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差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2015年4月26日日曜日 22:17
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 一の湯(中野区沼袋)

ナカムラです。

今日(2/6)は、「一の湯(中野区沼袋)」に行ってきました。沼袋駅(西武新宿線)から、0.2キロ、2分くらいです。

西武新宿線沼袋駅前のモルタルの飲み屋が集積した一角にある。一昨年4月に廃業した清水湯(昭和5年創業)と同一の経営で、同湯は支店として昭和24年築創業となっている。

駅前商店街に通じる50メートル余りの、同湯の花道商店街には「一の湯商店街」という看板が掛かっている。

同湯並びの「ホルモン」の角には「沼袋商店會」という鋳物のプレートを付けた古い下膨れ型の街灯が残っている。戦後直ぐの昭和22年の航空写真を見ると一帯は焼け跡なのか、畑あるいは更地だった。その後、現在のような小さな建物が密集する町になったようだ。

後方には、屋号を記したプレートを付けた油井型の煙突が見える。一風変わっているのは、T字路になった同湯の前だけに樹脂製の波板による”アーケード”があること。一風呂屋が造るには大がかりな構造物だ。

創業以来の建物をベースとしているものの大規模な増改築が施され、浴室の2段型の天井以外にそれと判る部分はない。フラットなファッサードにはモザイクタイルで「一の湯」と記されている。「一の湯商店街」の入口から見渡せるほどの大きさで、ライトアップもされている。

質素な入口の脇には多数の自転車が並ぶ。エントランスに足を踏み入れると、屋内にレプリカながら千鳥破風が設えられてあった。

松竹錠アルミ板鍵の下足箱に靴を入れて前に進むと、相方が少し戸惑っている。当然にフロント式と思える雰囲気の銭湯だけど、意表を突く感じで番台の銭湯だ。

相方が適度に世話焼きという感じの番台の女将さんに2人分の風呂銭を払い、小生は”その筋の者です”という挨拶代わりにスタンプ帳を差し出す。問われるままに、4冊目のスタンプ帳ということと住みかを話すと、冒頭の立川・美保湯のスタンプを見て「遠くから回っているんですか」と尋ねられた。勿論、評判高い同湯を避けていたわけではない。しかし、どうしてもレトロ系の優先順位が高いのは致し方ない性分でもある。

そんなこんなを経て辺りを見渡すと、驚くことに同湯の脱衣所は”回廊式”と言っていい広いもので、オリジナルを大幅に増築した幅5間、奥行3間ほどの広さ。中央に小さいながらも鹿おどしなどを設えた屋外庭と喫煙スペースが置かれている。

壁や天井にはオフホワイトのクロスがしっかりと張られている。天井には長い蛍光管が4本×3という照明器がこうこうと照らしている。

ロッカーは木目シールが張られたスチール製のものが、外壁と入口方に並んでいる。男女境は3面鏡×2という2人用のドレッサー。その他、Hokutowのアナログ体重計、リサイクルコーナーなどがある。シンプルさの中に豪華な感じがあってなかなかいい。

浴室は、幅3間、奥行4間。幅を半間程増築したのか、天井は水平のウィングを持つ実質3段型になっている。元々はかなり広い庭だったんだろう。外壁の向こうにはミント薫る6人用の無料ミストサウナ。さらに、その外側に2間半四方の岩風呂風の露天風呂スペースが設えられている。

島カランは2列で、カラン数はセンターから6・4・4・4・0。床のタイルは中判の足触りのいいピンク色のもの。浴室の相客はピーク時に10人程度。思い思いにお湯を使い、そのための湯気が立ちこめ、白い高天井は最後まで見通すことが出来なかった。

浴槽は奥壁に沿った42度くらいの主浴槽が1槽のみ。その中に、2穴スーパージェット、バイブラ、熱い湯が出るホットスペースがある。浴槽の大きさの割に大勢の人数が入るためか、お湯のコンディションはあまり良くはなかった。

露天スペースはカラン2機の洗い場もある深緑色の石材を張った岩風呂風。天井は四角錘型のよしず張りの天井で、中央の正方形の孔からは油井型の煙突を見上げることが出来る。

ミストサウナは、丸タイル張りの座面がひとり分ずつ窪んでいる。寝ることは出来ないけどゆったりと6人入れる。このスチームサウナはサウナ石を熱している乾式サウナで、時折、別途スチームが噴出する遭遇したことがないハイブリッドなサウナだった。中に手桶に水を汲むスペースがあって、窪んだ座面を各人が洗い流す仕組みになっている。ミントの香りとともに爽快に使うことが出来る。水風呂が無いのが少し意外か。

ビジュアルは、浴室内の奥壁にちぎり絵調のモザイクタイル絵。男女境の富士に向かって丹頂が飛翔する絵柄。

上がりは小岩井牛乳。100円という安さで提供されていた。

金曜日の19:50から20:40に滞在。気鋭の銭湯だけど、フロント式ではなく今や東京銭湯で”絶滅危惧種”の番台銭湯。しかし、女将さんの人柄に接すると、番台だから可能な気遣いに矜持を持っているんだなと理解させられた。カレンダーや清水湯廃業時に配られたという上質なタオル等々をも頂き感謝、感謝。

上がりの一杯は、渋い鮨処「中むら」の向かいの居酒屋「嘉兵衛」。モルタルの家をちょっと古い建材でデコレーションした若い人がやっている店だった。今日は休みだったけど同湯横の「ホルモン」がいつも気になっている。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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