差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2015年3月6日金曜日 22:24
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 広野湯(豊島区南長崎)

ナカムラです。

今日(12/12)は、「広野湯(豊島区南長崎)」に行ってきました。落合南長崎(都営大江戸線)から、0.9キロ、10分くらいです。

”マンガの聖地”、旧椎名町五丁目(現南長崎三丁目)にあった「トキワ荘」からも近い。

トキワ荘に集った手塚治虫、赤塚不二夫、藤子不二雄等の若手漫画家は近くの「鶴の湯」や「あけぼの湯」「人生浴場」に通ったと言われている(いずれも現在は廃業)。同湯は同じ町内にあって、それらの銭湯に次ぐ距離にある。女将さんは分らないと言うけど、素朴に考えて漫画家達が稀にでも訪れなかったとは考えにくい。どうなんだろうか。

ここ南長崎界隈は戦災に遭っていない。油井型の煙突があって昭和初期の建物も残る胡麻油の小野田製油所(昭和7年)など、戦前の建物と分る建物が街路の狭間に埋もれている。

広野湯は戦前派銭湯。米軍撮影の昭和22年の航空写真ではっきりとその姿を確認できる。古い銭湯に相応しく、表通りから薬屋と更にもう1軒の住宅の奥という長めのアプローチの先にある。遠くから煙突は見通せないけど、後方に回ると地上数メートル程で切り取られた油井型の煙突が残っている。

暖簾を潜ってエントランスに入るとSakura-G錠の下足箱。自動ドアを通るとふかふかの絨毯が敷かれた増築のロビースペースがあってカウンターが置かれている。

表で写真を撮っていると、何処からか出てきたおばちゃんに咎められるように声を掛けられた。フロントの女将さんではなかったので同湯の方ではなかったようだ。下町もそうだけど、人の出入りがある下宿などが多かった土地柄、余所者に無関心でいられない気風が残っているのかも知れない。

脱衣所の広さは、幅3間半、奥行3間ほど。天井は田の字型に4つに区切られ、白のクロスでアクセントが付けられている。ロッカーは島ロッカーが縦置きに1つと外壁側にSakura-3錠のものが並んでいる。男女境が3席のドレッサーになっているのは目を引く。その他、デジタル体重計、旧型マッサージ機などが置かれている。

浴室の広さは、幅3間半奥行4間ほど。天井を見て心躍る。木造の古い織物工場のような鋸のギザギザ形をした極めて珍しい構造だった。壁に張られたプラ板の間の古い柱やノコギリ屋根を支える筋交いの部材などから、戦前築の部分が残っているのではないかと想像が膨らんで来る。島カランにはその古い天井を支える白ペンキ塗りの支柱が追加されている。

島カランは2列で、カラン数は8・4・4・4・3・0。それぞれのカランの間には樹脂製の衝立がある。しかし、これは清掃が難しい。床のタイルはベージュ色のホタテ貝を描いたような中判4枚で1つの幾何学模様を構成するもの。

浴槽は奥壁に深浅2浴槽。さらに外壁側に薬湯と冷却された水風呂がある。深槽は一部に水枕付の7点座ジェット×1で43度くらい。主浴槽の浅槽にはリクライナー的な座ジェット×2があってやはり水枕付。湯温は42度くらい。薬湯はやや白濁した薬湯には見えない塩素のキツいもので温湯で41度くらい。水風呂はサウナが無いのに優に20度は割るくらいまで冷却され、長くは入っていることができない。水はすべて井戸水で賄われている。切り取られた煙突からすればガスで沸かしているのだろう。

ビジュアルは一切ない。強いて言えば、奥壁に装飾が施された洋風の球状の照明器が3つほど据えられている。

上がりは、変わった女将に昔話を聞きながら瓶牛乳130円を頂く。

金曜日の20:20から21:20に滞在。今も風呂無しアパートが残る地域。小生も南長崎のフクダ君のアパートに帰宅前に上がり込んでは、銭湯から帰って来るのを待っていた経験がある。そんなこんなで相客は10人近く。

温度バリエーションがある浴槽に、サウナはないものの源泉水風呂がある。何がとは言いづらいけど、町の雰囲気も多分に味方してかなり気分がいい銭湯だった。

上がりは夜の南長崎の街を散策する。トキワ荘跡地、中華料理の松葉、山政マーケット、味楽百貨店など楽しい建物が多く残っている。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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    トキワ荘の跡地には小さな出版社の社屋が建てられている




   トキワ荘の並びといっていい一角には、トキワ荘を出た赤塚不二夫が事務所を置いていた紫雲荘が残っている










     小野田精油所。上質の胡麻油を製造しているようだ。















                     味楽百貨店





                 「豊島区トキワ荘通りお休み処(旧吉津屋米店/昭和元年築)」で頂いたパンフレット
                  トキワ荘通り・協動プロジェクト協議会の方々は積極的に活動されている。
                  トキワ荘の漫画家たちは、吉津屋米店からの米で生活していた。





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