差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2005年6月19日日曜日 20:24
宛先: 銭湯ML
件名: 箱根底倉温泉・函嶺(神奈川県足柄下郡箱根町底倉) 〜旧函嶺医院

ナカムラです。

今日(6/18)は、箱根七湯の「底倉温泉・函嶺(神奈川県足柄下郡箱根町底倉)」に行ってきました。
宮ノ下駅(箱根登山鉄道)から、0.5キロ、10分程度です。

登山電車は、「あじさい電車」の季節。沿線には約1万株の紫陽花があると車内放送があった。夜はライトアップされているらしい。

さて、「函嶺」。レトロな駅舎の宮ノ下駅を出て、奈良屋旅館跡(更地になっていた)、富士屋ホテルの前を通り、高さ数十メートルはある八千代橋を渡り、その橋のすぐ袂にある。
函嶺は、関東大震災直後に建てられた、旧函嶺医院の建物を転用。受付は、かつての外科の処置室だし、その他、受付の小窓や内科の診察室も残っている。

函嶺の入口に、大正10年に高山園蔦屋旅館の店主が、小松崎茂寿翁を顕彰した古い碑が建っている。
碑文によれば、旧函嶺医院は、明治17年に東京の刀剣商小松崎氏が滞在中に病気に罹たっことを契機に、同氏が福井県より初代岡島行光氏を招聘し開業したもの。
富士屋ホテルの主治医や、箱根の山間地の赤ひげ先生の役割を担ってきた。

しかし、不幸にも三代目が、昭和36年に往診中にオートバイとの交通事故に遇い廃業した。
その後、病室を転用し、酒・醤油組合や伊勢原の向上高校の保養施設として使われ、平成11年から現在の日帰り入浴施設になっている。
三代目が事故に遇った時に、まだ中学生だった息子は、その後医師となり、その息子も現在医師になっている。
つまり、岡島家は五代続く医師の家系。
三代目の奥様である、女将はそんな話を淡々と語ってくれた。

日帰り入浴施設は、石垣に岩煙草が自生する階段を下り、洋館とは別棟にある。
かつては病室棟があったというから、それを壊して造ったものかも知れない。

木々で遠望は遮られているけど、蛇骨川の河床から数十メートという絶壁の上に、露天風呂(淀君の湯)がある。
円形の浴槽が掘り込まれ、源泉が大量に掛け流しされ、どんどん溢れている。
源泉(底倉温泉 村第106号)は、72.4度。それに加水し、温度は42度くらいにしている。

透明、無味、若干の硫黄臭を感じる。
最初に相客があったものの、後は貸切状態、緑と川音の中で、とても落ち着く空間がある。

湯河原温泉の「中屋旅館」では、夜に高温の湯を張り、朝にようやく入浴可能となるという仕組みだった。
同館は、かけ流しで供するため、加水している。
どっちがいいのかな。
入る人が少ないならば前者。そうでなければ、後者か。

日帰り入浴のみだと700円。素泊まりも受け入れていて4500円。
小生は、洋館も堪能したかったので、泊まりで滞在。その場合は内湯も使用することができる。
泊まり客も、どうやら小生一人だけらしい。経営的に大丈夫かな・・・。土曜日は、名だたる旅館は全て満室なのに・・・。

素泊まりのみにつき、夕食がない。楽しみにしていた、富士屋ホテル近くの「鮨みやぶじ」に出かけて、寿司と鯵丼なるものを食べる。
箱根の山中ながら、ここは小田原から20〜30分の距離。小田原と同様に新鮮な寿司種が手に入る。

「鮨みやぶじ」は、主人の人柄もいいし、何より確かな味だった。
値段も素材の割りにリーズナブル。
冨士屋ホテルの泊り客や芸能人も通う、庶民的な有名店らしい。

函嶺の門限は、20:00。
時間を気にしながら、富士屋ホテルのメイン・バー「ヴィクトリア」のカウンターでマティーニを飲む。
10人のバーテンダーがいれば10通りのレシピがあるという、ジンとドライベルモットをステアしただけの、ベーシックなカクテル。
ここ数年は、バーに行くと、一杯目はマティーニにしている。
同ホテルのマティーニは、老舗のレシピゆえか、クセがないというか、小生には少し落ち着き過ぎる味だった。

全館貸切。翌朝は内湯を堪能。
2間四方の浴室に2人程度の浴槽。混浴なのか、浴室はここのみで、男女の隔てはなかった。
窓外の緑とふんだんに注がれる掛け流しの湯という贅沢なもの。

同館は、チェックアウトは9:00。
何の案内もなかったので10:00までだと思って、ゴロゴロしてたら、女将が呼びに来た。
素泊まりは生まれて初めて。宿帳も書かんかったしなぁ・・・。

底倉温泉。箱根七湯ながら、宮の下温泉郷して一緒に括られ、知名度は低い。
函嶺の向かいにあった、旅館も廃業し、ミサワエステートが展開する「真名井の湯(箱根店)」を建設中だった。
女将も、しばらくすると、この辺りもだいぶ雰囲気が変ると言っていた。

帰り際に、いつまでも日帰り温泉をやっている訳にもいかないので、この洋館のいい使い道がないか尋ねられた。

(注)同湯は、「木賀温泉入口(箱根登山バス)」の真前にある。
   小田原駅東口と桃源台のバスが頻繁に往復していて、小田原から30分くらい。




内湯。貸切につき掛け流しの湯が流れる床に暫く寝転がっていた。


「岡島」の表札が架かっている。


旧待合室。奥が旧内科診療室。


旧外科の処理室





入口


簡素な客室。同館は、いたるところに書画が架かっている。


判りにくいけど、左上が函嶺。深い谷の傍らにある。