差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2008年9月21日日曜日 16:43
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 日の出湯(福井県小浜市塩竈町)

ナカムラです。

今日(9/13)は、「日の出湯(福井県小浜市塩竈町)」に行ってきました。 小浜駅(JR小浜線)から、0.6キロ、6分くらいです。

20年ぶりの小浜。海外への卒業旅行が流行の時代に、写真の個展を開き、卒業式までの残っ た時間で、敦賀経由で出雲まで寒い日本海側を旅した。途中、隠岐の島などにも渡った。

小浜は、その時以来だ。小浜線が電化されているのには驚いたけど、2時間に1本くらいしか 電車が通らない不便さは相変わらず。

日の出湯は、そんな小浜の最後の1軒。中心に、遊廓跡のように不自然に道幅が広い、かつて 小浜の魚市が開かれていたという海辺の古くからの地域にある。魚市の道が細くなって、その 先には海が望めるというロケーションに、大正末か昭和初期に建てられた、小さな小さな銭湯 がある。隣には中華屋ならぬ「三福食堂」という古風な脇役も健在だ。

細い路地に間口3間のという通常の半分幅。下見板張りの押し縁というレトロ極まりないファ ッサード。そこに「日の出湯」という小さな行燈看板と、通常型銭湯と同じ大きさの暖簾が男 女別々の入口にややバランスを欠きながら揺れている。

戸を開ければ、番台とタタキ。脱衣所の広さは幅1間半、奥行2間ほどという本当に小さなも のだ。 下足棚に靴を預け、4段からなる脱衣籠を収めた棚から籠を取る。その4倍ほど漢数字を振っ たオール木製ロッカーもある。

この小さな脱衣所空間にあるのは、他にアナログの体重計、家庭用の扇風機、旧型のマッサー ジ機だけ。この旧型マッサージ機が凄い。番台前の男女境の真ん中に男女兼用で1台あるだけ。 両サイドにカーテンがあって、それで向こうの視界を遮るというもの。イニシエの頃、マッサ ージ機はかなり高価な設備投資だったのは知っているけど、こんな大胆というか、大らかな方 法でマッサージ機が置かれているのに初めて接した。

浴室は、幅1間半、奥行3間ほど。天井は四角睡型で、さらに角度を急にした四角錘の湯気抜 きがある。

同湯では大鋸屑で井戸水を沸かしている。石を砕いた入浴剤が投じられているせいもあって、 湯は心地よく、柔らかい。循環設備はとうの昔に故障して、直釜という方法で湯を沸かしてい る。男女境に接して縦長に置かれた浴槽に、長方形の大きな鉄の箱が立てかけられるように設 置されている。そこを奥の釜場で沸かされた熱湯が通って浴槽の湯を加熱する仕組みだ。

シャワーを使うといつまでもお湯にならない。聞けば、女将は10日前に壊れたと、恥ずかし そうに、言い訳するように教えてくれた。

そんな訳で、福井県の銭湯は10月から370円から400円に値上げされるけど、その値上 げを見送るという。

小浜には最盛期に11軒程度の銭湯があったようだ。相客は1人。その相客がそんなことや、 遊廓・三丁町の検番併設の銭湯で、子供の頃に潜って女湯に行き芸妓さんに怒られたことを嬉 しそうに話していた。

昔の銭湯は、浴槽が底の方で男女繋がっていた話を聞くけど、未だそういった銭湯には遭遇し ていない。。。

近年、道路拡幅で「若松湯」が廃業し、スーパー銭湯などではなく旧来型の銭湯としては最後 の一軒になってしまった。営業時間も16:00から仕舞は遅くても19:30くらいまで。

ビジュアルもなく、満身創痍だけど、今回の長旅で最も深い印象を受けた。
まがうことなき「銭湯遺産」。
そう言っていいと思う。
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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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男女境に旧型のマッサージ機が1台だけある。





かつて小浜の魚市が立っていた幅広の道。小さな稲荷が交差点に出っぱたままある。


付きあたりの向こうはもう海。