差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2004年4月27日火曜日 23:57
宛先: 銭湯ML
件名: 日の出湯(横浜市金沢区金沢町)

ナカムラです。

今日(4/25)は、「日の出湯(横浜市金沢区金沢町)」に行ってきました。
金沢文庫駅(京浜急行)から0.5キロ、10分程度です。

第一目的の銭湯は、金沢八景の「稲荷湯(金沢区州崎町)」だったけど、既に廃業していた。
今は「いなりパーキング」・・・。
小さな駐車場に、コインランドリーのプレハブだけが建てられていた。

幅員がある桜並木の道に位置していた様子。なんか由来のある道だったのかな・・・。
隣家の人の話では、去年の3月に店を畳んだとのこと。

その近くの「港栄館(金沢区平潟町)」は、データ的には設備充実の銭湯だったけど、脱衣所棟は瓦屋根の伝統的タイプだった。向かいにはしっかり中華屋。
金沢文庫の「宝来湯(金沢区寺前町)」は、昭和中期的なボロ銭?だった。

さて、日の出湯。昭和初年の築。材は千葉の料亭をバラしたものを運んで使ったとのこと。
施主は、東京で屑鉄商として成功した、ヤマダゴロウという人で、近くに洋館(別荘)を持っていた人らしい。
(この洋館は最近壊されて、大規模なマンションが建設中だった。)

入口は立派な千鳥破風の黒瓦。懸魚も付いている。
その上の屋根はくむり破風。今はトタンで葺かれているけど、十数年前までは瓦屋根で、鬼瓦の位置に恵比寿様が載せられていたとのこと。
こんな凝った瓦はもう作れないと、瓦職人に勧められて撮った写真が脱衣所に飾ってある。

向かって右側が女湯、今は塞がれいるけど、側面にむくり破風の入口がある。
十数年前に男女を入れ替えたとのことで、この旧男湯側の入口は何なんだろう。

暖簾をくぐると正面に「ブルー」と「白」のタイルが交互に張られたよくあるタイプ。ただ、その周りがマジョリカタイルで縁取りされている。
昔は、今使われている奥の引き戸はなくて、手前にあったハ字型の戸を使っていたらしい。今は敷居だけが残っている。
下足箱の錠は松竹錠。後から付けられたという番台への引き戸は茶色で意匠を施した格子、なかなかいい雰囲気を出している。

戸を抜けると番台。今は使っていないのかな。
番台の前の男女の仕切りはなくて、女湯の脱衣所の方のみカーテンが張られている。
カーテンだけで作られた、簡素なフロントと言えなくもない。

脱衣所は2間半四方。男湯のみ脱衣所の上に2階が増築されているので、天井の高さは普通の住宅並。
端っこに島ロッカー(10個)。主力は脱衣籠のよう。その他、デッキチェア、テーブル、ベンチ、冷蔵庫などがある。

外壁の向こうにコインランドリーがあるけど、ここが女湯だった時に、そこは畳敷きの部屋で和服を着るための大きな鏡があったとのこと。
昔の銭湯はどこでもそんな部屋があったのかと聞いたけど、判らないと。

女湯の天井は増築されておらず、旧状が判る。格天井ではないけど、意匠を施した格子になっている。材は太くしっかりして、なかなかのもの。
今は天井も壁も新建材のベニヤ板が張られているけど、昔は双方とも漆喰が塗られていたとのこと。
そして、古い照明器の鎖に電球のソケットがぶら下っている。
いにしえを思い返すと、かなり風格ある銭湯だったことが判る。

一人で同湯を切り盛りする女将は、年の頃70歳代半ばか。
近くに住んでいたので、小学生のころよくこの銭湯に入りに来ていたと言っていた。
この銭湯が出来た時は、まわりは原っぱで誰が入りにくるのかと言われていたと。

浴室は、幅2間半、奥行4間。
天井は平面。脱衣所のオリジナルの天井と同じ高さと思われる。白いペンキが綺麗に塗られている。
天井の真中から、ポールが下がり裸電球が付いている。
今は使われていないようだけど、昔は鎌倉の瀧乃湯のように電球1灯の銭湯だったのかも知れない。

島カランは1列。カラン数はセンターから6・4・4・6。センターに立ちシャワーブースが1つ。
カランは日の丸扇の取っ手が茶色の5角形。
タイルは改修されていて古いものはない。床はグリーン形の3センチ角のタイルが張られている。

浴槽はセンター側に7点座ジェット×2、外壁側が「ウトロ白乳泉」で、1/3が電気風呂になっている。
「ウトロ白乳泉」は白濁した湯で無臭。多少ザラ付いていて、2回入った「エッキス」にどことなく似ていた。

ビジュアルは男女境に横8枚×縦4枚の今風のタイル絵が2つ。
高嶺、川、森と洋風なタッチ、もうひとつは浜辺とその先に岬という、どちらかと言えば日本的なもの。

奥壁には、浴槽のすぐ上にモザイクタイル絵。洋館、湖、舟という御馴染みのもの。
その上にペンキ絵があるものの、既に半分は剥落してトタンの地がむき出しになっている。
女湯には富士山が見える。男湯は海の図。現役絵師のものではない。しかし、小さい中に多くの物が描かれていて、手が込んでいるなぁという印象を受けた。

女将はだいぶ荒れているので、塗りつぶそうか思案中と言っていた。
その前に見ておく価値はあるかも知れない。

「金沢文庫」こと称名寺近くにある歴史ある銭湯。
日曜日の16:00。年配者を中心に相客は10人くらいだったけど、客は入らなくなったと。
改装したときには10年持つかなと思ってたけど、既にその10年は超えてしまったと。
いい銭湯だと感じたが、そう長くもないのかなと思った。

女将はビスケットと飴をしのばせ、湯上りの2歳くらいの子供に上げていた。
おそらく、いつものことなのだろう。その子供はそれを楽しみにしているようだった。