差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2008年12月27日土曜日 18:19
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 橋本湯(京都八幡市橋本小金川)

ナカムラです。

今日(12/20)は、「橋本湯(京都八幡市橋本小金川)」に行ってきました。 橋本駅(京阪本線)から、0.3キロ、3分くらいです。

京街道の宿場町で、大規模な遊廓があった橋本。4年前に初めて訪れてから3度目の訪問にな る。映画「鬼龍院花子の生涯(五社英雄/1982)」の冒頭シーンに登場する印象的な街並み。そ の頃からすれば、町の雰囲気はかなり毒気が抜けてしまったけど、まだまだ妓楼建物が多く残 っている貴重な街だ。

同湯のフロントには、映画「薄化粧(五社英雄/1985)」のポスターが額装されている。また、「瀬 戸内ムーンライトセレナーデ(篠田正浩/1997)」のキャストの色紙が並んでいる。印象的な遊 廓の街並みとともに、同湯も何度か映画に登場しているようだ。

同湯は昭和4年築創業。京都風の2階家に黒瓦のエントランス部が付いて堂々とした佇まいだ。 破風突端の黒瓦には縦に「橋本湯」と刻まれている。何ともいえない風格だ。以前の2回とも 入浴は叶わなかった。今日は3度目にして初めて入ることができる。

靴脱ぎスペースから脱衣所入口昇る2段の扇状の階段には長方形の臙脂色の小タイルと小石型 のタイルが張られている。下足の錠は「大日之出」。いずれも小生にとって馴染みのないものだ。

ドアを開けると、新建材を張った番台はそのままだけど脱衣所と仕切るカーテンが増設され簡 素なフロント形式になっている。その番台前の柱には「人参実母散薬湯/朝鮮製薬合資会社」と いうホーロー看板と瓦斯燈が残っている。20燭光程度のホヤが2つ下がるもの。この町には 遊廓があった古くからガス管が通っていた。最後は停電の時だけだったけど、妓楼でも同湯で も瓦斯燈が灯された。

京都の銭湯料金は410円のようだ。サウナがあってそれはプラス100円でバスタオル付き。 外で写真を撮っているのを見られているからだろう、大将は使われていない番台から客が持っ てきたと言って写真のプリントアウトを取り出して見せてくれた。

それは小生がネットにアップしている橋本遊廓の写真だった。日付を見て驚いた。4年前のち ょうど今日12月20日にここを訪れている。この写真が4年前に小生が撮影したものであるこ とを告げると大将も驚いた。

大将曰く、「時流には勝てなくて・・・」と済まなそうな顔になった。瓦斯灯や古い時代の材料 を保管しているくらいなので古い時代のものが好きなのだろう。しかし、同湯の設備は基本的 にすべてが更新されている。

脱衣所は、幅2間、奥行は仕切られたフロントスペースを入れて3間ほど。1つを除いて古い ものはない。唯一の古いものとは大きくて重厚な木製のベンチだ。背もたれの中央に右書きで 「寄贈/辻よし楼/電話・・・」と彫り込まれている。橋本遊廓には京街道に直交する小道が3 本ある。その真ん中の仲通りにあった遊廓だ。その朱泥塗りの遊廓建物は空き家にはなってい るけど現存している。

浴室は幅2間、奥行3間。さらに後方にサウナ室と水風呂のスペースが1間ほど増築されてい る。天井は四角睡型の天井に長方形の湯気抜きがある。

カランは外壁側に8、奥壁のサウナ室の側面に3。カランはレバー式のもの。カランの下に湯 桶を置く台はなく、カラン上に道具を置くスペースがある関東式の構造になっている。

浴槽は男女境中央に扇型のものが1槽ある。それが1穴ジェット×2、電気、素の部分と3つ に分かれている。湯温は42度弱といったところ。

壁はポイント模様が入った白を基調としたもの。床はグレーの厚手のものというようにタイル 類に古いものはない。ビジュアルの類もない。改装する前は、床は石敷きで浴槽も石組みだっ た。さらに凄いのは、壁がタイル張りでなく、乳白色のガラス張りだったことだ。物置に埃だ らけの部材が一部残されている。当時としてはかなり贅沢な材料だったはずだ。

そしてトイレの先に母屋と隔てるレトロなガラス戸がある。ひし形の桟がある洋館にある類の ものだけど、キザギザのある色鮮やかなグリーンのガラスが使われている。そういった材料や それを操る職人がこの遊廓の町には存在したということだろう。この町の特殊性ゆえに選択さ れた材料だと思う。

上がりはスパードライ230円を頂いた。

土曜日の17:30から18:30に滞在。京都の田舎にしては工場への出稼ぎなのかスリランカ人 などの外国人もいたりして客は多い。工場労働者か建設現場か、サウナでの話題の中には電機 メーカーやらゼネコンの固有名詞が登場する。どこもあまり景気はよくないようだ。

8泊9日のクレイジーな遊廓跡&銭湯ツアーも同湯が締めとなった。本当は京都駅近くの島原 の遊廓を探索しようとも思っていたけど、時間が押しているのと、寒いのでその気力がなくな った・・・。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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「辻よし楼」から寄贈されたベンチ
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