差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2013年2月2日土曜日 8:32
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 黒田湯(北九州市八千代町)

ナカムラです。

今日(12/22)は、「黒田湯(北九州市八千代町)」に行ってきました。 黒崎駅(鹿児島本線)から、0.9キロ、10分くらいです。

今日も、天神や六本松の北欧雑貨屋巡り。その途中で、大春湯(祇園)や、自ら”日本一”と喧伝 する三和珈琲店(六本松)などに出会う。

その後、八幡駅に向かった。建築家・村野藤吾は、北九州で育ち八幡製鉄の職工として社会に出る など、八幡との繋がりが深い。今も、駅前に福岡ひびき信用金庫本店、市立八幡図書館、八幡市民 会館という村野作品が固まって残っている。そんな村野作品の探訪。しかし、図書館以外は中に入 ることが叶わず、独特の村野調に耽溺することは出来なかった。

本当は、八幡の中心地だった中央町なども歩きたかったけど、いかんせん日没が17:15と早い。思 い残すものは多々あるけど、昨日に続いて黒崎に移動。黒田湯に向かう。

同湯は、放射状に延びるアーケード街の東側を通る長崎街道を渡った住宅地にある。銭湯と住宅が 横に一体として繋がるやや珍しい構造。昭和13年の築創業。但し、太平洋戦争の戦況が悪化した、 戦時中の5年ほどは休業し、終戦後、昭和20年に営業を再開した。

3段ほどの階段を昇り、コンクリの門柱を通り、エントランスの左側面のドアへとアプローチする。 番台と狭いたたきで構成される凸型のエントランスの正面上部には、右書きの味のある墨書体で「湯 田黒」とある。木枠の古い窓も雰囲気を盛り上げてくれる。

中に入れば、大将が孫娘と低い番台に入っている。相方が料金を尋ねた後、普通に2人分の料金880 円を払う。。。今日は22日。福岡の銭湯では毎月22日に夫婦で銭湯に来た場合、ふたりで500円に するサービスを展開しているようだ。同湯にもポスターがあった。大将としては”夫婦ですか?” と尋ねるのも野暮だろう。こっちも少々歳が離れている。夫婦には見られなかったのかも知れない。

下足箱は、番台と反対側に、蓋がない縦横に仕切られた棚がある。

脱衣所の広さは、2間四方。天井高は2間で、格子が細い簡素な平格天井。

男女境は、ペンキ塗りのイニシエの”板塀”で、それに木枠の古い鏡が据えられている。ロッカー はオール木製。丸籠も現役だ。床がクッションフロアというのが雰囲気を損ねているけど、深い郷 愁の方が勝っている。

その他、日本度量衡機のアナログ体重計、ブラ下がり健康器などがある。

浴室は、幅2間、奥行3間ほど。天井高は2間弱のフラット。中央やや奥側に湯気抜き。壁は古い 白タイルが黄ばんだ姿で、床には丸タイルが使われている。

島カランはなく、男女境に小石タイルが張られた湯桶の台がある関西仕様。そこに6機のカランが ある。外壁側には、立って使う鏡が2枚張られているだけで、カランはない。

浴槽は、人研ぎの重厚な縁取りがある、深浅の楕円型のセンター浴槽。太いパイプに繋がる大型の カランがあって、水道水を主体としたガスで沸かした44度近い熱い湯が轟音とともにどーっと注が れている。この男気ある雰囲気は、どことなく八戸・富士の湯(廃業)に類似している。

湯の勢いと音とは、同湯の枯れた郷愁銭湯たる雰囲気とそぐわない感じがする。しかし、湯気が立 ち込める浴室は、寒い日の客に優しいものだった。手前の温い浅槽には、ネットに入れられた昨日 の柚子が浮かんでいて、後から入ってきた爺が気持ちよさそうにずっと浸かっていた。

ビジュアルは、ない。奥壁の真ん中にある、広告付きの丸い大きな時計がちょっと主張しているだ け。

土曜日の17:35から18:25に滞在。相客は4人ほど。大将は元々銭湯をやっていた人ではなかった。 6年ほど前に女将が亡くなり、サラリーマン35年の大将が引き継いだという。それ以前にも機会は あったのだろうが、2人の息子には継がせなかった。 大将が引き継いでから6年の間、福岡県の銭湯は半数にまで減ったという。同湯は最盛期には1日 に300人もの客があり、大晦日などは札止めの順番待ちもあった。現在はその頃の1割程度の客し かない。厳しい状況が続いている。

上がりの一杯は、同湯の真向かいにある”将”という焼鳥屋。赤提灯ではなく赤い看板が煌々と点 いている。内装は焼鳥の”大吉”そのものだが、価格はそれよりも安く、味もサービスも良かった。 それなりに齢を重ねた大将と、その指示を受ける高校生、ひょっとしたら中学生くらいの緊張した 男の子と女の子が切り盛りするという、あまり見ない布陣の居酒屋で、強く印象に残った。だから という訳ではないけど、焼酎のお湯割を飲み過ぎてしまった。。。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://www7a.biglobe.ne.jp/~masayuki/ (風呂屋の煙突)
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                  黒田湯向かいの焼き鳥「将」




                 祇園・大春湯。パネル張りだけど、古い銭湯だった。




                     村野藤吾設計・八幡市民会館




                  村野藤吾設計・福岡ひびき信用金庫本店




                   村野藤吾設計・北九州市立八幡図書館




                           尾倉歩道橋




                八幡駅。2階以上が駐車場になっている凄い駅。