差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2006年1月22日日曜日 12:02
宛先: 銭湯ML
件名: 寿湯(広島県因島市土生)

ナカムラです。

今日(12/26)は、「寿湯(広島県因島市土生)」に行ってきました。

因島の中心地の土生市街。その中心地には、同湯の焚く、薪の煙が匂っている。
同湯は16:00からだけど、女将は11:00から、寒い日は10:00から、薪だけで仕込を始める。

近づくと、建物の脇に廃材が積まれ、女将が台車に移している。後方の煉瓦積みの煙突からは煙が立ち昇っている。

同湯の建物は、道路と平行に建っている。道路に門柱があって、門灯が点いている。なかなか風情のあるアプローチになっている。暖簾の上には、表札のようなもので小さく「寿湯」と屋号を示している。

暖簾を潜ると、「ハ」の字型に男湯と女湯への扉が置かれている。
開けると、コンクリのタタキに番台。下足箱はなく、番台の反対側に棚だけがある。

釜場作業か、女将はいない。呼んでも現れない。ご常連が、「後でもいいんだよ」と教えてくれた。

幅3間、奥行3間半の脱衣所。2階が載っているので、天井はさほど高くない。大正時代の建物とのことだけど、床は新建材で張り替えられているし、壁や柱は白ペンキで塗られているので、そうは感じられない。ただ、ロッカーが古色蒼然としたものであることと、天井の桟の形状が古めかしい。

ロッカーの扉の裏には、ワーム本舗の古い置き薬の広告が残っている。さらに、ロッカーの奥の板には鏡が張られている。初めての遭遇。広告会社の仕業なんだろうけど、ロッカーの暗い奥壁に鏡が張られていても、あまり実用的ではない・・・。

浴室は、幅3間、奥行3半と広い。天井は四角錘で、真ん中に湯気抜きがある。ブリキにペンキが塗られているけど、結構剥離がある。
壁は、シンプルに白いタイルが張られ、上部には緑のラーメン丼紋様のマジョリカタイルでアクセントを付けている。

ビジュアルは、男女境に古い絵付けタイル絵が残っている。かなりかすれて絵柄は薄くなっている。

浴槽(女将は「湯壷」という表現を使っていた)は、中央、やや男女境寄りに幅1.5メートル、奥行1間程の浴槽が1つ。10年くらい前に造り替えられたもの。バスクリンが入れられている。循環設備は無い。

入ると温いので、カランを捻り熱い湯を投入しなければならなかった。水道水を薪焚きしたもの。バスクリンを入れているせいか、あまり特徴を感じることはできない。

上がると、石油ストーブの前の椅子に女将が戻っている。灯油の燃える匂いは冬を感じさせる。
子供の頃使っていたストーブは灯油だったし、父がよく菓子屋で買ってくれた、肉まんの加熱器も灯油を使っていた。店の人がケースを開けた時に立ち上る湯気、燃える灯油の匂い、肉まんの香り、それらが印象に残っている。今、肉まんはコンビニの主要アイテムだけど、お菓子屋の店頭のような風情は無くなってしまった。

まだ明るいのに、かなり酒に酔った客がやって来た。自ら一物を摘まんで、女将に見せて冗談を言っている。「そんな萎びた物、見たかぁないよ」と、堂々と、軽くいなしていた。ありそうだけど、こんなやり取りに初めて遭遇した気がする。やはり、地方銭湯ならではかな。

今年の冬は、半端じゃなく寒い。土生港から隣町の田熊まで、タクシーに乗って、「大正湯」へ戻る。銭湯のハシゴも何だし、タクシーを使うのもアレだけど、寒いし、今日も尾道の「みち草」で瀬戸内海の魚で一杯やりたいし、岡山まで戻らなければならない。