差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2013年5月23日木曜日 23:06
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 富久の湯(台東区千束)

ナカムラです。

今日(5/10)は、「富久の湯(台東区千束)」に行ってきました。 鶯谷駅(山手線)から、1.0キロ、12分くらいです。

汐留で仕事を終え、山手線で鶯谷駅へ北上。東へ歩き、途中、東京メトロの入谷駅を通って映画館 が名を残している金美館通りを”吉原”方面へ。同湯は、千束4丁目にあたる”吉原遊廓”の真裏 に位置する。見返り柳のある大門から入れば、目抜き通りを抜けた辺りにある。

古くから当地は銭湯だったという。昭和28年に経営を引き継ぎ、現在は築50年という古い宮地ビ ルの1階に入っている。丁度、50年前、昭和38年の航空写真にも、今と同じ姿の建物が写ってい る。

屋号染め抜きの緋色のオリジナルの暖簾のほか、幕とでも呼ぶのかやはり屋号を記した布が張って ある。エントランス周りはライトアップされ、内部を紹介する写真パネルが立っている。同湯は、 一昨年、デイサービス併営の銭湯としてリニューアルしている。番台から変わったフロントには、 若夫婦なのだろうか、美男美女が仲睦まじく詰めていた。

バリアフリーのエントランスには、Sakura-G錠の下足箱。プラスチックの札と木札の混成という珍 しい姿。電球色の明るく柔らかな光の下、和風の行灯なども置かれている。

扉を開ければ、脱衣所の一部を仕切ったロビースペース。蒸し暑くなり始めた今日、窓が開け放た れている。枯山水風にリノベートされたのだろうか、小石タイルが張られた濡れ縁を介し、手入れ された前栽がある。しつらえられた静かな瀧の音が涼を誘う。

脱衣所の広さは、オリジナルは幅3間、奥行4間ほど。壁は丁寧にオフホワイトのペンキで塗り替 えられ、一部ロビースペースとして仕切板で区切られている。3本の太い構造材で支えられている 天井は3間弱はある伝統的な仕様。間にはメタリックグレーのシックな天板にリニューアルされて いる。中央にはゆっくりと回る天井扇。今シーズン初めてかな。それと、照明という照明に電球色 の蛍光灯が使われている。

ロッカーは外壁側にシリンダ式のSakura-3錠の焦げ茶色の木目調のものが並ぶ。

その他、Hokutowのアナログ体重計、中央に板式の幅広の縁台、アコーディオンカーテンの男女境 側にはゆったりとしたソファーセットがある。

浴室は、幅3間強、奥行4間半くらい。明るく輝くばかりの清潔さ。一瞬で優れた銭湯であること が分かる。驚くべきことに、ビル銭湯なのに浴室の天井が木板張りの2段型。浴室に限ってのこと だけど、これほど忠実に伝統的木造銭湯を踏襲したビル銭湯を知らない。

立ちシャワーすらない広い浴室は、これ以上ないシンプルさ。島カランは1列でカラン数はセンタ ーから8・5・5・7。カラン周りは花崗岩調のタイル、床はユリ模様の白色のタイルが使われている。

浴槽は、奥壁に沿って深浅2+1槽。深槽は気泡湯で43.5度と熱め。浅槽は3点ジェット×3のバイ ブラ浴槽を2つに仕切り、42度と43度というように温度に変化を持たせている。煙突は見えなか ったのでガスで沸かしているのだろうか、すっきりとした中で円やかさをも感じられるお湯だ。

ビジュアルは、大きな奥壁に、松島辺りの海だろうか、松林の向こうに海が広がりその遠方に緑色 の半島が伸びている。純和風のいいモザイクタイル絵だ。女湯のタイル絵はL字型に外壁にまで広 がる男湯よりも大きな絵で、”ローソク岩”が立つ風景の絵のようだ。さらに、男女境に洋風の海の 絵のモザイクタイル絵が広がる。

金曜日の21:05から21:55に滞在。ビル銭湯なのに完璧な”伝統的木造銭湯”に倣った浴室に仕上 げられている。そして、シンプルで清潔なことに胸を打たれる。熱い湯とともに強く印象に残った。

*************************************************
ナカムラ (Masayuki Nakamura)
メイン:masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp  
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
*************************************************








                   金美館通りにあった木造3階建ての古い酒店。銘酒の名前が並ぶ。

目次へ