差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2008年7月25日金曜日 7:06
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 星の湯(佐渡市両津夷新)


ナカムラです。

今日(7/19)は、「星の湯(佐渡市両津夷新)」に行ってきました。 両津のフェーリー埠頭からから、0.7キロ、8分くらいです。

佐渡は、湊と夷に二つの港があって、それで両津と呼ばれている。双方のエリアは、加茂湖を 海と繋げるために開削した小さな川で隔てられていて、その間に両津らんかん橋という橋が繋 いでいる。商店街や飲み屋街は北側の夷町にある。ご多分に漏れずやや寂れ気味だけど、その 端の方に同湯はある。

正面にはパネルが張られ、さらに三階も増築されている。この銭湯のオリジナルの姿を想像す ることは難しい。入口はアルミサッシの入口の奥に、男女別々の入口があるという二重構造。 気候的には、佐渡は新潟市などと同様に下越地方に属している。今でこそ雪は多くないようだ けど、北海道の銭湯のように防寒、防雪対策という意味合いがあるのだろう。

1つ目の入口を入ると、その雰囲気からこの銭湯が歴史ある古い銭湯だということが分かる。 右手にはトイレへの木製の桟のガラス戸。正面には板張りの番台裏があって左右に男女それぞ れの暖簾が下がる。

暖簾を潜るとコンクリのタタキと木製のスノコ。右手に黒光りする板組みの番台、左手には旧 型のおしどり錠の下足箱がある。そんなお歳には見えないけど、抱いているのはお孫さんなの か。料金を聞けば350円とのこと。新潟県の上限価格390円にはぜず、据え置いている。

脱衣所の広さは幅2間、ゆったりとしているコンクリのタタキの部分を入れて、奥行きは4間 ほど。外壁側に2階へ上がる階段がある。天井高は1間半弱といったところ。ビニールのゴザ が敷かれているのが地方銭湯的な雰囲気だ。

男女境側にロッカーがある。SSLOCK錠が付いているものの、ほとんどに板鍵がない。ロッカー がブルーのペンキ塗りというのが漁師町のお決まりか。丸い脱衣籠も現役で使われている。浴 室との間はガラス戸。浴室から見通せるので、ザックは床に放り出して、衣類は鍵なしのロッ カーに放り込む。

浴室は幅2間、奥行3間ほど。湯気抜きを兼ねた明かり取りの窓が奥壁の上方に開いていると いう珍しい構造だ。そういった構造から、天井高は奥が2間弱、脱衣所側が1間半弱と、前後 で天井の高さが異なっている。 島カランはなく、カランは男女境側と外壁側に5個ずつ。佐渡のカランはレバーを押す方式で、 設備的には関西系企業のマーケットになっているようだ。

浴室は奥壁に1槽。それを厚手の板で2つに仕切っている。1穴ジェット2機の浴槽の最大の 特徴は、深さが浅いことか。多少体を傾けないと肩までつかることができない。湯温はこれも 漁師町の伝統なのか、44度弱とそこそこ熱い湯だ。

湯を掬って鼻にかざすと黒湯のような微かにヨード的な匂いがある。井戸水を薪で沸かしてい るとのことだから、あるいは温泉成分的なものも入っているのかも知れない。

ビジュアルは奥壁にモザイクタイル絵。わざわざタイル絵の一部に「南米・イグアスの滝」と 小タイルで目立つように大書きされている。しかし何で、佐渡で世界最大のイグアスの滝なの か。不思議だ・・・。

ご常連が持ってきたスーパードライの6缶パックを、女将が「借りとくね」といって、番台の 上に吊下げられた冷蔵庫に入れた。どういう「取引」だったのかは理解し難かったけど、聞け ば200円で売ってくれるという。市価より安いので気が引けたけど1本頂く。

土曜日の17:30から18:30に滞在。相客は2人。浴室ではほとんど小生のみだった。

上がりは、教えてもらった近くの「助六寿司」へ直行する。地元で商売している風呂屋では、 往々にして近所の飲食店の評価を教えてはくれない。佐渡では、そのあたりは大らかなのかな。

助六寿司では、大振りな岩がき、地魚のみお任せで握ってもらって、さらに鯖、鰺、干瓢巻き を頂いた。燗酒と地酒の冷酒を頂いて4500円。星の湯女将の推薦に恥じない、美味しい寿 司だった。値段も安いと思う。

そして、この助六寿司の辺りが両津夷町遊廓があったエリアだ。 軒灯が残る妓楼風の建物が廃業旅館や両津タクシーのガレージとなって残ったり、遊廓時代の 屋号を引き継ぐホテルがあったりして、微かにその雰囲気を残している。

同湯から町の中心部に戻る途中に銭湯の煙突と建物が残っている。1階が佐渡観光タクシーの ガレージになっているので面影はないものの、5年ほど前に廃業した「月の湯」だ。「星の湯」 と同じ経営者が経営していたけど、客が減ったこともあって、街の中心地にある方を閉めた。

「月の湯」という屋号はありきたりだけど、「月」と「星」が一対になっているというところが 印象的だ。

両津では、夷町の他に、湊町にも遊廓あって盛んだった。今日の宿は、両津湊町遊廓跡にボロ 旅館として今に残る旧遊廓の「金澤楼」。現在は「金沢屋旅館」として宿泊することができる。

やはりというべきか、普通の旅館ではない。例えば襖絵や天井が尋常ではない。襖絵は銀地に 丹頂の図。天井は漆塗りの赤。精神を高ぶらさせ寛ぐのを阻害するような絢爛豪華さと妖艶さ が潜む。気の弱い女性であれば、夜、この襖の横で眠ることができないのではないだろうか。 それが普通に客間に使われている。トイレの床が臙脂の六角タイルだったり、洗浄室らしき個 室も残る。そして、食事部屋に谷文晁作の屏風絵があったり、美術品も多数ある。決して一般 には受け入れられる旅館ではない。凄い旅館だ。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
メイン:masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp  
URL: http://www7a.biglobe.ne.jp/~masayuki/ (風呂屋の煙突)
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旧月の湯


助六寿司


地魚と干瓢巻き


鯵と鯖


付近は両津夷町遊廓だった。この建物には、2階の軒下に球形の照明器が残る。
奥の瓦屋根の建物(廃業旅館)には、それっぽい門柱が残っていた。






「天領盃」の会社は最近倒産していた・・・。

佐渡銘醸:再生法を申請、負債総額6億2000万円/新潟
6月28日14時1分配信 毎日新聞
佐渡市加茂歌代の酒造業「佐渡銘醸」(柴田茂社長)が26日、営業不振のため、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、保全命令を受けたことが分かった。民間調査機関の帝国データバンク新潟支店によると、負債総額は約6億2000万円にのぼる見込み。

佐渡名醸は83年に設立。清酒「天領盃」が人気を呼び、ピーク時の95年6月期決算では約10億円の売上高を計上。佐渡島内でトップクラスの清酒醸造元だった。

しかし、消費者の清酒離れや、業者間の価格競争激化の影響で、07年6月期決算の売上高予想は3億3500万円と、最盛期の3分の1にまで落ち込み、借入金も増加していたという。従業員(26人)の再就職先は未定で、今後、島外の酒造メーカーの支援を受け再建を図る方針。【磯野保】