伊勢藤 (新宿区神楽坂) 2008.04.09.

なんとかヤマを越えて首が繋がった感じ・・・。

ホッとして、神楽坂・伊勢藤に向かう。 花冷えというのか、少しだけ肌寒い。

「伊勢藤」には10数年前に一度、訪れたことがある。 禅寺のような枯れた雰囲気に気圧され、徳利1本で、逃げるように帰ったのを憶えている。 今よりも、ずっと未熟だった。

久しぶりの伊勢藤。 大手町から地下鉄で数分で神楽坂につく。 最初は断られたけど、少し散歩して改めたら、 先ほどは済みませんでしたと丁重に招じ入れられる。

あの頃と少しも変わっていない・・・・。 囲炉裏を囲むように6席のカウンター。「白鷹」の四斗樽。 戦前創業の風格。戦災後、築60年の枯れたたたずまいはさらに渋みを増している。

酒は、ただ燗かどうかだけ聞かれる。 肴は黙っていて一汁四菜が供される。酒は囲炉裏のうずみ火で温められる。

大将は代替わりしていた。でも、禅寺の修業僧・雲水が纏う作努衣を着ている。 小生も社会人の第一歩として寮に入った時には作努衣を持参した。 修業僧の如く、全てにおいて全身全霊を傾けて臨んだ・・・。頭も良くなかったし、要領も悪かった。そうするより、他にやりようが無かった。

営業先では、断られても、断られても、断られても、ベルを押した。
何を信仰しているわけでは無かったけど、
客先でどこぞかの信者から、小生が深い信仰を持つ者と誤解された・・・。

20年近い歳月か、酸いも辛いも味わってしまった経験からか、 あの日逃げ帰ってしまったこの空間に自然に溶け込める。
隣の50半ばのおばはんや、若い大将と軽口を聞きながら、酒を飲むことができる。

「国宝」と呼ぶ人もいる居酒屋の至宝。
いろんな居酒屋を巡ってきたけど、やはり、日本の至宝と呼べる居酒屋だと思う。

杯が過ぎたので、熱海湯の前まで行ったけど、今日は止めにした。