壁のカランの鏡にあたる部分がガラスになっていて、庭池を泳ぐ水中の鯉を見通す ことができる。さらに窓を開けて驚いた。池上に欄干を備えた木製の太鼓橋が架かっている。 飾りではない。脱衣所と母屋を結ぶため池に架橋したものだ。

なかなかに贅を尽くした銭湯だった。

土曜日の17:20から18:10に滞在。相客は10数人ほど。上がりは柱時計の、ぼぉ〜ん、ぼぉ〜 ん・・・と鳴る懐かしい音を聞きながら瓶牛乳を頂いた。

ビジュアルが貧弱なのは残念だったけど、かなり贅を尽くした豪華な銭湯だった。一見の価値 がある。

さて、上がりの一杯は江古田で途中下車し、この前来た時に気になった「樽平」。山形の樽平酒 造がやっている東京に何店かある店のひとつ。ただ、ここだけ風変わりらしいが。。。

清酒「樽平」の濃厚でコクがある、でもすっきりとした酒はいい。外の黒板の品書きには、両 親の田舎である山形の芋煮や納豆汁などの郷土料理が並ぶ。客が入っていないのが少し気にな ったものの、酒蔵の直営店ということで安心して入った。

しかし、店内の雑然とした感じや、ネギ間などの焼き物などにエスニック系の香辛料が振られ ているなど、少々、期待と違っていた。芋煮と納豆汁も小生が知っているものとは異なってい る。そして何より、アレって思うほどに勘定が高かった。酔うほどには飲まなかったのに、変 だなぁ・・・。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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