差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2012年9月16日日曜日 23:52
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 鯉の湯(江戸川区中央)

ナカムラです。

今日(9/8)は、「鯉の湯(江戸川区中央)」に行ってきました。 新小岩駅(総武本線)から、2.1キロ、25分くらいです。

久し振りに巣鴨のスポーツセンターに行って、ストレッチのレッスンに出て、その後、軽くスイミ ング。泳ぐのはかなり久し振り。浮遊感を感じながら、ゆっくりと泳ぐのは気持ちいい。

その後、新小岩駅に向かう。さほどの本数はないけど、都バスで「同潤会」まで。鯉の湯のある江 戸川区中央2丁目から松江2丁目かけて、付近とは明らかに違って、街路が細かく整備され整然と している。

関東大震災後に、鉄筋コンクリート造の共同住宅(アパートメント)を供給した後、同潤会は各地 に共同住宅よりも低廉な”普通住宅”を供給している。ここ、「松江普通住宅」と呼ばれたところに は568戸ほど造られたようだ。面積も赤羽や十條の2倍近い、大規模なものだ。

夜なのでよく分からなかったけど、街路の形をを除けば、「同潤会通り」「同潤会医院」やバス停に” 同潤会”という名前が見られるだけだった。

目抜き通りの商店街を含め、数軒の下見板張りのかなり古い建物があった。しかし、それが80年ほ ど前のものかというとどうだろうか。昭和22年の航空地図を見ると当地は戦災に遭っていないよう だ。当時の建物が、部分的にも残っているのかも知れないと感じたけど、よく分からなかった。

さて、鯉の湯。そんな同潤会の住宅の北西の隅にある。コンクリ煙突を擁する築57年(昭和32年 築)の伝統的木造銭湯。ファッサードは千鳥破風&唐破風の威風堂々としたもの。町田さんに教え て頂いたことだけど、唐破風の二羽の鶴と松の懸魚は、群馬の福田さんという彫刻師によるもので、 昭和40年頃まで銭湯に数多く納入されたものという。

入口はバリアフリー化のため、右手の前栽を潰して新しく造られている。暖簾を潜るとSakura-G錠 で下足箱。ただ、すぐ隣にロビーが広がるわけではなく、緩やかでチープな通路を進むと、カーペ ット敷きになっただけで、平格天井の旧エントランスがそのまま残っている。番台裏には章仙画に よる福助のタイル絵。”いらっしゃいませ”と書いてあるのが珍しい。

番台への木製建具の扉を開ければ、伝統的銭湯の典型がある。木組みの番台の雲型の仕切りには簡 素に彫刻が施されている。脱衣所の広さは3間四方。天井は干涸らびてはいるものの折上げ格天井。 男女境の周辺も往時のままだと思う。

ロッカーは、松竹アルミ板鍵の島ロッカーが中央に1つと外壁側にある。

冷蔵庫の上には小型の液晶テレビ。NHKの「プロフェッショナル/仕事の流儀」のスペシャル版で高 倉健を特集していた。ほぼ同世代だろう女将さんは首っ引き。爺な相客もそれに茶々を入れている。

小生、昔から健さんが好きだけど、最近、益々惹かれて行く気がしている。高倉健81歳。いつまで も観ることは出来ない。自身、インタビューで”ここらで話しておかないと”と言っていた。私生 活を閉ざす映画俳優が、そういう思いでテレビ番組に出ている。

渥美清が、亡くなる直前、トラさんの姿でNHKのインタビューを受けていた。病気は進行していた はずだし、やはり私生活は見せない映画俳優の渥美が、敢えてトラさんとは違う姿を晒していた。” スーパーマンは本当は飛べないんだよ”という趣旨の言葉が、今も耳に残っている。

高倉は”まだ何年かやれる”と言っていた。大友柳太郎、大滝秀次、笠智衆・・・。老いても光る 役者がいる。高倉のそんな演技も観てみたい。

いかん、高倉健が出てくると話が逸れてしまう。

浴室の広さは、幅3間、奥行5間ほど。2段型の天井は高く、広く、塗られたペンキは綺麗だ。

島カランは1つで、カラン数はセンターから5・5・5・5。広い浴室ながらカランの間隔はゆったり。 さらに、浴室に足を踏み入れて一番印象深かったのは、使われているタイルのほとんどが無地の白 いタイルだったことだ。床が3センチのイニシエの白タイルだったほか、カラン台は上面も側面も 大版の白タイル。男女境、浴槽の背面、壁などもこのタイルが使われている。照明の明るさもあっ て、なかなか快適な空間が広がっている。

浴槽は奥壁に沿って深浅2槽。深槽は気泡風呂で42.5度くらい。浅槽は2穴ジェット×2。バイブ ラは稼働していない。入ると縁からジェットの流れとともにお湯が外に流れ出す。それほどに湯が 満ちている。薪で沸かした円やかで、すっきりと透明感のあるお湯の良さが強く印象に残った。

ビジュアルは、奥壁に、早川さんの「富士川/平成十八年八月十二日」のペンキ絵。6年を経過して、 だいぶ汚れが目立ってきた。

帰りにトイレをお借りしたら、スイッチの位置が分かりにくかった。トイレに通じる脱衣所の扉の 辺りや、トイレの扉の脇にはない。もとより人感センサーによる自動点灯でもない。なんと拙宅と 同じように、ぶら下がった裸電球の黒い色ソケットから、紐が垂れ下がる方式だった。勝手知って いなければ、このスイッチにまでは手が届かない。。。

土曜日の夕方、18:45から19:20に滞在。相客は4人ほど。本数が少ない新小岩駅北口行のバスの 時間との兼ね合いで少し慌ただしい入浴になってしまった。

新小岩で飲み屋を探して歩いていると、細い路地でチンピラと風俗嬢風が揉めて軽い場外乱闘風。 相方に”よくあることだよ”と言って、気に止めず横を通り過ぎた。案の定、やり取りは直ぐに収 まった。しかし、相方はここは恐ろしい所だと軽く怖じ気付いたようだ。上がりの一杯は、塚田農 場系の居酒屋に入ったけど、見渡すと確かにガラが、高齢化した十条・赤羽と違って、尖っている。。。

※同潤会松江普通住宅について。(まちなみ図譜 文献逍遙)〔pdfファイル〕

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