差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2004年8月21日土曜日 18:47
宛先: 銭湯ML
件名: 黒薙温泉(富山県下新川郡宇奈月町)

ナカムラです。
今日(8/18)は、「黒薙温泉(富山県下新川郡宇奈月町)」に行ってきました。

東京から魚津駅(北陸本線)まで3時間。
富山地方鉄道と黒部峡谷鉄道(トロッコ電車)でさらに1時間という感じ。
かつて山岳部に在籍していた時代がある者にとって、「黒部」は重みのある地域だけど、上越新幹線とほくほく線の開通でこんなに近いのかという驚きがあった。

トロッコ電車に30分弱揺られて、途中駅の黒薙駅。
降りる客は数人でほとんどの客はさらに奥へと上がって行った。
標高600メートル。かなりの山奥だけど、予想に反してかなり蒸し暑い。

トロッコ電車は欅平という終点まで20キロを1時間半かけて行く。
すれ違う電車の乗客は一様にぐったりしている。
遊園地の電車のようなものに往復で3時間乗るのは、景色が素晴らしくともかなり苦痛を伴うものらしい。

温泉へは、トロッコ電車の支線で黒薙第二発電所へ向かうトンネルを進む。
0.3キロほど線路を歩くと黒薙温泉への斜坑があり0.2キロほど下ると温泉。

黒薙第二発電所への工事用車両が入らないとのことなので、温泉への入口を通り越してトンネルの出口まで散歩。
眼下には黒薙川の渓谷と露天風呂、温泉の小屋が小さく見える。久し振りの雄大な景色。

黒部峡谷には黒薙、鐘釣、名剣、祖母谷と4箇所の温泉があるけど、ここが一番古く、発見は江戸時代初期、開湯は慶応4年(1868年)で約130年以上の歴史があるらしい。
黒薙川の河原のいたる所で熱湯が湧き出すほどに湯量は豊富。

ここの温泉の経営は黒部観光開発(株)という黒部地方鉄道(株)の関係会社。
トンネルを主体とした7キロの専用パイプラインにより、下流の宇奈月温泉の全湯量(2400トン/日)を供給している。
地方鉄道にとっては一大収益源と思われ、ここの宿の主目的は温泉宿の経営というよりは、恐らく温泉供給会社の基地のようなものなのかなと想像した。

それほどに湯量は豊富。
源泉温度は96.7度、透明の弱アルカリ泉で少しの硫黄臭、湧出量はあっちこっちで湯が湧き出ているため「測定不能」とある。
飲むと僅かながら塩気がある。
鮮度の高い、しっとりとしたいいお湯。紛れ無く名湯なのだと思う。

風呂は内湯と大小露天風呂がある。
大露天風呂(混浴)は、さっき見下ろした雄大な渓谷にある。
悪くないが、20人以上は入れる大きな風呂につき、掛け流し感には欠けるかな。

一方、「天女の湯」。夜の1時間を除き女性専用だけど、5人くらいの岩風呂へはドボドボと源泉がそそがれ、溢れた湯は黒薙川へ落ちていく。
泊り客も少なく、なんとも贅沢な湯に一人だけ。
夜につき景色は見えないけど、こっちの風呂の方が印象が強かった。

内湯は平成7年の大雨で流された時に改築されたらしい。
石造りの小さな湯船だけど、ここも惜しげもなく源泉が投入されて、湯がオーバーフローしている。
立派なカランがあるけどこれも温泉だった。

湯舟の上に田中冬二の「くずの花(黒薙温泉)」という詩。黒御影石に刻まれ架かっていた。
父の故郷富山の風景を詩に綴った田中冬二。
中学生の時に苦労して詩集を取り寄せたことを思い出した。
なんか、懐かしい人に出会ったような気がした。

涼しいイメージで行ったけど、夜も暑かったのは意外だった。
また、夏はオロロと呼ばれる人の血をすうアブが寄ってくる。
3箇所ほど刺されたけど、じわりと毒が回ってくるようで、何とも痒い。
新緑の頃と、9月、10月くらいがシーズン的にはいいようだ。

東京から交通費は13,000円くらい。
1泊2食付で10,500円(1名1室)。
道路も通らないこんな僻地で食事も食べさせてもらえる。
もちろん、お湯は言うことなし。
なかなか、いい所だった。










大露天風呂


旅館のロビー?


黒部峡谷鉄道 後曳橋