日の出湯（小樽市石山町）

差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2006年11月24日金曜日 19:57
宛先: 銭湯ＭＬ (sento-freak@kt.rim.or.jp)
件名: 日の出湯（小樽市石山町）

ナカムラです。

今日（11/21）は、「日の出湯（小樽市石山町）」に行ってきました。
小樽駅（函館本線）から、１．２キロ、１５分くらいです。

小樽のいわゆる手宮地区で石炭の積み出しで栄えた土地。今はその面影は微塵も見られない。人が多かった土地には、遊所跡と銭湯がある。同湯に入る前に、手宮の旧赤線地帯だった「手宮タヌキ小路」と、｢北郭｣と呼ばれた遊郭跡（梅ヶ枝町）を散策する。

手宮タヌキ小路は、中心にある「富士の湯温泉」の一部が洋風建物で、当時からのものと思われるものの、いわゆる赤線調の建物は見付けられなかった。山側に登った北郭跡も然り。

北郭跡を訪れると、その梅ヶ枝町にあった、｢梅ヶ枝温泉｣が更地になっていた。昨年末に火事を出し、一時再開したものの、結局は春に廃業した。後ろの母屋に火事の跡と見られる煤の跡が残っていた。

さて、日の出湯。千鳥破風の入り口に懸魚ではなく｢旭日｣模様をあしらった珍しい造り。しかし、モルタルの２階を増築したので、その千鳥破風がどことなく浮いている。後方には、金属パイプの煙突が見える。

寒冷地である北海道の建物は、入り口が二重だ。同湯もドア式の扉があって、その奥にガラガラと動く戸がある。恐らく、その間隔は半間もない。小さいながらリュックを背負っていると、その狭さにつっかえてしまう。

アルミサッシの戸を開けると、コンクリのタタキに高い番台が聳える。小樽銭湯の番台は高い。３９０円を払い入り口側壁にある下足入れに靴を入れる。錠は以外にもＳＳＬＬＯＣＫだった。

北海道の建物は床が高いのか、コンクリのタタキから２段ほど段差を昇って床がある。脱衣所の広さはコンクリのタタキの部分を含めて、幅３間、奥行３間強と広い。以前は｢ＦＵＪＩ｣錠のロッカーを使っていたようだけど、今は脱衣籠のみ。畳を模したビニールの敷物の広い空間がある。

戦後の建物と言っていたけど、男女境はそうとは思えない洋風の模様があしらわれている。番台前の女湯と繋がる戸のガラスは、今は見ることができない模様ガラスが使われている。さらに、男女境の下１０センチ強の高さで隙間が開いている。体重計に乗り降りする（？）女湯客の脚が見える。

試さなかったけど、寝そべると確実に女湯の脱衣場が眼前に拡がるだろう。初めて遭遇する、なかなかオープンな構造だ。

その他、ＴＡＮＡＫＡのアナログ体重計、外壁側に造り付けのベンチがある。浴室の入り口脇にピンク色の三輪車が置かれていて微笑ましい。

浴室は３間四方。天井はプラ板張りで高さ１．７５間ほど。浴槽は中心に円形の浴槽が１つ。さらに、円形浴槽に接する形で、後ろに長方形の浅い副浴槽があって１穴ジェットが左右から噴出している。２人が互い違いで利用できるようになっている。

円形浴槽は、縁が１センチ角のブールーのタイルで、床は小石型の豆タイルとレトロな感じ。３人が入れば一杯だ。小樽銭湯は、深いのが特徴的だ。薪のみで沸かすため、１４：００開店のために、６：３０には釜に火を入れる。身体の芯まで温まる、柔らかいお湯が満たされている。

床のタイルの入り口部分は２センチ角のタイルの市松模様。洗い場は、八角形の白タイルとブルーの小さな正方形タイルの組み合わせという古風で厚手のしっかりしたタイルが使われていて嬉しくなる。

カランは、男女境側に５、奥壁側に５。そして、外壁側に「冷」のみが５。かつては｢温｣もあったようだけど、カランを撤去し、塞いだ跡がある。

１メートル以上の部分がスリ硝子になっている、やや開放的過ぎる男女境の下座に陣取る。桶を置く部分だけが、３センチくらい高く半円形の出っ張りになっている。まぁ、それはいいとして、石鹸箱を置く台がない。最後まで、どのようにこの銭湯を使えばいいのは判らなかった。｢狭い｣というのは経験があるけど、湯道具を置くスペースが無いというのは初めての遭遇だ。

同湯の主要なお客さんは漁師だった。ビジュアルなんて軟弱なものはない。壁は１０センチ角の白タイルが張られているのみ。

火曜日の１５：３０から１６：３０に滞在。相客は５人ほど。

｢いらっしゃい北の銭湯(北海道新聞社/1998年)｣に掲載されていた、ラベンダー畑を有するラジウム湯は廃業して建物も無かった。｢亀の湯｣表は改装されていたものの煙突は煉瓦煙突。小樽は古い歴史を持つ銭湯が多いようだ。

小樽駅までは１．２キロだけど、その間に尾根を乗っ越さねければいけない。しかし、夕暮れの小樽の街、その向こうに海が見える。いい風景がある。

駅までの道すがらの｢柳川湯｣は盛業中。煉瓦煙突の｢デンキ湯｣は、今年一杯で廃業するとの噂を聞いていたが･･･、電気が点いていない。｢11月20日を以って閉店します｣との張り紙がある。昨日ではないか･･･。洋風建物で小樽の横綱格の｢鹿の湯｣も今年廃業し、夏ごろには建物も解体された。

大正末期に最盛期を迎えた小樽。歴史ある小樽の銭湯も徐々に終焉に向かっている感じがする。

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ナカムラ　（Masayuki Nakamura）
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URL: http://www7a.biglobe.ne.jp/~masayuki/ （風呂屋の煙突）
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富士の湯温泉(錦町) この通りは元｢手宮タヌキ小路｣と呼ばれた赤線地帯。	玉の湯(錦町)
梅ヶ枝温泉跡(Ｈ18年春ごろ廃業)	亀の湯(清水町)
柳川湯大正から昭和にかけては小樽で最も賑わった「梁川通り商店街」にある。付近一帯は榎本武揚(号が梁川)の私有地だった。	デンキ湯(H18.11.23撮影)
1986.2.25撮影