差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2011年4月16日土曜日 10:24
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 浩乃湯(埼玉県和光市白子)

ナカムラです。

今日(4/10)は、「浩乃湯(埼玉県和光市白子)」に行ってきました。 成増駅(東京メトロ有楽町線)から、1.2キロ、15分くらいです。

今日は都知事選挙。戦前の古い塀や敷地の後方がすり鉢状というように旧軍の射撃場の名残り を残す梅ノ木小学校の周辺は桜が満開。この陽気は投票率にプラスに寄与しているだろう。

十条仲通りのかわなみ寿司でお昼を頂き、南青山辺りを散策。国連大学前のマーケットや花屋 や喫茶店などを冷やかしながら歩く。心持ち外国人の姿が少ないのは気のせいだろうか。。。

表参道駅から副都心線などを使って成増に向かう。ここには大正時代から昭和18年まで「兎月 園」という遊園地があった。東武の根津嘉一郎が造った、ボート遊びなどができる庭池ととも に料亭や映画館、動物園などを併設する行楽施設だった。京王には「京王閣」が、京急沿線に は「花月園」があったように、小林一三率いる阪急の宝塚に倣って、私鉄の各沿線には戦前か らこのような遊園地が存在した。

現在の旭小学校とその北側の一帯(旭町3丁目)がかつての園地にあたる。川が流れ起伏のある 地形にそれらしい趣が残る。現在は川越街道から兎月園へ通じていた商店街に「兎月園通り」 という名が残るだけだ。

坂を下れば、旭町の寿湯。同湯の前は赤提灯街道。1本60円という破格のモツ焼き屋がある・・・。 その街道を進むと東京都練馬区から埼玉県和光市に入り、程なく浩乃湯にたどり着く。

後方に白子川を従え、前は舗装されていない広大な駐車場が広がる。遠くから堂々とした唐破 風のエントランスに、黒瓦平入りで飾り千鳥破風の脱衣所の建物と、コンクリ煙突を眺めた時 には、まさに「荒野の銭湯」という感じがした。こういったロケーションの銭湯には出会った ことがない。

エントランスに足を踏み入れれば、その広さに驚かされる。正面にはMON錠の傘を突き差す式 の傘入れ。左右にはカナリヤ錠の下足箱。上がりかまちはタイル張りによる市松模様。そして、 カナリア錠の銭湯にはいい銭湯が多い。期待が高まる。。。

番台への扉を開ければ、前面がカーブした新建材張りの高い番台。後ろには大入り額や扇型に 大黒様が並ぶ額が5つほども並ぶ。

脱衣所の広さは、幅3間半、奥行3間ほど。天井は格天井ではなく、縦にのみ太い桟を渡した 意匠。中央には丸みがある古いタイプの天井扇がある。

梁などは一見して高級な材料が使われている。しかし、床は昔の小学校の床のように干からび て所々欠け落ちた樹脂製のタイルで、色褪せた赤とグレーが市松模様で組まれている。寒々し く、脱衣所の床材としてはいまいちかな。

ロッカーは、TOKYO錠と松竹錠混成の島ロッカーが中央に横置きに1つと外壁側にある。その 他、keihokuのアナログ体重計、上開きの古い冷蔵庫、旧型マッサージ機など定番のものが並 ぶ。

浴室は、幅3間半、奥行5間。天井は大きく言って2段型。左右に普通に木板白ペンキ塗りの ウィングがある他、前後にも幅が半間ほどの小さなウィング形状の天井がある。

形は、2段型天井の普通の伝統的銭湯の浴室だけど、直ぐにこの建物がただ者ではないことに 気が付く。ペンキ絵が描かれているのは、コンクリの奥壁だ。そして、大黒柱がコンクリであ るのは勿論のこと、奥壁にもう一本コンクリの柱がある。脱衣所の方を振り返れば、梁も柱も 人造石研ぎ出しになっている。

つまり、凸型の構造のうち、高さ2間ほどの下部がコンクリート造という「ビル銭」仕様。ウ ィング部と上部は木板を張った普通の木造になっている。こんなハイブリッド構造の銭湯に遭 遇するのは初めてだ。極めて珍しい銭湯ではないだろうか。

広い浴室に島カランは余裕を保った1列。カラン数はセンターから9・6・6・5。床はピンクが かったグレー厚手の足触りのいいもの。カラン台も風合いのいい御影石調のタイルを使ってい る。清潔だし、なかなか好感度が高い。

浴槽がまた凄い。奥壁と外壁のコーナーに高さ2間ほどの溶岩が積まれていて、背の高さより 上から湯が流れ出る湯滝になっている。御徒町・燕湯や十条・春日湯に小振りのものがあるけ ど、稼働していない。同湯では大きな湯滝が現役で動いている。

手前に張り出した湯滝のある浴槽が主浴槽。緩やかに気泡が立ち上る質素な設備。湯温は43度 はある。その隣が小さなバイブラの深槽で湯温は45度はある。かなり熱い湯だ。井戸水を薪で 沸かしているというけど、まろやかさよりも熱さが勝る熱い湯だ。

ビジュアルは、奥壁に中島さんの富士山のペンキ絵。奥壁の4割くらいが石積みで、おまけに 真ん中に柱が有る。安定した足場が組みにくい上に、柱の上に絵を描くのも大変だ。もっとも、 奥壁を横切る太い配管が絵の一部ということもあったので、プロの手にかかればさほどでもな いのか・・・。

そして、幅5間という長い男女境にモザイクタイル絵。緑山、湖、高嶺、洋館などが並ぶ広大 な絵巻だ。

日曜日の夕飯前の17:40から18:30のゴールデンタイム。小学生だけの兄弟やハーフの娘さん を連れた父娘など、客層も多彩で、ピーク時には10人を超えていた。

上がりは古い冷蔵庫に2本だけ残る牛乳110円を頂く。ハーフの女の子が、ようやく掴まり立 ちが出来るくらいの妹を女湯から抱えてやって来た。どうやら、お母さんと手分けして2人の 娘と銭湯にやって来ているようだ。

後で相方から聞いた話だけど、さすがに同湯の熱い湯に赤ん坊は浸かることができないようで、 三本足の白い髪洗い桶に湯を張って子供を入浴させていたという。白ケロリンだったか分から ないけど、髪洗い桶にはそんな使い方もあるんだと思った。

女将さんと話していると、コンクリの煙突にコンクリの頑丈な浴室。解体しようとするとお金 が掛かり過ぎる。だから廃業もままならなくて、細々と続けているんだと笑っていた。

上がりは、東武練馬駅で途中下車してニコニコ湯手前の小さなレストラン。定休日は火曜日だ けど臨時休業らしく「CLOSED」の看板が下がっていた。結局、駅前の石釜焼きのピザ屋に入っ て、ハートランドのビールとチーズを使わないピザを頂いた。なかなか美味しかった。。。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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兎月園通りで「兎月まんじゅう」を売っている。


喫茶店・不二越(1914年創業/成増)





兎月まんじゅう。少しツブれてしまいました。
大きな栗が入った美味しいものでした。
紅白で、餡も小豆と白あんの2種類。