差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2005年8月26日金曜日 23:23
宛先: 銭湯ML
件名: 井上浴場(糸魚川市大町)

ナカムラです。

今日(8/24)は、「井上浴場(糸魚川市大町)」に行ってきました。
糸魚川駅(JR北陸本線)から、0.4キロ、4分くらいです。

糸魚川には10軒の銭湯があったらしい。女将が嫁いできた34年前には6軒。2年前に1軒廃業し同湯が糸魚川最後の銭湯となった。同湯は明治41年創業。

糸魚川では昭和7年に614戸を焼失する糸魚川大火があり、同湯もその時に焼け、現在の建物はその際に再建された昭和7年築のレトロ銭湯。表の通りは加賀街道。豪雪地帯の名残で、雁木造りの商店街が続いている。

隣はそば屋、その隣は、加賀藩前田家御用達の本陣を勤めた造り酒屋。それ故、越後にありながら三代藩主前田利常が命名した「加賀の井」を造っている。加賀の井は新潟県最古の酒蔵でもある。姫川を背景とした仕込水は美味しかった。同湯の井戸も水質は同様のものだと思う。

さて井上浴場。近年付けた看板には「滝の湯」とある。地元の人は「井上」と呼んでいるとのことだった。

同湯には雁木はなく、歩道の奥に入口がある。その前に板組みの衝立がある。円弧を描いているのが珍しい。視界を遮るのはもちろんだけど、冬季の風雪を遮る目的もあるのだろう。

中に入るとコンクリのたたきがあり、番台下に下足棚があるのみ。
番台に座っているきりとした顔立ちの女将に370円を渡す。
後ろには、地方銭湯で見る小さな冷蔵庫に牛乳が入っている。恐らく地元牛乳なんだろう。

脱衣所は2間四方。天井は見たこともない堅牢な造りになっている。板、梁とも頑丈な材で組まれている。現在は雪も少なくなり、除雪もされる。しかし、冬は向かいの家が見えなくなったという、豪雪地帯ならではの造りになっている。

床は籐敷き。脱衣かごと、壁側には錠なしロッカー。アナログ体重計は「NIHON DORYOKO LTD」という初めて遭遇するもの。

浴室は、幅2間、奥行3間。天井は緩やかはカマボコ天井で、中心部に長方形の湯気抜きがある。
カランは外壁側に7、奥壁に3、男女境に3。赤青のレバー式のもの。

床、カラン周りとも全て3センチ角の古風な白タイルで組まれている。古くて汚れが目立つ白タイルが、丁寧に清掃されていて、清潔感が高い。

カラン台が変わっている。石鹸箱が横にやっと置けるくらいの幅、8センチしかない。狭さではマイベストワンかも知れない。そんな細いカラン台が垂直ではなく下にいくほど少し奥に引っ込んだ凝った構造になっている。

浴槽は男女境の真中に半円の浴槽が設置されていて、真中が幅のある仕切りで区切られているもの。浴槽の縁も垂直ではなく、カラン台のように、上部が広がっているという初めて見る構造。恐らく施工にはそれなりの技術を必要としただろう。華奢ながら華麗な感じがする。白と黄緑タイルのシンプルな組み合わせも気品がある。

浴槽はただ42度くらいの湯が満たされているのみ。一切の仕掛けはない。センターには岩風呂風の炊き出し口。センター奥には、陶製の獅子口があるけど、現在は使用されていないようだった。

レトロ感溢れる脱衣所。どことなく洋風な浴室。ともに清潔。
北陸・糸魚川の最後の一軒。
街並みとともにいい湯だった。

もう一軒の酒蔵(池田酒造)で「謙信」の純米吟醸を買う。本当は純米酒がいいがラインナップには無かった。
紙コップを下さいというのは少し恥ずかしい。










雁木造り


井上浴場向かいの旅館











謙信・池田酒造