江北湯（足立区江北）

差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2010年5月8日土曜日 6:53
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 江北湯（足立区江北）

ナカムラです。

今日（5/2）は、「江北湯（足立区江北）」に行ってきました。高野駅（日暮里舎人ライナー）から、0.5キロ、5分くらいです。

大型連休の2日目。網戸の張り替えやら、不要物の廃棄などの仕事をこなし、夕方に風呂に出かける。自宅からは6キロほど。王子駅を接続地として同駅発着のバスを2系統乗り継ぐか、西日暮里駅まで出て日暮里・舎人ライナーを使うか思案。結局、全行程を歩いていくことにした。

環七東に進み、隅田川、荒川と渡って行く。あまり歩きやすい道でもないし、風景的にもあまり面白くない。ほとんどが殺風景な場所を歩いて行ったけど、同湯近くなると、小さいながらも商店街あったり、昔からの住宅地の雰囲気が感じがする。

同湯は昭和32年あるいは昭和33年築の伝統的木造銭湯。入母屋屋根の平入の脱衣所棟には大きな千鳥破風。その下にはやはり入母屋のエントランス部がつく。何れも黒瓦の豪壮なもの。かなり重厚な銭湯建築だ。改築される前はもっと荒川土手に近い現在セブンイレブンのある方にあった。脱衣所には昭和27年の「入浴者心得」と流麗な墨書で聖武天皇から始まる比類ない「銭湯由来」なる大額が掛かっているけど、これも先代建物からの移設なのかも知れない。

農協脇のアプローチの奥にある。先に記したように重厚かつ豪壮な建物ながら、エントランス両サイドの塀には故早川氏の手による富士山とコアラのペンキ絵がある。内部のペンキ絵は昨年中島さんに描きかえられているけど、元々は早川さんご担当の銭湯だったようだ。

フロントへの入口として「女湯」の扉だけが残されている。その傍らに「→男湯　女湯　出入口」と張り紙がある。これが無ければ、男としては扉に触れることができない。

中に入れば、折上げ格天井の激渋の空間が拡がっている。ロビースペースは脱衣所三分割ではなく、逆Ｕ字型に切り取った形になっている。壁紙が煉瓦模様などのいかにも「紙」という安手のもので落ち着きを欠く感じだ。

フロント回りでは、米、野菜・果物、串揚げのような惣菜、自家製の漬け物、パンや菓子まで多彩なものを売っている。銭湯ながら、湯治場の旅館の売店のような趣がある。日持ちしないものを含めここまで多様な食品を扱っている銭湯を見たことがない。

脱衣所の広さは幅3間、奥行3間半ほど。ロビースペースに割かれた曲線部分にはブロック状でノンブランド錠が付いたロッカー。その部分以外は、思わず唸るほどに焦げ茶色に沈んだイニシエの郷愁空間が広がる。

外壁側にもロッカー。脱衣籠も健在。その他、ネジは巻かれていないものの黒柱時計、フジ医療器の旧型マッサージ機、Keihokuのアナログ体重計などがある。そして、同湯の庭がなかなかいい。池はなく2基の石灯籠と狛犬だけだけど、苔蒸した庭に椿、楓、ツツジなどがある。松などの庭木も丁寧に剪定されている。そして、広い縁側があって、ここで風に当たることができる。湯上がりに清々しい風に当たることのできる銭湯は、少数派になっていると思う。

浴室は４間四方。天井は2段型。おそらく外壁側は増築。島カランは2列で、カラン数はセンターから7・5・5・5・5・6。日曜日の18：30、相客は7、8とまずまずの客の入り。

浴槽は奥壁に沿って、センターから、深槽でバイブラ、2穴ジェット×2の主浴槽、ジャスミンの薬湯槽。微かに濁りのある井戸水を沸かした湯は悪くない。ただ、客が多かったのか多少お湯の汚れが気になった。

ビジュアルは奥壁に広がる中島さんの富士山のペンキ絵。砂浜を描いている絵というのは少数派だろうと思う。砂浜には木舟。海上もに漁船、たくさんのヨット、プレジャーボートなどが描かれている。早川さんが亡くなって3カ月後の7月、早川さんのペンキ絵の上に描かれている。そんな背景が影響しているのかどうか、中島さんの絵としては少し饒舌な印象を受けた。

さらにペンキ絵の下にはエンゼルフィッシュなどの熱帯魚のモザイクタイル絵。男女境には洋風の海や洋館が描かれたやはりモザイクタイル絵がある。

同湯はレトロ系の銭湯には珍しく軟水を使っている。かなりのツルツル感があって、「超」がつくほどの軟水度なのかも知れない。

上がりは、お遍路マップで回っている人へのねぎらいとして女将から頂いたポカリスェット。さらに「赤まむし」。冷蔵庫の側面に牛乳の容量変更のお知らせの張り紙があった。見れば昨年の3月のもので200ＣＣから180ＣＣに変更するとある。時折牛乳を頂いている。昔より丸味があるずんぐりした瓶だとは感じていたけど、分量が減ったのは知らなかった。

上がりの一杯は、バスで王子駅に出て、旧特殊飲食店街だったと思しき一角にある関西風の出汁で野菜のおでんを出す「あがれや」。十条にはない洒落た店でトマトのおでんなどを頂きながら能登・軍艦島に最も近い酒蔵の「宗玄」を燗で頂いた。やや甘めの能登の地酒･宗玄はすっきりとしたおでんには良かった。値段も高くないし、かなりの薄味を厭わない人にはいい店だと思う。

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ナカムラ　（Masayuki Nakamura）
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