差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2004年7月11日日曜日 16:39
宛先: 銭湯ML
件名: 光月湯(台東区入谷)

ナカムラです。

今日(7/9)は、「光月湯(台東区入谷)」に行ってきました。
入谷駅(東京メトロ)から0.6キロ、10分くらいです。

梅雨明け前なのに連日の猛暑。下町につきオープンな家が多い。
通りから、ガラス戸の向こうでパソコンに向っている姿、簾のすぐ向こうでテレビを見ている姿が、視界に入ってくる。
それと、歩いている人が少ない。
年配の人が多く住んでいるからか。単に暑いからか・・・。

さて、光月湯。なんか幻想的な屋号。心を揺さぶられるものがある。
同湯は昭和26年築のレトロ銭湯。黒湯の天然温泉もある。

入口は千鳥破風の黒瓦、なんだろうけど、それを覆い隠すようにチープな新建材のファッサードがとって付けられている。
千鳥破風に何か支障があるのか、いずれにしても風格を落としている。
脱衣所棟も黒瓦のよう。面している通りが暗くて見えにくい。

パンダとコアラの紺の暖簾をくぐると、番台裏の窓が全開。女将の後姿が大きい・・・。
その下に傘を突き差す式の傘入れ。
下足箱は黄緑色の扉に旧型の松竹錠が入る付いている。
なんか、これだけで鄙びた雰囲気がある。

番台への戸をカラカラと開けると、四角い板張りの番台に、やはり大きな女将が鎮座している。400円を渡す。
脱衣所は、かなりレトロな雰囲気を残している。
広さは、幅3間、奥行2間半。
さらに、外壁側に幅7尺5寸ほど増築されている。

天井は折上げ格天井(5×11)。
3枚羽根の古い天井扇が、ブン・ブン・ブンと音をたてて回っている。

浴室もそうだけど、蛍光灯の照明器は高さ2メートルくらいと低い位置で天井からステーで下がっている。
明るい照明器が視界に入り、天井が見えずらい。
まぁ、天井をシゲシゲと見つめる客は例外中の例外だろうけど。

男女境にオール木製の旧型ロッカー(15個)と松竹錠の板鍵のロッカー(16個)。
横置きに島ロッカーが1つ。脱衣籠も現役で10個ほどが積まれている。
男女境は全面がロッカーなので、旧型の木枠に嵌められた鏡は入口側の壁の一部に張られている。鏡が入口側にあるのは珍しい。
鏡の先には小さいながらも植木を置いた庭がある。

その他、HOKUTOWのアナログ体重計、旧型のマッサージ機、洗濯機、木製の大型ベンチがある。
終着駅の待合室が似合うような、この木製の大型ベンチ、なだらかな背もたれのある本当に大きいもの。
大きさと立派さという点で、マイベストワンかも知れない。

浴室も見所が多い。
広さは3間半四方。

天井は2段型だけど、変わっている。
平面の高い方の天井が、全面的に上にカーブし、せり上がっている。
下段のウィングのカーブもかなり急な曲線で落ちている。
一見して高い天井との印象を受ける。
照明器が高低の天井からそれぞれ2器ずつ頭上すぐ上に下がっている。

ここの銭湯を訪問した最大の理由は、正六角形の白い亀甲タイルがあるから。
床は亀甲タイル。男女境側の入浴道具を置く台には竹割タイルもある。
いずれも新しい銭湯では見ることができない。

2つある島カランの形状も類を見ないもの。テーブルのような張り出しが付いている。
これをタイルで行うにはかなりの技術が要るはず。

カラン数はセンターから、6・4・4・4・4・3(1つ故障中)。カラン間の間隔は広い。
メーカーは確認できなかった。旧式の丸いもの。
シャワーはセンターと外側の島カランのみ。

ビジュアルは、男女境に2幅のタイル絵(縦6枚×横18枚)がある。
昭和26年製で、かなり剥げている。「松・牡丹」、「紅葉・鹿・湖・鴨」という絵柄。

九谷鈴榮堂のもので銘は「(塚本)暁舟」。
町田師の『銭湯へ行こう・旅情編』によれば、戦前の帝展に入選したこともある絵付師らしい。

奥壁は早川師のペンキ絵。上州の渓谷の図。

浴槽は3つ。
外壁側に独立した副浴槽があって、これが「天然鉱泉温泉」と表示された黒湯。
何故か、複数の常連客がみな水をドボドボと投入している。
透明度は20センチくらい。蒲田周辺の黒湯と比べると黒色はやや薄い。
温度は温めだけど、柔らかく、黒湯独特の香りがあり落ち着く。

主浴槽は深浅2槽。
浅槽が赤外線ランプ付きのバイブラバス。43度くらい。
深槽は底が見通せる静かな湯面で、温度が44度くらい。

暑い日なので、脱衣所の窓、脱衣所と浴室の戸、浴室の窓が開け放たれていた。
下町ならではの開放感のある銭湯。
脱衣所、浴室とも旧状がよく残っている銭湯だった。


























途中の白水湯。