差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2014年11月30日日曜日 7:31
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 金沢浴場(新宿区新宿7丁目)

ナカムラです。

今日(9/5)は、「金沢浴場(新宿区新宿7丁目)」に行ってきました。東新宿駅(都営大江戸線等)から、0.6キロ、8分くらいです。

丸ビル1階のホールで、Jazzin藝大をやっていた。会社のスケジュール表に入れて気にかけていたもの。最後の部分を聴くことが出来た。タイトルからして学生のJazzバンドかと思っていたらMTLTAや京都を拠点に活動する藤井美智という女性とトランペッターなどの共演だった。丸の内という場所柄かも知れないけど、芸大出身アーティストによる上品な感じのミニコンサートだった。

さて、東新宿駅近くの金沢浴場へ向かう。「東新宿駅」や住所の「新宿7丁目」と聞いて、東京の人でもどの辺りか捉え辛いのではないだろうか。大久保駅(総武線)、新大久保駅(山手線)から真東に暫く進んだ環状6号線の都心側。大きく言えば新宿駅の北東にあたる。昭和53年までは「東大久保1丁目」、「2丁目」という町名だったようだ。

地中深い東新宿駅で降りて地上に上がれば、懐かしい光景が有った。すぐ近くの都立高校に通い山岳部に所属していた。駅前の大久保通りをランニングし、駅至近の三徳(本店)やコープ戸山店では山行に携える食糧の買い出しを行っていた。

江戸時代この辺りは尾張徳川家の広大な中屋敷だった所で、その後は近衛兵や陸軍施設が集積していた。山岳部時代、歩荷訓練をしていた「箱根山」は、現在でも山手線内で最も高い標高になっている。かつての回遊式庭園の築山だ。その後陸軍戸山学校の校地などになり、今も陸軍の将校倶楽部や軍楽隊の演奏場所の遺構が残っている。

同湯へは、いわくあり気な「椎の木坂」を下って行く。歩道を幾度もランニングしたけど、こんな小さな坂は視界にすら入っていなかった。まして、坂下の窪地にある金沢浴場を知る由もない。

屋号からすれば石川県出身の方が始めた銭湯なのだろうか。おそらく戦前派の銭湯、昭和22年の航空写真に伝統的木造銭湯の姿を見ることが出来る。

現在はコンクリート造の3階建て。建物のデザインから察するに昭和40年代の後半か50年代の初頭位に建て替えられたようだ。創業時は”郊外”だったのだろう、敷地は広く、大きなマンションの1階と、2階の一部に食い込むように、天井が高い”銭湯”が組み込まれている。

窪地の路地には同湯と2軒ほど先の理髪店だけが歴史を引き継いでいる。建物は古くはないけど、郷愁を感じる紛れもない昔ながらの横丁の路地だ。

自販機が並ぶ短い通路の奥に、屋号を白く染め抜いた紺地のオリジナル暖簾が下がっている。暖簾をかき分けて中に入ればカナリヤ錠と松竹錠混成の下足箱。レトロ銭湯の象徴と理解しているカナリヤ錠が、古くはないビル銭湯にあることに意外感を持つ。そして期待が高まる。

自動ドアを開ければ、至近距離で正面がいきなりの対面のフロント。俳優の誰だかに似た方が詰めている。

脱衣所は、3間四方。この部分には2階が載っているので天井は1間と1/3くらいしかない。ロッカーは、半身の島ロッカーが縦置きに1つ。3段だけでなく縦長の2段のロッカーが、アルミサッシの外壁側以外の場所に細かく分散して置かれている。男湯だけは予めフロントで選んだ鍵のロッカーを使うことになっている。ややお行儀が悪い客が多い銭湯の特徴でもある。

その他、新型のマッサージ機、KeihokuHakariの体重計などがある。張り紙もいくつか。入れ墨客お断りの張り紙がかなり具体的で「ご理解頂けない場合は即座に110番通報いたします」とあった。となりは歌舞伎町二丁目に接しているので、そういった方々の来訪とトラブルも多かったんだろう。

浴室の広さは、3間四方で天井高は最高部が3間弱、外壁側が2間の山型のプラ板張り。窪地ゆえに湿気がこもるようだ。清掃し辛い上部に行くに従って黴のくすみが濃くなっている。そして、大きい空間の割に蛍光灯6本というのが少ないのか、明るくはない、湯治場を思わせる雰囲気がある。

島カランは1列で、カラン数はセンターから5・3・3・4。床のタイルは薄いベージュ色の足触りのいい厚手のもの。

浴槽は奥壁に接して深浅2浴槽と、樹脂製ながら竹囲いがある和風石張りの浴槽が並ぶ。温度はいずれも42度弱から42度強とやや温めの設定。浴槽の内側にはミネラルの付着が見られる。同湯の湯は全て井戸水で賄われている。燃料は廃油。すっきりとした中にも柔らかさを感じるいいお湯だ。

金曜日の20:25から21:15に滞在。相客は6、7人ほど。五月雨的に客がゆっくり入って来ては、ゆっくりと出ていく。ややほの暗い浴室と井戸水を沸かした優れた湯質。どことなく湯治場の風情を感じさせる銭湯。言葉を発する人が皆無なのが印象に残った。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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      高校山岳部時代の山行の食糧調達先だったサントク。昔はもっと薄汚れた小さなスーパーだった。




付近一帯は旧尾張藩戸山屋敷があった辺り。この椎ノ木坂(砂利坂)を下った所に金沢湯はある。窪地で何だか湿った感じがした。
いつの頃なんだろうか、昔の砂利採取地だったこともあるらしい。





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