差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2008年4月20日日曜日 10:31
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 金平浴場(千葉県香取市佐原)

ナカムラです。

今日(4/18)は、「金平浴場(千葉県香取市佐原)」に行ってきました。 佐原駅(JR成田線)から、0.8キロ、10分くらいです。

大型の低気圧の通過で荒れ模様の天気。昼頃まで各方面の列車ダイヤが乱れていた。風雨の夜 に、知らない町で銭湯を探すのはしんどい。しかし、総武線の快速電車に乗って佐原に向かう。

東京駅から2時間ほど。時間的にはさほどではないものの、佐倉で成田方面へ分割されたグリ ーン車を追い出されて、鹿島神宮行という、どこに行っちゃうのという4両編成の車両に乗り 換える。案外に混んでいて立っている人も多い。雨は上がったようだけどドアが開く度にかな り寒い。いくら寒くても基本的にOKなんだけど、イメージしていた気温と違うと堪える。防寒 に対してはテキトーな準備しかない。念のためとコートを持参してきて良かった。これが無か ったら、凍えて街歩きどころではなかっただろう。

佐原は利根川の水運で栄えた小江戸の面影が残る土地。築100年にならんかとする金平浴場に 浸かって、これも明治時代に建てられた「木の下旅館」という船宿を発祥とする和風の木造旅 館に泊まる。もちろん、いくつもの酒蔵がある土地、佐原の地酒をどこかの居酒屋で頂くつも りでいる。

20:00過ぎに佐原に着いた。まさに地方都市という趣き。駅近くには自己破産した地場百貨店 「清見屋」が大型の不気味な閉鎖店舗として景観を乱している。ほかにも空き家な感じの建物 が多い。夜になってから知らない街に降り立って歩くのは怖いものだ。風が無ければまた違っ ていたかも知れないけど、今日は気温が低い上に轟々と風が強い。

さて、金平浴場。 駅からは離れているけど、銚子街道沿いに発達した旧佐原町の中心部に近い。旧千葉銀行や旧 三菱銀行の洋風や煉瓦造の建物が残っていたりする。また、同湯のある通りは、既に微かな面 影を残すだけだけど、「茶花(ちゃんか)通り」という、街路形が馬蹄型になっている佐原の花 街だった一角で、近くに見番などもあった土地柄だ。

小さな湯気抜きがある黒瓦の建物に油井型の煙突。エントランス部はやはり黒瓦の千鳥破風で、 両サイドには上品な画風の福二画のタイル絵が有る。暖簾を潜った小さなスペースはウッディ でレトロなものだ。だからだろう、佐原のおかみさん会が主催する「佐原まちぐるみ博物館」 の木札が掛っていたりする。

番台への戸を開けるとコンクリのタタキに小さな番台。窮屈そうに番台に入るご主人に風呂銭 300円を渡す。全国的にも安い部類に入るだろう。

脱衣所の広さは幅2間、タタキを含めて奥行き2間半といったところ。天井高は1間半程度で 押し縁天井になっている。

下足箱と脱衣ロッカーは並んで外壁側にある。錠はいずれも「冨士錠」と「FUJI」。多分、 「かつて」。鶴見市場にあったメーカーで神奈川県の歴史ある銭湯で遭遇する錠だ。千葉県銭湯 のビギナーではあるけど、千葉県北東部の銭湯で遭遇するということに意外感がある。

名古屋銭湯的に扉にガラスが嵌められている脱衣ロッカーは使われていない様子で、ご常連の 湯道具置き場になっている。なので、主力の脱衣籠を用いる。現役の脱衣籠には現役ゆえの艶 がある。同湯の籠は艶だけでなく張りもあるしっかりとしたものだ。

脱衣所には、その他に飲料販売の冷蔵庫、Keihokuのアナログ体重計、旧型マッサージ機、木 製ベンチなどがあるだけ。シンプルな脱衣所だ。

浴室は幅2間、奥行3間半。天井はフラットで高さは1間半ほど。男女湯それぞれに長方形の 湯気抜きがある。

島カランは1列。カラン数はセンターから5・4・4・0。外壁側にカランはない。タイルは 昭和40年代に入れ替えたという感じ。ややレトロという感じで、この建物の古さに追い付い て来た感じで馴染んでいる。何かいい感じの浴室。何がどうということはないけど、郷愁の世 界が広がっている。

浴槽は深浅2槽。浅槽は溶岩の焚出し口から湯が出ているので42度くらいにこなれている。 唯一の相客の高校生と二人で入るとギリギリだ。深槽の方が大きいけど、入るには置かれているかき混ぜ棒で湯揉みする必要がある。しかし、かき混ぜてもオーバー45度くらい。少し入 っただけで全身が真赤になる。

浅槽に浸かりながら相客の高校生と暫く話をしていた。なかなかの好青年。週3、4回やって 来るという。棒高跳びでは全国14位の記録を持つ。ただ、練習中の骨折で今年の試合無理だ ろうろうと。肘を見せてくれたけど、恐らく複雑骨折。胸が痛んだ。痛いのは無論、長期間の リハビリで精神のバランスを保つのは大変だ。

「ウチ、先に上がります。」あくまで、礼儀正しいヤツだった。うまくこの試練を乗り切ってほ しいし、将来の糧にすることを願った。

ビジュアルは、奥壁に丸山氏のペンキ絵。幅が狭い銭湯なので男女境・奥壁・外壁とコの字型 に描かれている。L字型はよくあるけど、コの字は初めての遭遇かも知れない。絵柄は「16. 9.1(潮岬)」。この絵柄にはほとんど遭遇しないけど、師が描く燈台のある絵はなかなか素 敵だ。そして、男女境に富士山の淡い色調の上品なタイル絵。これも九谷の鈴榮堂の福二画な のか。下部の1/4くらいが鏡に隠されて見ることができない。ここに落款が隠れているのかも 知れない・・・。

強風注意報が出るような荒れ模様の寒い金曜日の夜。21:30から22:15に滞在。相客は3人 だけ。

覚悟はしていたけど、来る途中の赤提灯系の店はすべて営業時間を終えていた。同湯近くの酒 屋も自販機のみになっている。諦めて宿に赴くとその隣が居酒屋だった。地元消防団の宴会と いうこともあるけど混んでいる。

若い店主に、隣の木の下旅館の客で門限まで30分しかない旨を告げる。 佐原の吟醸酒をぬる燗で2合、手造り豆腐の冷奴、もつ煮込みで2500円。慌ただしかったけど なかなか雰囲気のいい店だった。カウンターに座る客層もいい。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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木の下旅館・「手榴弾消火器」


古い電話室





小野川河畔の木の下旅館。
以前は付近では一番大きい船着き場で、船宿からスタートしているらしい。



福二画のタイル絵