差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2008年9月21日日曜日 16:57
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 日の出湯(京都府舞鶴市吉原町)

ナカムラです。

今日(9/13)は、「日の出湯(京都府舞鶴市吉原町)」に行ってきました。 西舞鶴駅(JR舞鶴線)から、2.0キロ、20分くらいです。

同湯のある吉原は、享保時代の城下を焼き尽くした大火の後、漁師たちが繁華な竹屋から強制 的に町外れに移住させられてできた漁師町だ。

後方に山が迫る伊佐川河口の狭い土地。その細長い町を運河というか長い船溜まりが貫いてい て、両側に間口の狭い家々が連なっている。町全体が「長屋」という感じだ。それが500メ ートル以上にも及び独特の景観を作っている。

小生とほぼ同年代の若女将は3代目というが、同湯の歴史は、その祖父が同湯の経営権を得る 前に遡る。この町は、明治42年に銭湯の煙突の火の粉により、民家101戸、附属建物や船 小屋など合わせて200余棟を焼失する大火に遭っている。

火元は同湯だったのかどうか。。。 いずれにしても、明治の終わりから、最も新しく見積もっても昭和前期の建物だと思う。銭湯 建物で、ファッサードが連子格子というのは珍しい。街全体の雰囲気と相俟って、何とも言え ない風情がある。煙突は表からはうかがえず、長屋の裏庭に入り込むようで気が引けるけど、 裏に回って初めて銀色のパイプを通した油井型の煙突が見えた。

昨日の小浜・日の出湯と同じ屋号。 同湯も、また銭湯遺産。そう言っていいと思う。

16:00の開店とともに暖簾を潜る。小さいながらも脱衣所の様式は地方銭湯のそれに従ってい る。小さなコンクリのタタキの脇には番台。反対側には下足箱がある。

脱衣所の広さは幅2間、奥行きはタタキの部分を入れて3間半程度。天井は普通の高さで2階 が載る町屋につき一般住宅より心もち高いかなという程度だ。

若女将は小生の荷物を見てロッカーのカギを貸してくれた。地元の人はビニール製の脱衣籠し か使わないのか、SSLOCK錠の新しいロッカーは使用していないのかも知れない。

下足箱も同じSSLOCK錠だったけど、下足箱に入れることはせずタタキに脱ぎ捨てた。相客は爺 が一人だけ。その爺も当然に下足箱なんか使わない。高岡・中島湯のように、25センチの靴 すら入らないそんな下足箱に、古い銭湯に行くと遭遇することがある。

脱衣所は、全てが新しく更新されている。少し風情には欠けるかも知れないけど快適だ。デジ タル体重計、旧型のマッサージ機、梁に中型の扇風機が2台も設置されていたりする。牛乳を 頂いたが、飲料の販売もある。

浴室へは緩衝スペースを兼ねた2段ほどのタイルの階段を昇って、その先にある。 幅2間、奥行3間半ほどの広さ。天井は四角錘で、真ん中に湯気抜きが開いている。天井も湯 気抜きも幅広の木板で組み立てられて、淡いピンク色のペンキが長年の間に何層にも塗り重ね られている。

漁師町では古い船材を建物に使ったりすることがある。同湯の幅広い部材がそうかは判らない けど、そうだと言われれば納得してしまう、そんなレトロな天井だ。

タイル類はほぼ新しいもにに更新されている。床はグレーの厚手のもの、カラン周りは黄緑色 の大判タイル、壁はやはり白の大判タイルが張られている。ビジュアルは無い。

そんな空間に小判型の浴槽が真ん中に1つ。中心で浅深2槽に区切られている。地方銭湯はど こでもその傾向が強いけど、浅い方は寝転ばなければ肩まで浸からないほどに浅い。

湯温は42度くらい。カラン数は、入口方以外の3方に6・4・6。この規模の銭湯としては数 が多い。湯桶は古くないタイプの白ケロリン桶。

そして、同湯には椅子が設置されておらず、タイルに直に座ることになる。しかし、それに如 何ばかりの抵抗も感じさせないほどに浴室すべてが清潔だ。

ロケーションが秀逸な、漁師町の連子格子の小さな銭湯。 若狭・小浜、美浜、舞鶴。ここらの地名も詩的で美しい。 訪れる価値のある優れた銭湯だった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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