差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2006年3月18日土曜日 10:27
宛先: 銭湯ML
件名: 東湯(川崎市中原区中丸子)

ナカムラです。

今日(3/17)は、「東湯(川崎市幸区中丸子)」に行ってきました。
平間駅(JR南武線)から、1.0キロ、15分くらいです。
往路は川崎駅からバスで向かいました。

バス王国の川崎市。だんだんと川崎駅のバスターミナルにも精通してきたなと一人悦に感じていると、発車間際の違うバスに飛び込んで、同湯に辿り着くのに苦労する・・・。最近、トホホなことが多い。

南部沿線道路という幹線道路と平行に、でも、直線ではない2車線の道。恐らく、この道がこの地域の旧道なんだろう。同湯はそんな道に面している。すぐ近くに神明神社や無量寺といった古風なものがあり、そこまでも薪が香っている。

同湯後方に薄っすらとコンクリの独立煙突が見える。入口棟も脱衣所棟も入母屋屋根の黒瓦葺きで、正面からは破風が2つ重なって見える。黄色のペンキで縁取りされ、丁寧にメンテナンスされている。昭和38年築。大きくはないけど、立派な伝統伝統的木造銭湯だ。

花王の古銭デザインの暖簾を潜ると、番台裏と、入口を遮る衝立にタイルが張られている。衝立がタイル張りなのは珍しいかも知れない。それに、番台裏の窓や入口の木製枠の戸など、気品あるデザインで、古風な雰囲気が良く維持されている。

下足箱の錠は旧型のさくら錠。下足箱の扉には、それぞれ「傘」と書いてある。靴箱の置くに丸い穴が開いて、傘を収納できる構造になっている。たまに遭遇するけど、古風で、なかなか趣きがある。

入口の雰囲気は古風だし、入口戸も木製枠の古いものだけど自動ドアになっている。さらに、中に入ると「番台」だけど、「台」にはなっていない。女将の座る椅子は脱衣所の床と同じ高さに置かれている。衝立というか、壁もあって、雰囲気的には「フロント」というのが相応しい感じだ。

脱衣所の広さは、幅3間弱、奥行3間。蛍光灯の照明が明るい、清潔な空間だ。
天井はモスグリーンの天板が張られ、周囲は白い天板でアクセントが付けられている。真中にやはりモスグリーンに塗られた天井扇が下がっている。

ロッカーは、外壁側と島ロッカーが1つ。錠はSakuraU錠の板鍵のもの。男女境上部は丸太が渡され、その下には磨きこまれた大きな鏡が木枠に入ってある。その横には古風な洗面台があって蛇口が1つ。蛇口が1つなのに「熱湯」が出るという貼り紙。熱湯の蛇口しかないのは珍しい。試しに捻って見るが、やはり熱湯・・・。同使うのか?、客用ではあり得ない・・・。

入口方には、木枠の硝子戸があるものの、すぐコインランドリーが増築されていて視界はない。
その他、男女境には天海有希「女王の教室」を映しているテレビ。最近、載ると悲しくなるデジタル体重計、ビールも入っている冷蔵庫、新型のマッサージ機などがある。

番台前の冷蔵庫の上には14型くらいの液晶テレビがあって、これは番台に座る女将の専用のようだ。テレビ見ながらの接客。どうなのかなと思うことがある・・・。

浴室は、幅3間弱、奥行4間弱という感じ。やはり明るく清潔な空間になっている。
天井は2段型で、梁が濃いブルー、その他は淡いブルーと綺麗に塗られている。2段型の天井は、普通、板が横に渡されている。同湯はそれが縦に張られている。ウィング部はカーブした構造なのに、板も湾曲して張られている。しかも、12センチ幅の板はその中心を浅くV字型に削るという装飾まで施されている。凄い・・・、と思った。

しかし、建築家の建物観察の行動パターン、「拳で叩いてみる。」を真似してみる。ありゃ、プラ板にペンキを塗ったもの。こんな組み合わせに初めて遭遇。でも、窓枠が白木で維持されているのとマッチするし、雰囲気的には悪くない。

カランは、鏡のみの島カランが1列で、カラン数はセンターから、7・5・5・6。両サイドにのみシャワーがある。日の丸扇の刻印があるカランは、レアなもの。動物のアリクイの鼻のように先が細く流線型になっているタイプ。ハンドシャワーや立ちシャワーが1つも無い。これは珍しいことだろう。

床はモスグリーンのタイル。カラン台の脚部も下が濃いグリーンで上部がモスグリーン。昭和45年から経営を引き継いでいる同湯の経営者は、小生もそうだけど、グリーンが好きなようだ。

浴槽は深浅2槽。深槽がバイブラでジャスミンの薬湯。温度は42度弱。茶髪で髭ぼうぼうの年配者が目を閉じて瞑想している風。あまりにソクラテスに似ているので、まじまじ見つめてしまった。しかし、ソクラテスに似ている人というのも、日本にはなかなか居ないと思う。

浅槽は2穴ジェットが2機というシンプルなもの。温度は以外に高く43度弱。21:40から22:20の滞在だったけど、ひっきり無しに客が入ってくる。相客は10数人というところ。

ビジュアルは、奥壁に中島師のペンキ絵で、絵柄は赤富士。初めてではないと思うけど、中島師の赤富士は珍しいかな。その下にはモザイクタイル絵。石灯篭が大きく描かれていて、そこから海の小島の朱塗りの鳥居に橋が伸びる図。和風の絵柄というのも少数派だし、この絵柄は見たことがない。男女境にはベージュの細かいタイルでアクセントが付けられているものの、絵は描かれていない。

上がりはスーパードライ250円。電車に乗っていると、桜の花も見られるようになってきた。しかし、今日は風が強く、肌寒い感じがする。平間駅まで歩くものの、駅近くまでは、人どおりも少ない道が続く。


平間駅(JR南武線) 
昭和2年、旧南武鉄道の開業当時からの駅舎が残っている。




(出所)川崎市浴場組合連合会のオフィシャルHPより。


平間温泉

中丸子


平安時代の丸子庄までさかのぼる古い地名である。上丸子から中丸子、平間、そして東京側の下丸子まで一帯が丸子庄という荘園であった。

鞠子から転じたといわれており、渡船場の渡し守を「モリコ」といっていたのがなまり「マリコ」、そして「丸子」と字をあてたものと思われる。

江戸期に丸子村が上・中・下に分かれた際に誕生した。明治22年(1889)の御幸村誕生の際に大字中丸子となり、昭和47年(1972)の区政施行により中原区に含まれることとなった。