差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2013年9月21日土曜日 10:35
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 弘善湯(世田谷区下馬)

ナカムラです。

今日(8/2)は、「弘善湯(世田谷区下馬)」に行ってきました。 三軒茶屋駅(東急田園都市線等)から、0.5キロ、分くらいです。

三軒茶屋の飲み屋街を抜けてしばらく行くと、コンクリ煙突にパイプを継いだ煙突が見えてくる。 田圃や畑の畦道が道路になったという世田谷の道路。同湯のある一角も、何でこうなるのかという 複雑な形状をしていている。

表の道路に同湯の門があって、休みの日は閉じているのでエントランスを眺めることが出来ない。 今日は開いていて安堵する。”不定休”の同湯。土曜日に2回ほどやって来て振られた。実質的に土 曜日が定休なのかも知れない。脱衣所内の手書きの掲示板で、逐次休みを知らせる方法だけど、明 日の土曜日もやはり休みだった。

建物は、平入りの脱衣所棟に黒瓦のエントランスが付属する様式。見上げると、脱衣所の屋根の飾 りの破風と、エントランスの破風が重なって見える。

私道の奥なので、エントランスの周りに立派な庭石が置かれているなど風情がある。入口の両脇に はダイヤ硝子がはめられた窓。その桟に宝船が彫り抜かれている。”宝”の文字の代わりに透かし彫 りで家紋が入っている凝りようだ。その窓の下は茶色と黄緑色の艶のあるタイルが市松模様で張ら れている。一見シンプルだけど、なかなかのものだと思う。

暖簾を潜れば、平格天井の空間に旧型さくら錠の下足箱が両サイドに置かれている。番台裏の硝子 窓の桟に、柳・蛙・池さらに傘を差した旅人の彫刻が施され見応え十分。その上の広告看板には、 来る途中にあったスーパーセイフー(現、ダイエー・フーディアム)の名前があり懐かしい。

番台へのアルミサッシの扉を開けると、クーラーが効いて、明るく、清潔で、シンプルな空間。濡 れ縁に通じる凝った木製建具の硝子戸や窓枠が完璧な姿で残っていて息を飲む。木目プリント合板 の番台のおばちゃんの愛想が今ひとつだけど、かなりレベルの高い郷愁空間だ。

脱衣所の広さは、幅3間、奥行3間強。格天井ではなく丸太を割ったものが何本か渡してある。天 板や壁はくすみのない白塗り。この空間に合っている。ロッカーは、中央の縦置きの島ロッカーと 外壁側にSakura2錠のものがある。男女境の鏡に記された、地元の寄贈企業の文字にも歴史を感じ させられる。

その他、男女境上にある大型の液晶テレビ、飲料の自販機、旧型マッサージ機、Keihokuのアナロ グ体重計、洗濯機×2。余計なものはない。池に水は張られていなかったものの、濡れ縁を介し、そ こそこ広い良い庭がある。

浴室の広さは、幅3間、奥行4間ほど。天井は木板にペンキ塗りの2段型。少し、天井が高い印象 を受けた。ウィングの付け根の部分には、老朽化対策で梁の補強がなされている。

島カランは1列で、カラン数はセンターから5・5・5・4。 床のタイルは星型模様のもの。カラン周りのタイルも、ベージュと茶系統の品のいい物が使われて いる。

外壁側に幅1間くらいの増築部分があって、立ちシャワー4機と、何と無料の乾式のサウナ室が置 かれている。元々はスチームサウナだっだようだ。全てがそのまま使われている。熱湯が出ていた シャワーヘッドそのままのスチーム発生機の中にサウナ石が並べられている。

浴槽は、奥壁に接した深浅2槽。ジェットの主浴槽とバイブラの深槽。双方ともに水道を重油で沸 かしたバスクリンのような黄色の42.5度くらいの薬湯が満たされている。

ビジュアルは、奥壁に中島さんの富士山のペンキ絵。端っこの小さな滝以外に”水”は描かれてい ない。前衛の山からの、氏にして珍しい雲上の富士山の絵だ。女湯には24.1.21.の日付とサインが あったというけど、全体が薄く黒い黴で覆われているので、もっと時間が経っている絵に見える。

番台の東京銭湯は100余りになっているという。都心に近い三軒茶屋にあって、同湯はそんな一級 の郷愁銭湯だった。しかし、そんな正統的レトロ銭湯だけど、演歌ではなく、ポール・アンカなど アメリカの黄金の1960年代の音楽が浴室で流されている。しっかり三茶的で、そのアンバランスさ が面白い。

金曜日の20:05から20:55に滞在。相客は4人ほど。周りに洒落たカフェや飲み屋が数多くある土 地柄。年輩客に混じって若い客も出入りする。明るく、清潔で、でもレトロ。なかなかレベルの高 い銭湯だった。

上がりの一杯は、飲み屋街の探索を試みるものの、ビールを欲する身体に猶予はなく、最近お馴染 みになっている「関根精肉店」に吸い込まれた。新鮮なモツがウリなだけに、モツを標榜していな いメニューにもさり気なくモツが使われていて驚く。あまりモツを摂ってはいけない身体だけど、 締めに津山で食べ損ねたホルモン焼きそばを頂いた。B級メニューなんだろうけど、かなり美味だ った。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
メイン:masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp  
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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         番台裏の硝子窓の桟には彫刻が施されている。
        広告にあるセーフーストアはダイエーになっている。


















                               塚田農場系のモツ鍋屋




       商店街の入口にあるちょっと気になる喫茶店セブン




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