差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
宛先: 銭湯ML
件名: 間門湯(横浜市中区本牧間門)

ナカムラです。

今日(1/2)は、間門湯(横浜市中区本牧間門)に行ってきました。
根岸駅(京浜東北線)から、2キロくらい。
バスが頻繁に出ているので、東福院前までバスに乗り、降りるとパイプ型の細く赤い煙突が見えます。

初参りは、北鎌倉の円覚寺に決めた。
横浜の銭湯は、2日、正月の特別営業で昼過ぎまでの朝湯をやっているところが多い。
初湯に相応しい銭湯はということで、前から目星をつけていた、第一級のレトロ銭湯、間門湯に決定。

同湯は、震災直後の建物。築80年近くを経過している。
付近は空襲で焼けたが、裏山(今はない)の陰で、そのせいで戦災から免れたらしい。

本牧間門。
今は、埋め立てられて、根岸湾の海は遠くなったけど、すぐ近くは砂浜で、海苔の養殖が盛んだった。
風光明媚な土地で、山本周五郎が仕事場とした「間門園」などの旅館や、ご常連の話では一部花街などもあったらしい。
市電のポイントを通過する音を、夜原稿用紙に向いながら、山本周五郎は「どですかでん」と聞いていたのだと思う。
昭和36年に、この地に来た女将は砂浜に置いた脱衣籠に生まれたばかりの息子を入れ、アサリを取った話をしてくれた。

同湯は、バス通りから、細い路地を入ったところにある。
バス通りに面した前の土地は、古い肉屋が転業した弁当屋があったらしいけど更地になっている。
付近は、マンションが建ち並んでいる・・・。
きっと、同湯の土地も狙われていると感じた。

同湯は、塀がチープなタキロン製ながら、小さいながらも黒瓦を載せた破風造りの入口棟を持つ。「銭湯浪漫」の暖簾が掛かっている。
暖簾をくぐると、写真や飾り物が多い。
天井は結構くたびれた押し縁天井。
下足錠は、斜めに木札を差す式のおしどり錠。

戸を開けると、木組みの小さな番台。
女将に400円を手渡す。
人懐っこい笑顔で、「明けましておめでとうございます」と声をかけられる。

脱衣所は、幅2間、奥行2.5間。
天井は簡素押し縁天井。しかし、角材および天板に節がない。煤けてはいるけど、良質の材で作られたものだと感じる。
簡素な蛍光灯照明器が吊るされているけど、そのシーリングキャップが、藍色の絵付けがなされた陶製のもの。こんなものは見たことがない。

外壁側にはおしどり板鍵のロッカー。男女境のところには脱衣籠も積まれている。
その他、複数銘柄の缶ビールや飲料がぎっしり詰まった縦型の冷蔵庫。
ぶら下り健康器、飾り物も多い。
そして、一升瓶が並んだテーブルとソファがある。

TANAKAのアナログ体重計がある。
???。「本牧湯」と書いてある。
本牧湯が、5月末という予定通よりは遅れたけど、廃業になったことを知る。

浴室は、幅2間、奥行3間弱。天井は2段型。
島カランは、プレーンなものが1列。カラン数はセンターから5・4・4・5。温泉マークが付いた取っ手が付いた丸みを帯びた旧型。
床のタイルもクリーム色の波型の幾何学模様が入った30年代調。なかなか、レトロな雰囲気がある。
桶は白いもので「イーグル観光」「イーグルスポーツ」とのコマーシャルが入っていた。秋葉原の会社らしい。

浴槽は深浅2槽。双方とも黄緑色の入浴剤が入っている。
浅槽はバイブラ。深槽は何の仕掛けもないもの。温度は双方とも43度くらい。

ビジュアルは、男女境に、章仙画のタイル絵(縦4枚×横12枚)。
章仙画では初めて接する油絵調の濃厚な色使い。
湖、薄っすらと雪がかかった背景の山、湖に浮かぶ複数の島には紅葉が描かれている。
ペンキ絵では、秋(=「空き」に繋がる)は描かないと聞いていたので、少し驚いた。

奥壁にはモザイクタイル絵。そのの上には、早川師の和歌山瀞峡のペンキ絵が木板に直接描かれている。
平成16年7月3日に描かれたもの。
陰影のブルーと、紫がかった色使い。なかなかいい絵と感じる。

女将の計らいで、客が途切れた女湯も見せていただく。
タイル絵は、やはり濃厚なタッチで、日光東照宮と中禅寺湖と華厳の瀧。
ペンキ絵は見事な富士山だった。

14:00の終業を待って、女将の手料理と、ご常連が持ち込んだ樽酒で、酒盛りが始まった。
小生も次の用事の有無を聞かれ、樽酒を強要(?)される。
例年のことらしいけど、今年は参加者が少ないらしい。
女将と2人の常連が少し寂しそうだった。

途中で辞去したけど、ビールの後の、コップ酒3杯。
結構、利いた。伊勢左木町で出るバスの中で、頭がグルン・グルンしてた・・・。

本牧間門の名湯だった。
「日の出湯」、「大黒湯」。三渓園近くの銭湯は趣のある銭湯が多い。

老齢のご常連は、マイ檜椅子をキープしている紳士。
ご自宅には、スイッチ1つでお湯が満たされるお風呂。脱衣所にもヒータが入っていて冬でも寒さは感じない。
そんな立派な設備を持ちながら、昨年は1度も入らず、同湯に通ったと。
間門湯にはそういった魅力がある。

























男湯

女湯


男湯


女湯




中区本牧間門(ほんもくまかど) [平成6年9月26日設置、住居表示]

町名の由来
 平成6年の住居表示施行に伴い、本牧三之谷、間門町の各一部から新設された町です。町名は、従前の町名「間門町」に地元要望により「本牧」を冠しました。昭和8年4月1日の町界町名地番整理事業の施行に伴い、本牧町、根岸町の各一部から間門町(平成5年10月18日廃町)となりました。町名は本郷村の小名(こな)「間門」から採りました。柳田國男は「マカド」とはアイヌ語のマカ(開く、開けたる)と、ト(湖水)という二語からでたものではないかといいます。他の地名研究で「マカド」は「崖(がけ)などの急斜地」を意味するといいます。南西側を産業道路(国道357号)が通り、北側を本牧通りが通っています。
(出所)「横浜の町名」(横浜市市民局)より