ナカムラです。

今日(10/19)は、「香藤湯(杉並区高円寺南)」に行ってきました。 東高円寺駅(東京メトロ・丸の内線)から、0.6キロ、7分くらいです。

銀座から移った八重洲の画廊「ツー・プラス」。この時期恒例になった大倉ひとみ氏の個展”海へ To the Bay”を観に行く。今回は神奈川の海辺の風景。画伯は奇しくも小生の写真のスタートとなった鶴見線の国道駅の近くに住んでいたことがあるらしく、往時の生麦の鶴見川の錆朱色の風景画が展示されていた。近年何回かの個展よりも、旧来のように”コク”のある味わいの絵が並んでいて楽しく拝見させて頂いた。

東京駅の喫茶店で一休みし、急に寒くなったので冬物の買い物をして、丸の内線で東高円寺へ。

中野駅から堀之内の妙法寺に通じる、堀之内新道(明治29年開通)という道がある。馬糧商だった関口兵蔵氏が拓いた妙法寺への参詣の道。東高円寺駅から見ると、北東方向の中野に斜めに走り、途中まではニコニコ商店街という商店街になっている。

同湯は、その道沿いに大正12年、第六香藤湯として開業している。戦前のことなので香藤湯がいくつまであったかは分からなかったけど、今年、押上の第二香藤湯が店を閉じて、最後の”香藤湯”になっている。

現在の建物は昭和40年代に改築されたモルタル造の中型の銭湯。ファッサードは大きく改築がなされているものの中型の伝統的木造銭湯。その大きさに、“郊外”だった土地に開業した古い銭湯の名残を感じる。

同湯の向かいは古い木造美容院の廃墟。二軒先には同湯に今も広告看板を出す電気屋や中村理髪店。銭湯を中心に栄えていた雰囲気が今も残る。

恐らく、古いエントランスは前栽とともに撤去され、コインランドリーと、グレータイル張りのエントランスと小さなロビースペースになっている。暖簾はなく、入口脇には”北欧サウナ/香藤湯”という文字が張られている。

下足箱の錠は、プラ鍵のSakura-G錠。自動ドアを通れば、本当に小さなフローリングのロビースペース。今日はパスしたけど、サウナはバスタオル付でプラス300円のようだ。

脱衣所に進むと幅2間半、奥行3間をオリジナルとする空間。しかし、外壁側脱衣所方にフルにサウナ室が食い込んでいるので狭い空間になっている。天井は高く、縦方向の桟を残すものの、壁とともに白を基調としたクロス張りに替わっている。

ロッカーは、サウナ室の側面と外壁側に、メーカーは確認出来なかったけどシリンダ式のSakura-3錠のもの。その他、家庭用扇風機、デジタル体重計、飲料の自販機が置かれている。

浴室の広さは、幅2間半、奥行4間ほど。天井は2段型。内側は木板ではなくトタン張りだと思うけど、隙間や凸凹が少ない精緻な施工に驚かされる。そこに、ペンキ絵と同じ時期とすれば今年の1月に塗り変えたもの。ペンキの肌が微かにグレーを帯びたマットで、やや暗めの照明とともに、この浴室空間の印象を少し独特なものにしている。

浴室内はかなり清潔。湯桶は丁寧にメンテナンスされた木桶。島カランはサワーピンクの大理石紋様のタイルが張られたものが1列で、カラン数はセンターから6・5・5・4。床のタイルはパール色の艶のあるユリ模様の白が使われている。

浴槽は奥壁に深浅2槽。主浴槽であるバイブラの浅槽が、手前に張り出し、広い浴槽面積を確保している。井戸水をガスで沸かした42度弱のやや温めのお湯は優れている。

さらにサウナの手前には大きくはないけど、しっかりとした水風呂がある。当然井戸水だろう、冷たすぎず肌ざわりのいい水が満たされている。

銭湯としての基本性能は高い。細身の大将の拘りをビンビン感じさせられる。

ビジュアルは、2013年1月に描き替えられた”最後の銭湯絵師”中島さんの手によるペンキ絵。見たことがない、湖あるいは川と、緑深い山々が描かれている。特に何も記されてはいないけど、中島さんの故郷の「福島・相馬(2013.01)」らしい。整備された内装のペンキ塗りと緑が濃い風景の絵はかなりマッチしている。一見の価値がある。

さらに絵の下にはアクリルの広告看板が3枚。2軒ほど先の中村理髪店や電気店など、現役の店というのがいい。

上がりは明治牛乳120円。狭いロビーで立って飲んでいると、婆さん3人衆が大きくはないソファの端っこを空けてくれた。

土曜日の20:00から20:45に滞在。相客はほとんど入れ替わりの1人のみ。夕食後の一休みという頃合い。予報通りの雨が降り出しても来たからだろう。第六香藤湯以来の長い歴史を持つ老舗。建物的に見るべきものはないものの、お湯が良くて、清潔。木桶やペンキ絵に拘りを感じる、優れた銭湯だった。

上がりの一杯は、堀之内新道を来た方向とは逆に中野駅方面に北上。飲み屋街の「第二力酒造」という居酒屋に。魚系の居酒屋だけど、既に品切れが多くやや期待外れ。大衆居酒屋の外観ながら少しお高い店だった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
メイン:masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp  
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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                            ニコニコロード(堀之内新道)




                              ニコニコロード(堀之内新道)




















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