差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2012年3月11日日曜日 21:41
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 孫の湯(国分寺市東恋ヶ窪)
ナカムラです。

今日(3/3)は、「孫の湯(国分寺市東恋ヶ窪)」に行ってきました。 恋ヶ窪駅(西武国分寺線)から、0.9キロ、10分くらいです。

相方が、最近なぜか古い平屋の日本家屋にご執心。練馬高野台に気になる物件があるという。会社 が遠くなるのは嫌だなぁと思いながら、池袋駅経由、西武池袋線で練馬高野台駅まで。地元の十条 よりも平和な雰囲気の町だった。家は、まぁまぁ整備された端正な平屋。外観は合格だったけど、 内部はどうなんだろうか。かなり綺麗に手入れがされていたので、内部もその調子で古くはない材 料で更新されているというのが小生の見立て。しかし、相方は今度内覧しなければと少々興奮気味。。。

練馬高野台は、バスで4キロほど南下すれば井荻を経て中央線の荻窪駅に着く。案外に遠くない。

荻窪駅北口の古い商店街の大衆食堂「富士食堂」、ここだったのかぁ喫茶店「邪宗門」、南口のレト ロ洋菓子屋「サンモリッツ」、名曲喫茶「ミニヨン」などを眺めながら散歩する。いわゆる中央線文 化圏だけど高円寺などともまた違う雰囲気。歩いていて楽しかった。

さて、国分寺の孫の湯へ。国分寺に来るのは一橋学園駅(西武多摩湖線)の小平浴場以来。今日は、 国分寺駅から二方面に出ている西武線のもう一方の国分寺線で、隣駅の恋ヶ窪まで行く。

駅を降りたのは、陽が暮れて霧雨が落ちてきた頃。私鉄の1つ目の駅は鄙びていることが多い。こ の駅もかなり鄙びているというか寂れ切っている。駅前なのにいくつもの建物が廃墟化している。

まず、隣が廃墟というレトロ洋菓子店「ロマン」で焼菓子などを調達する。老菓子職人が算盤でお 勘定。裏の材料などを記したラベルは何と手書きだった。。。

予め検索しておいた最短距離を進むと、暗い竹林や雑木林の中を進むことになる。まさに”武蔵野”。 その風情を感じながらさらに進む。

しばらくすると煙突のシルエットが見え”あけぼのパン”の看板を上げた菓子屋のこれまた廃墟。 そこが、孫の湯を中心に広がる小さな”湯前町”。何軒かの廃業店舗とともにうどん屋、赤提灯を下 げる焼鳥屋の「小政」、八百屋、肉屋が盛業中だった。別段近くに商店街があるというわけではない 孤島のような一角だ。

同湯は、昭和40年12月の築創業。千鳥&唐破風の威風堂々とした建物。道路との間には数台の車 を停めることができるスペースがある。付近に高い建物が無いので、コンクリ煙突がひときわ高く 見える。

銭湯業界がピークとなる昭和40年代初頭の少し前の建物。こういった宮造りの伝統的木造の最後発 の建物だろう。立川談志師匠の常湯だった石神井公園のたつの湯に雰囲気が似ている。

屋号を染め抜いたオリジナル暖簾を潜ると広いエントランス。左右に松竹錠の下足箱がたくさん並 ぶ。

番台への扉を開けると、左右に雲型の彫刻が施された仕切板のある木組みのどっしりとした番台に 小生よりも明らかに若い若女将が座っている。”昭和何年頃に建った建物ですか”と聞くと要領を得 ない感じ。”主人が生まれた年ですから・・・”と。それにしても女湯側に視界を遮る衝立などがな い。脱衣所の1/3くらいは見渡せてしまいそうだ。武蔵野の銭湯、地方銭湯のような大らかさがあ る。

脱衣所の広さは3間四方。天井は折上げ格天井。見たこともないような大きな円形蛍光灯の半分壊 れかけた照明器が、4つほど男湯・女湯側に跨って下がっている。島ロッカーはなく、ブロック状 のごつい錠が付いたロッカーは入口方の壁に並ぶものだけ。パン屋やレトロ洋菓子屋のハシゴで荷 物が多く、番台で指定されたロッカーだけでは入らない。残りの荷物は丸籠に積み上げる。。。

丸太を渡した男女境の上には「背景広告社」の看板と”社交場”の(有)牡丹の切々とした口上の求 人広告などが並ぶ。昭和49年、高度成長期に国分寺のキャバレーでボーイやバーテンダーを集める のは大変だったことが分かる。

見所は浴室の上に並ぶ15枚もの”大入”の額。これほどの枚数が並ぶ銭湯を見たことがない。銭湯 の数が最も多かった時、親族の浴場経営者が多かったと解釈したけどどうなんだろうか。

その他、EIKOのアナログ体重計、6個の叩き手がある超旧型のマッサージ機など。広い濡れ縁があ る庭には特別のものは無かった。しかし軒には横に丸太がつるされていて、夏などはここに簾かヨ シズが架かるのだろう。

浴室は、幅3間、奥行4間ほど。天井は2段型。ここまでは普通だ。しかし、内装が凄い。高さ2 間を超える高さまで積まれた岩山が男女境から奥壁の全面にそそり立つ。「岩には絶対に触らないで 下さい」という旨の張り紙があったけど悪ガキなら登らずにはいられない。かつて砧にあった浴場 の写真を見たことがあるけど、現存では同湯が室内の岩風呂の最高峰だろう。

あれ、かつて岩山の中央にあったはずの石灯籠が台座だけになっている。果たして、昨年の大震災 で浴槽に崩落してしまった。営業時間中でなくて良かった。

浴槽は岩山の男女境に接してやや台形のものが縦置きにある。バイブラと3点座ジェット×2。島カ ランはプレーンなものが中央に1列だけど、これも浴槽の縁に沿って、やや斜めに設置されている。 カラン数は島カランに6・1・6。カラン島の鼻(奥壁側)に1つだけあるのが珍しい。さらに、外 壁側に7と、浴槽の脱衣所側に2ある。

お湯は井戸水を重油で沸かしているようだ。相客は、湯に浸かりながら岩山を眺めたり、目を瞑っ て気を静めたりして、汗を流すというよりは、ここで寛いでいる。41度強と少しばかり温いけど、 こういう使い方としては、丁度いい温度かも知れない。

土曜日の19:15から20:05に滞在。相客は10人ほど。子連れのお父さんも複数居た。小さな”湯前 町”は廃墟化が進んでいるけど、まだまだ頑張ってほしい郷愁銭湯だ。

相変わらず霧雨が降っているのと、丁度タクシーが来たので国分寺駅までタクシーで戻る。高円寺 の最終バスに間に合ったのでバスで帰館。。。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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