差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2012年7月21日土曜日 0:15
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: いこい湯(足立区江北)

ナカムラです。

今日(7/7)は、「いこい湯(足立区江北)」に行ってきました。 江北駅(日暮里舎人ライナー)から、0.4キロ、5分くらいです。

梅雨時、結構な雨降りのなか、王子駅から西新井行の都バスで6キロ、20分ほどのアプローチ。隅 田川の北という意味の旧江北村。「江北四丁目」というバス停で降りる。

古い酒屋、郵便局、電話局番1桁の看板を掲げる米屋など、古くからの店が残る田舎町の、ちょっ とした中心地という趣がある。

一帯には、昭和36年に造られた都営上沼田団地が広がっている。半世紀以上前に建られ、外壁の塗 装もおざなり。高齢化が進んでいるんだろう、雨ということで人影がほとんどない。そこそこ空き 家もあって、廃墟の趣さえある。

見ると、各住戸のベランダは、耐荷重の補強が施され、ユニットバスが増築されている。これによ って、巨大団地から風呂なしの住戸が消失。同湯よりも後に、光浴場というビル銭湯(メゾン西新 井の地下)が団地隣接で開業、今も煉瓦色の煙突が残るものの、10年以上前に廃業していたようだ。

いこい湯は、団地ができた2年後、昭和38年にあの飯高工務店によって建てられたようだ。エント ランスは唐破風ではなく千鳥破風。平入りの脱衣所棟の屋根には、飾りの千鳥破風が載る。ダブル 千鳥破風。大型の団地を擁していたので、間口が広い豪壮な銭湯だ。雨の中、コンクリの煙突は、 うっすらと黒煙を出している。

2段ほど階段を昇る。暖簾はない。エントランスは広い。旧型さくら錠の下足箱に、ミツウマのゴ ム長を押し込み、横にある傘入れに傘を差し込む。

番台への扉を開ければ、前面がカーブした木目プリントの新建材を張った高い番台。ステテコ姿に 白髪の、ゴルゴ13といった風貌の大将が鎮座している。伝統的な風呂屋の親父という出で立ちに畏 敬の念がこみ上げるほどだ。

脱衣所の広さは幅3間半、奥行4間ほどと広い。天井は木目調の簡素な天板と手斧で削ったような ハーフティンバー調の桟が男女湯を跨ぐように渡されている。

ロッカーは、外壁側と、中央寄りに島ロッカーが1つ。何れもアルミ板鍵のSakura-2錠。その他、 旧型マッサージ機、ゴツいタイプのTANAKAのアナログ体重計、稼働していなかったものの、大黒柱 に「飯高工務店」とある黒柱時計。飯高工務店は、今年亡くなられた飯高作造氏が率い、数々の伝 統的木造銭湯を建てた工務店だ。。。

広い脱衣所に余計なものが一切なく、広々している。天井からは懐かしい天井扇からの風。小石タ イルの濡れ縁の向こうに、池に水はないものの立派な庭があって、風か流れ込んで来る。客が余り に少なく、兵どもが夢のあと。雨音もあって、風情と無常がないまぜになった感覚をおぼえる。

浴室は、幅3間半、奥行5間というかなりの大型。天井は木板張りの2段型で、濃淡2色に塗られ たブルーには1点のくすみもない。

島カランは2列で、カラン数はセンターから8・7・7・7・7・6。床のタイルは、ピンクとオレンジ 色の中間の色調のもので、ホタテ貝のような柄のタイルが4枚1組で1つのデザインを構成するも の。あまり見かけないデザインだ。

浴槽は、奥壁に接して3槽。センターから、白濁かつ濃厚な草津の湯の花のハップ湯。中央がバイ ブラ、外壁側の主浴槽が2穴ジェット×2。井戸水の薪焚きだろうか、湯温はいずれも42度くらい。 柔らかい、いいお湯だ。

ビジュアルは、残念ながら奥壁にはペンキ絵はなく、煉瓦色の装飾材に”マリメッコのウニッコ” 調のコミカ風呂的な装飾があしらわれている。そして、幅5間にも及ぶ男女境には、富士山のモザ イクタイル絵。中央、湾の向こうに富士山があって、松や海鳥が飛ぶ絵柄。よく見る定番だけど、 大きいこともあって違って見える。

上がると、番台が白髪のゴルゴ13の大将から、きっちりとキメている女将&ポメラニアンに変わっ ていた。常連客によって男湯側から顔を出したり、女湯側に行ったりと”看板犬”が板に付いてい る。男湯でも、帰り際、犬の頭を撫でることを楽しみにしている客がいる。ポメラニアンも嬉しそ うな顔で応じている。看板犬としては、かなりの営業力だ。

上がりは、20円の旧型マッサージ機を使いながら、名古屋牛乳のロイヤルトップ120円。そして、 再び、雨音とともに風を聞く。

かなり雨が強い、土曜日の18:40から19:20に滞在。相客は5、6人ほど。ペンキ絵が無いのが寂し かったものの、大きくて清潔な銭湯。タカラ湯さんによれば、白髪のゴルゴ13は、銭湯華やかなり し頃の、抱腹絶倒話を持っているとのこと。今度訪れた時には、聞かせてもらわねばなるまい。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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URL: http://www7a.biglobe.ne.jp/~masayuki/ (風呂屋の煙突)
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