差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2011年5月8日日曜日 23:01
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 松の湯(勝浦市勝浦)

ナカムラです。

今日(4/30)は、「松の湯(勝浦市勝浦)」に行ってきました。 勝浦駅(JR外房線)から、0.5キロ、6分くらいです。

前から気になっている勝浦の「松の湯」。前日に新宿わかしお号のチケットを購入し、11:00 までの朝市に間に合うようにと新宿駅7:19発で向かった。

「全国遊廓案内(昭和5年)」に勝浦の遊廓の記述はない。しかし、人が集まる所に遊廓はあっ たはずということで、同湯のすぐ近くの、こんな小さな「市立図書館」は見たことがないとい う"図書室"で史料を漁ってみる。すると、勝浦駅の開業(1913年)で衰退したけど、この図書 館や同湯のある「岩切通り」が、紅灯の巷だったようだ。勝浦市街と漁港・豊浜を結ぶととも に、その頃、既に鉄道が延びていた大原へ通じる主要道だった。

三層楼の旅館は山本楼や幸前楼。劇場の山本座などもあった。また、遊廓という点では、鴨川 屋、亀屋、コトブキ、春木屋・喜久乃屋、富貴屋、朝日屋、房州屋、若竹、今井屋、山口屋、 藤屋、浅野屋、金政等々の料理店(特殊飲食店)がこの通りにあったようだ。

ただ、太平洋戦争前までだったという歓楽街の痕跡を見つけるのは難しく、小さな赤鳥居や昭 和5年の水盤がある、小さいながらも雰囲気のある稲荷社や、石垣を積む奥行きがある家々の 敷地に繁栄の面影を感じるにとどまる。

さて、勝浦市の最後の一軒。松の湯。築100年くらいの銭湯なので、まだ勝浦の花街が殷賑を 保っていた頃からの建物ということになる。漁師町の花街の銭湯としての風格は十二分にある。

下見板張りで正面だけでなく側面までの二方面に手摺りを渡した二階建て。堂々としたポーシ ョンで、繊細な外観を持つ建物だ。湯気抜きの屋根を持つ浴舎の後ろにはワイヤーで支えられ たパイプ煙突が立つ。

そして、トレードマークと言っていい松枝型(雲型)の「松の湯」という印象的な軒灯がある。 暖簾はなく、相客が居たから向かって左が男湯だと分かったものの、良く見てもどっちが男湯 なのか分からない・・・。

朝市で地元の菓子、野菜などを買って、遊廓跡と見誤っていた高台の「官軍塚」辺りを探索し た後、同湯に着いたのは14:30の開店時刻。入口の扉が開けられ、相客の一人と一番風呂に入 る。

中に入れば、コンクリのたたきに木組み板張りの質実剛健な番台が建つ。繊細な外観に対し、 銭湯の内部に天井は張られておらず、2階の床板が剥き出し。漁師町銭湯の無骨さを感じる。

同湯の主は40歳くらいだろうか。客がやって来ると、屋外を回って奥の釜場から番台までやっ て来て、風呂銭400円を受け取る。

脱衣所の広さは、幅2間、奥行3間ほど。天井高は低く1間と1/3くらい。下足箱は三角形の タタキを進み、男女境に松竹錠アルミ板鍵のものが置かれている。

床は意外にもクッションフロア。。。ロッカーは外壁側に扉に漢数字が大きく記されたオール木 製のイニシエ仕様。錠前が、扉を閉めれば自動で閂(かんぬき)掛かるもので、専用の道具が なければ開けられない。ロッカーに一切合切を入れたものの、扉を完全には閉めないように注 意した。後から入ってきた客を含め、みんな丸籠を使っている。

男女境の鏡は縦長の木彫り「額縁」に入ったものが2枚。その他、keihoku hakariのアナログ 体重計、ヤマトの旧型マッサージ機、フジのコインボックス(ドライヤー)などがある。

庭はないものの、窓の外には小津映画に出てくるような木板の塀があって、向こうから爽やか な風が入ってくる。

浴室は、幅2間、奥行3間。フラットな天井の中央に四角い湯気抜きが開いている。天井は、 ブリキ板が張られ白いペンキ塗り。継ぎ目が目立たないため、一見するとコンクリの浴室のよ うに見える。

プレーンな島カランが1つで、カラン数はセンターから3・3・3・4。カラン周りや、片手では 絶対に開けられないほどに立て付けの悪い浴室入口の扉などは苔蒸し、カランやそこいらのも のが井戸水の析出物で白くなっている。陽光に照らされたややシュールな光景ではある。。。

床のタイルは白い析出物が目立つユリ模様のもの。壁は白のペイズリー模様にやはり茶色のペ イズリーのワンポイントが入った見たこともない斬新なもの。

浴槽は奥壁に沿って非稼働のバイブラと一段掘り込まれた部分に1穴スーパージェットとボデ ィマッサージがある。事実上の1浴槽で湯温度は41.5度くらい。漁師町の銭湯にしては拍子抜 けするほどの温さだった。

上がりは森永牛乳を頂いた。

300年続くという朝市で有名な勝浦の最後の一軒。外観はAクラスの銭湯ながら、内部には少々 がっかりさせられた部分も多い。。。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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