石川湯（呉市宮原)

差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2006年9月18日月曜日 8:30
宛先: 銭湯ＭＬ
件名: 石川湯（呉市宮原)

ナカムラです。

今日（9/13）は、「石川湯（呉市宮原）」に行ってきました。
呉駅（ＪＲ呉線）から、２．６キロくらいです。

今日は、雨が降ったり止んだり。そんな中、遊郭があったとされる朝日町、吉浦町を散歩し、その上、赤ビル温泉、大正湯跡、呉一の湯、桃湯、都湯、大国湯、神原湯と回って、最終目的地である石川湯へと向かう。

宮原町は、呉の造船所を望む山側に、１丁目から１３丁目まで細長く延びている。海側には、戦艦大和を建造した旧海軍工廠を引継いだ、石川島播磨重工の造船所があって、どこからでも海と巨大なクレーンが視界に入る。宮原地区には、４、５軒の銭湯があったようだけど、今残っているのは、神原湯と石川湯だけだ。廃業した銭湯については、建物も残っていないらしい。

神原湯は、破風屋根、黒瓦の正統的なレトロ銭湯。内部の造作も見所が多かった。㈱中元本店の｢トビキリ　特選　ラムネ｣を賞味しながら拝見させていただいた。神原湯から同湯までは、アップダウンのあるバス通りを、ジグザグに１キロくらい南下する。すると、道の傍らに同湯の屋根が現れてくる。

同湯は、バス通りから一段下がった斜面に建っている。道からは、黒瓦と湯気抜きが見えるのみ。同湯入口が面している小道は、細い急坂で、向こうには、やはり造船所の大型クレーンが見える。呉らしいというか、どこか尾道的な光景だ。

同湯を来訪する目的は、浴場組合のＨＰに、同湯の浴室、浴槽が石造りであるとの紹介があったため。歴史ある銭湯との期待が高まる。

入り口は改装したのだろう、屋根は黒瓦であるものの、ファッサードは白いパネル張りでやや拍子抜け。しかし、同湯の躯体は、旧海軍施設ように高級な赤煉瓦ではないけど、黄土色の土の煉瓦を積んだ珍しい構造になっている。

暖簾を掻き分け、ドアを開けるとコンクリのタタキに、木目調プリントの新建材を貼った高さのある番台が立っている。大相撲中継に熱中している三代目に３７０円を渡す。

番台の横、入口方向の壁にはＫＩＮＧ錠の下足箱。脱衣所の広さは、幅２間半、奥行３間。壁は木目調プリントの新建材、天井も何とわない合板が使われている。床は紅白の塩化ビニルのタイル張りで、その上に安物のカーペットが敷かれている。

ロッカーは、外壁側にあって、錠はＫＩＮＧ錠。その他、ONO SCALEのアナログ体重計、フジの旧型マッサージ機、冷蔵庫などがある。ONOの上に｢千葉｣とあり、千葉の会社であることを知る。冷蔵庫には飲料が無く、寂しい感じがする。

浴室は、幅２間半、奥行３間ほど。天井は、真中に大きな湯気抜きがある。そのほかは、白いペンキ塗りの板張り。歴史を感じさせる造りになっている。壁は、３方とも白タイルが使われている。恐らく、戦前からのものだろう。

カランは「宝」のレバー式のものが、外壁側に５、センター側に中腰で使う、間隔が狭いものが５ある。

床は花崗岩張り。傾斜があって真中に洗い湯が集まる仕組みになっている。やはり、タイルと違って、独特の足ざわりだ。

浴槽は、男女境と奥壁に接して、幅１間、奥行１間弱の石造りの浴槽。客は小生１人ということもあるけど、この上ない清澄な湯が満たされている。浴槽の中に赤錆た鉄管が延びており、そこから湯が供給されている。温度は４２度くらい。重油焚きと考えてもやや硬いお湯と感じる。呉の古い水道施設のから供給される水の硬度が少し高いのかも知れない。

さらに、外壁と奥壁に接するかたちで副浴槽があって、バスクリン色の薬湯がある。湯船の縁の高さの半分くらいしか湯が入っていない。身体を沈めると、何だか自分の家の風呂に入っているような感じがする狭いものだ。

ビジュアルは奥壁の上部にペンキ絵がある。女湯が夕暮れの富士山で、男湯は農村を流れる川の光景が描かれている。絵柄は異なるけど、｢三和自動車学校｣と神原湯と同様の広告が入っているし、同じ作者の絵なのだろう。

浴槽が石張りである部分のほかは、昭和中期の雰囲気が干乾びて残っているという感じがする銭湯だった。
でも、石造りの浴槽はやはり存在感を発揮している。スーパー銭湯などで、設置しているところもあるけど、それとも趣きが異なる。この浴槽に入ってきた人々の歴史が影響しているのかも知れない。戦艦大和建造に携わり、一日の終わりに同湯に浸かった人もいるはずだ。

上がりは、飲み物が無かったので、バス通りの途中の酒屋の自販機でキリンクラシックラガーのロング缶３００円を調達。しばし、夕暮れの風景、造船所やその向こうの海を見ていた。

水曜日の１７：３０から１８：００までの滞在。客は小生のみ。隣湯の神原湯にも客はいなかった。ここ呉でも銭湯を巡る状況は厳しいと感じる。

途中でタクシーを拾って、呉駅へ。福山経由で鞆の浦まで行って宿泊する予定。そこには、鞆の浦温泉がある。

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ナカムラ　（Masayuki Nakamura）
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