差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2015年4月5日日曜日 0:32
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 草津温泉(甲府市上石田町)

ナカムラです。

今日(11/23)は、「草津温泉(甲府市上石田町)」に行ってきました。甲府駅(中央本線等)から、2.6キロ、30分くらいです。

新宿駅8:00発のスーパーあずさ5号で甲府へ。このあずさ号は、狩人の大ヒット曲に歌われた「あずさ2号」の末裔の特急列車。中央線の下りは数え切れないほど乗ったけど乗車するのは初めてかも知れない。

高尾駅を通過すると、子供の時に父と歩いた裏高尾の山々の風景が過ぎて行く。父27歳で小生が生まれた頃、城山山頂の小さな無線塔の工事をやっていたらしい。小学生の小生にそれを見せたかったのかも知れない。どこを下っても危なくなかったのに、相模湖側に中央高速が通り、山道が寸断されて危ない箇所が多くなったと話していた。

桂川沿いに走る中央線から高速道路を見上げていると、山を削り、橋で繋ぐという難工事だったことが分かる。削られた山肌は今も癒えてはいないんだろうけど、中央道は既に自然に紅葉に溶け込んでいる。暖かい車内でうつらうつらしながらぼんやりしていた。

塩山を過ぎると、初狩駅、甲斐大和駅(初鹿野駅)など連嶺の袂をあずさの快走は続く。かつて500円札の裏に小金沢連嶺から遠望する富士山が描かれていた。裏高尾から始まった山登りの延長で高校時代は山岳部に入部。この小金沢連嶺は本格的な登山を目指すべく身体をいじめ抜いた”トレーニング場”だった。ほとんど人と出会わない山中での強化合宿。合宿を境に同期部員は半分に減ったけど、梅雨時、ドロドロになって下山した時には一回り自分が大きくなった気がした。今日は平和で、ただただ紅葉が綺麗だ。

1時間半余りで甲府着。奥秩父、八ヶ岳、南アルプス、北アルプスへの山行で何度となく通り過ぎているけど、じっくり歩いたことは1回あるかないか。鳥取と同じく駅前の市街地に優れた温泉がいくつもあるというので気になっていた。

かつては正月用品準備の意味合いがあったという甲府各所の「えびす講市」。たまたま朝日町のえびす講市に出くわしてクリスマスリースを購入。そして、廃墟のような「新天街」のバラック飲み屋街、薬屋を発祥とする岡島デパートがある中央町の繁華街、旧穴切遊廓界隈を散歩しながら、高砂湯、都温泉(明治創業らしい)などの”甲府駅前温泉銭湯群”を見て回る。ピークには50〜60軒あったらしい。現在は13軒に減っている。

途中、甲州ワイン、地酒のワンカップを鱈腹仕込んで、今日のメイン、ことさら泉質が素晴らしいとの噂が気になっていた草津温泉に向かった。

昭和初期に群馬県草津出身の方が銭湯「草津湯」を創業。昭和23年に先々代が休業していた同湯を譲り受け再開。昭和40年代後半のオイルショック時に先代が温泉掘削に挑み見事湧出に成功、屋号を「草津温泉」にして今に繋がっている。平成18年には道路拡幅で敷地の一部を取られた。残った三角形の狭小地に緑色の平屋の建物を再建し辛うじて営業を続けている。

加温は不要のようで高砂湯や都温泉に有った煙突はない。相方もわざわざ甲府までやって来て何故同湯を選んだのか不思議がっている。建物という面では被写体として役不足だ。今日はあくまで湯質に拘りたい。

早い冬の夕方が暮れ切ろうとしている頃。あちらこちらから三々五々という感じで車が集まって来る。同湯のエントランスも人の出入りが多い。

スチール製の下足箱に靴を入れ、甲府の銭湯の料金400円とともに下足のキーを渡すと、ロッカーの鍵を受け取る。背中の荷物がロッカーに入るか分からなかったので、相談したらフロントで預かってくれた。

脱衣所は、幅2間半、奥行3間くらい。籐敷きの狭い空間で、リュックも十分入るような大きなロッカーが両面に向かい合っている。簡素なベンチと扇風機、体重計等の最小限の設備だけがある。

浴室は、幅3間、奥行は5間半。天井は最高部が3間弱の片流れ。不正形地につき女湯は隣にはなく男湯だけで独立した空間になっている。女湯は幅のある三角形の底辺側にあるので、浴室の形状も違っているんだろう。

カランは両サイドに8ずつ。細長い浴室の中央に温湯の主浴槽。ガラス窓になっている奥壁に接するように高温槽と水風呂がある。源泉は47度強ということで身構えていたけど、ヒートポンプで加水せずに適温にしているようだ。1日に200数十トンという豊富な湧出量があるため全ての浴槽が源泉掛け流しだ。

主浴槽は39〜41度。高温槽が44〜46度。奥壁の向こうの露天風呂が40〜42度。拍子抜けするほどの心地良い温度。

そして、噂通りの素晴らしい泉質。飲んでみると微かな硫黄とモール臭の中に、やはり微かな塩味がある。淡い黄緑色のお湯に長崎小浜温泉のおたっしゃん湯を思い出した。

三連休の中日の日曜日。17:00から18:00に滞在。相客は30人は下らなかったと思う。温湯、露天、熱湯、水風呂とみんなそれぞれの浴槽を楽しんでいた。

外に出れば遊亀公園の方だろうか、冬の夜空に花火が盛大に上がっていた。今日は甲府のお祭りの日でもあった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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            元々は左の道が旧道のようだ。同湯は道路の切り替えに翻弄されながらも営業を継続している。




  草津湯の上空は航空機が連なるように飛んでいく。航路になっているようだ。










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