差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2009年1月4日日曜日 1:06
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 松の湯(広島県府中市府中町)

ナカムラです。

今日(12/14)は、「松の湯(広島県府中市府中町)」に行ってきました。

府中駅(福塩線)から、0.6キロ、6分くらいです。

府中は箪笥や味噌で栄えた土地柄。また2004年3月に廃止されたけど日本たばこ産業の府中工 場があり、その傍らの旧老松町には旧専売公社に葉たばこを売って現金を手にした商人たちを 相手とした老松遊廓があった。

訪れるまで老松遊廓の確かな場所は確認できなかった。府中市の図書館で文献に当たったりし て、やっと旧老松町の遊廓跡にたどりついた。

現在は埋め立てられているが、才田川の見染橋(思案橋)を渡ると幅広の道の両側に最盛期に は28軒の妓楼が立ち並んでいた。今春に3軒の並びが解体されたという。広い新しい更地が広 がっている。まだ数軒の旧妓楼が残っているものの往時を想像するのは難しい。

最もオリジナル度が高い旧立花楼(明治34年から38年にかけて築/昭和16年廃業)を撮影し ていたら、何と家主が稲荷湯(昭和元年築創業)の御主人だった。暫く銭湯のことや遊廓のこ とを話していたら、ご自宅の中に招いてくれた。

時間をかけ、大工に古い材料を集めさせて直しているという。 内部は、昨日の忠海・旧朝日楼 ほどの華麗さは無いものの、檜の橋が架かっていたという庭池や石灯籠。遊女が控えていた部 屋などがオリジナル度高く残されていた。ご主人は今もこの建物と奥の母屋では火鉢で暖を取 る生活をされている。

さて、府中市の銭湯は3軒。その中で最も古い「松の湯」に向かう。

なんとも変則的で複雑な路地の奥にある。建物は2階正面が増築されていたり、かなり手が入 っている。そうとは感じにくいけど煉瓦煙突を擁する明治生まれの建物らしい。毎日の固定客 は3人ほど。その割には営業時間が17:30から21:00くらいと頑張っている。

人がすれ違うのがやっとという入口には小さな「松の湯」という行灯型の看板があるだけで暖 簾はない。ただアルミサッシの素っ気ない2の扉の1つに「女湯」と書かれている。

開けて入るとコンクリのタタキと番台。反対側に入口方の壁と並行にツルカメ錠の下足箱があ る。入浴料は400円と広島市内の料金と同一だ。天井は低いものの脱衣所の広さは幅2間半、 奥行3間ほどと案外に広い。下足箱もそこそこの数があるので、かつては客が多かった銭湯に 違いない。

ロッカーは、母屋に繋がる壁側に折鶴錠のものが並んでいる。籐敷きの脱衣所に特にレトロな ものはない。真中に縁台がある他は、IUCHIのアナログ体重計、冷蔵庫があるくらいだ。

浴室も脱衣所と同じく幅2間半、奥行3間ほど。天井は逆V字型で男女境の上に四角の小さな 湯気抜きがある。そして高さが最高部でも1間と1/3程度しかない。ビル銭としても最も低い 部類に入るくらいの高さだ。

カラン台は湯桶と湯道具を置く台が兼用になっているタイプ。カラン数は外壁側に6、中央に 釜場への扉がある奥壁側に2で全てにシャワーが付いている。タイルは男女境を含め周囲が大 判の白タイル。床はベージュ色のザラザラタイルに所々にこげ茶色のものが配されている。

ビジュアルは奥壁にモザイクタイル絵。絵柄は同じ広島の鞆の浦だ。女湯はやはり近くの「ア ブリ岩」を描いたものらしい。

客が3人の銭湯にしては冷蔵庫にスーパードライも入っている。というか、ジュースはほとん ど入っていない。何せ固定客3人だけの銭湯。小生がビールを横取りして、ありつけなくなる ご常連がいたら相済まぬ。思わず「買うことができますか?」やや意味不明のことを問う始末。

女将さんは東京から同湯に嫁いで来られた方だった。こちらに来られた時は、銀行も郵便局も 栄えていた本町の商店街も直ぐ近くにあって、小金井よりも都会だと思ったと笑われていた。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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